68.ジュダ君のお母さん
ジュダ君と一緒に家に帰ると、おじさんがお父さんと玄関先で険しい顔でなにやら話し合っていた。
僕達は途端に不安になった。
「ん?ああ、おかえり。コンテストはどうだった?楽しかったか?」
おじさんが僕達に気づくと表情を和らげて言う。
「君がジュダ君かい?大変だったね。君のお母さんなら客間で休んでいるよ」
どうやらジュダくんのお母さんに何かあった訳ではないようで安心した。
僕らはジュダ君のお母さんのいる客間まで案内してもらう。ジュダ君はベッドの上のお母さんを見た瞬間涙を流して駆け寄っていた。
お父さんが詳しい顛末を話してくれる。
「捕まった収集家だけど、前からマークしていたんだ。前は証拠不十分で捕まえることは出来なかったんだけど、協力者がわかったからね。やっと捕まえることが出来た」
収集家はテイマーを金銭的に追い詰めて、自分から従魔を売るように仕向ける常習犯だったらしい。
僕はついでに帰りに声をかけてきた収集家の名前もお父さんに教えておいた。心当たりがあったらしくお父さんは怖い顔をしていた。彼は今後詳しく調べられるだろう。
「君のお母さんだけど、毒抜きには少し時間がかかる。特殊な毒を盛られていてね。命に別状は無いけど、毒抜きの間一緒にここに滞在するといい。彼らの仲間は他にも居るらしいんだけど、まだ全員捕まっていないから、安全の為にもね」
お父さんがジュダ君に言う。
「はい、本当にありがとうございます」
ジュダ君はまだ少し泣いていたけれど、落ち着いたようだった。実際保護されているのを見るまでは不安だっただろう。
「私は仕事に戻るよ、分からないことがあればラキータに聞いてくれ」
部屋の隅に立っていたメイドのラキータさんが頭を下げた。
僕はジュダ君のお母さんに話しかけられる。
「はじめまして、私はスーナといいます。あなたが居たから賢者様がジュダの異変に気付いてくださったんだと聞きました。ありがとうございます」
おじさんはどんな説明をしたんだろう。僕は何もしていないのに。
「はじめまして、エリスです。コンテストに参加してただけで僕は何もしてないので、誤解です」
「そうなんですか?でもそのお陰で助かったので、お礼を言わせてください」
スーナさんは感じのいい人だった。
「スーナさんはおばあちゃん……大魔女に薬の作り方を習ったって聞きました。僕は大魔女の弟子なんですけど、僕とは会ったことありませんよね?」
そう言うとスーナさんは目を見開いた。
「私が大魔女様に調薬を教わったのは随分前のことです。まだエリス君は生まれていなかったんじゃないかしら。弟子はルースさんという方にしか会ったことがありません」
やっぱり、面識はなかったらしい。十年以上前の話なんだろうな。
「大魔女様にはエルフの薬の作り方を教わったんです。私はエルフの血が濃いのか、普通の魔法薬が効きにくくて……出産の時、危なかったんです。だから自分とジュダのために大魔女様にお願いしたんです。普通の薬の作り方も教えてもらったので、それで生計をたてることも出来るようになりました。大魔女様には感謝しています」
スーナさんが教わったのは、僕が教わったのとは別のスタンダードな魔法薬のことだろう。僕のはおばあちゃんのオリジナルレシピだから、門外不出の特別な魔法薬だ。
「短い間でしたが、大魔女様にもルースさんにも良くしていただきました。大魔女様がお亡くなりになったのは残念でなりません。ルースさんはどうしているのですか?」
そうか、おばあちゃんの死はニュースになったけど、お母さんが死んだことは知らないのか。
「ルースさんは亡くなりました。僕は彼女の死後大魔女の弟子になったんです」
スーナさんは悲しそうにしていた。短い間だったと言っていたけど、親しくしていたのかもしれない。
「ルースさんはどんな人だったんですか?」
僕の母親だとは言わない方がいいだろう。でも聞いてみたくなった。
「どんな……明るくて快活な人でしたよ。いつも平気で大魔女様を叱りとばしていました。大魔女様とのやり取りが面白くて、思わす笑ってしまうことも多かったです。そういえば、エリス君はルースさんと同じ色彩ですね。大魔女様もきっとエリス君を見てルースさんを思い出していたのではないでしょうか」
僕は少し泣きそうになってしまった。そっか、明るい人だったんだ。僕とは少し性格が違ったのかもしれない。
「そうですか、僕は会ったことがないので、知りたかったんです。ありがとうございます」
僕はこれ以上家族の時間を邪魔するのは悪いなと思って部屋を出た。最後にジュダ君に、困ったことがあれば呼んでと声をかける。広い屋敷だけど、暫くは一緒に暮らすんだ。快適に過ごしてもらいたい。
暫くお休みして申し訳ありません。
回復しましたので更新再開します。




