62.写真
翌日、僕は秘密基地で昨日のことを話していた。
ダレル君によればお父さんが張り切ったようで、昨日の写真が午後にはお店に張り出されるという。
テイマーコンテストに出場すると言ったら、みんな応援に来てくれると約束してくれた。
テイマーコンテストはおよそ一ヶ月後の開催だ。
「シロほど大きな従魔は珍しいから、レースは余裕なんじゃない?」
テディーがシロを撫でて言った。シロは誇らしげな顔をしている。
「いや、わかんねーぞ。手紙の速達担当の従魔とかかなり早いからな。鳥も出れるんだろ?そのレース」
メルヴィンはお菓子をつまみながら速い従魔の種類を挙げてゆく。
ライバルはかなり多そうだ。
「可愛さコンテストはアオちゃんとモモちゃんタッグで出るんですか?何をするんです?」
アオとモモを膝に乗せたグレイスは幸せそうだ。
二匹は昨日から可愛さコンテストで何をするか討論していた。大抵特技を見せるらしいけど、二人の特技はシールドと回復魔法だ。可愛さとは何かが違うだろう。アオの歌も僕以外には水音にしか聞こえない。結果二匹でダンスを披露するという話で落ち着いたらしい。
「ダンスですか、絶対かわいいですね!応援してます」
『絶対優勝するの!私の可愛さを全世界に知らしめてやるの!』
アオは気合十分だ。反対にモモは少し不安そうだ。
『勉強なら自信あるんですけど……』
モモは可愛いからもっと自信を持って欲しい。これから二匹の猛特訓が始まるそうなので、見守ろうと思う。
「前にうちの孤児院の子が出場したから一度見に行った事があるけど、面白いイベントだったわよ。可愛さコンテストは観客の投票もあるからテイマーじゃなくても楽しめるの」
ナディアが前に行った時の事を話してくれた。レースは大体の従魔の大きさ毎に行われ、それぞれの大きさごとに優勝が決まるらしい。そうじゃないと小さい子が不利だもんな。
競うのは従魔だけど、インタビューなどされるのはテイマーの方なので、上手くできるか心配だ。
ナディアの見た時は可愛さコンテストにスライムは居なかったという。まあ、確かに一般的には可愛い魔物の中にスライムは入らない。アオが悲しむ結果にならないといいな。
秘密基地で雑談が終わると、ダレル君の実家のテイマー用品店に行くことになった。みんなやっぱり写真が気になるらしい。
お店に行くとダレル君が接客を手伝っていた。
「いらっしゃい!もう写真飾られてるよ」
壁を見ると引き伸ばされた写真が目立つところに飾られている。それぞれの商品のコーナーには小さな写真も飾られていて、なんだかとても誇らしい気持ちになった。僕の従魔はみんな可愛いと自慢できた気分だ。
「すごい!よく撮れてるわね」
ナディアが手を叩いて写真を見ている。
「実際つけた写真があると商品がもっと可愛く見えるから不思議だよね」
テディーも興味深そうに写真と商品を見比べていた。
写真と同じ従魔が来たことで、店内は少しザワついていた。
「この従魔はお店の従魔なんですかって、何度も聞かれたんだよ」
ダレル君は楽しそうに笑って、僕達に店を案内してくれた。
大型の従魔も入れるように店内は道がかなり広くなっているので、この店は大きな従魔を持つテイマーにとても人気らしい。その中でもシロは大きい。大型の従魔が自ら進んで道を開けてくれる。僕達は写真の効果も相まって視線を集めていた。
「写真の効果か、今日だけで売れ行きがすごいんだ。もう売り切れちゃった商品もあるんだよ」
『私がモデルをやったんだから当然なの』
アオが胸を張って得意気な顔をしている。
「特にアオの着けたカチューシャはすごい売れ行きだよ、ありがとうね」
ダレル君にアオの声は聞こえないはずなんだけど、ダレル君はアオを褒めてくれる。アオが一生懸命写真写りを研究していたと伝えたからかな。
アオはとても嬉しそうだ。
「そうだ写真が可愛いから、写真を売ってくれないかっていう人が何人かいたんだけど、本にして販売したらダメかな?もちろん、売上の一部は払うからさ」
ダレル君が申し訳なさそうに言う。僕としてはなんの問題もない、皆はどうかと聞いてみると、特に嫌ではないようだった。
「この写真集が出るんですか!絶対買います!」
グレイスはキラキラ目を輝かせて、ダレル君に出来たら教えて欲しいとお願いしていた。
「また新商品が出たらモデルを頼んでいいかな?本当に人気なんだよ。特にシロは誰の従魔かってよく聞かれるんだ」
珍しいもんな、シロは。僕でも写真を見たら一度会ってみたいと思うだろう。現に今も店中の客に見られている。この街では結構有名になっていたと思ったんだけど、まだまだだったらしい。
皆はまたモデルになることを快く了承していた。
今まで毎日更新していたのですが、明日から平日のみ毎日更新に変更させていただきます。明日はお休みです。また月曜日に更新となります。
楽しみにして下さっていた方々、申し訳ありません。