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祝福されたテイマーは優しい夢をみる【2巻発売中】  作者: はにか えむ


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58.戦いの後

 歓声の中、僕達は皆で先輩を褒めたたえた。特にフランク先輩の、相手の意表をついた捨て身の作戦が勝敗を分けたのだ。僕達だって驚いた。その後のフローレンス先輩の指示も鮮やかだった。指揮官が落ちた時のために、事前にブロックサインを決めていたのは知っていたけど、まさか使う機会があるだなんて思わなかった。言いたいことは沢山あった。でも感動で言葉にならない。

 すごいすごいとしか言えない僕に、フランク先輩は僕の頭を撫でて言った。

「お前達が頑張ってここまで繋いでくれたんだ。応えない訳にはいかないだろう?」

 なんてかっこいいんだろう。僕はフランク先輩みたいな先輩になりたいと思った。来年後輩が入ってきたら、先輩を手本にしよう。

 

 今年の対抗戦は歴史に残る名勝負だったと、最後の式で学園長が言った。僕達はまだ興奮が覚めやらないまま、学園長の演説を聞いていた。最後に、優勝したブラッククラスにトロフィーが贈られる。フランク先輩はトロフィーを受け取ると高く掲げた。僕達はまた歓声を上げて拍手する。式が終わっても、興奮はなかなか治まってくれなかった。

 

「あーもー凄かった!フランク先輩カッコよすぎだよ!」

 テディーが握った手を振り回しながら言った。僕は何度も首を縦に振る。

「フローレンス先輩も凄かったです!打ち合わせしてたわけじゃないんですって!」

 僕達は驚いた。咄嗟の判断であんなに鮮やかに指揮がとれるのか。本当にすごい。

 先輩達は今年で卒業してしまうのか、寂しいな。ほんの少しの間しかお世話にならなかったけど、なんだかとても多くのことを教わった気分だ。卒業する時には花を贈ろう。笑って見送れるだろうか、なんだか泣いてしまいそうだ。

 

 

 

 テディー達と別れお父さん達の待つ観覧席に戻る。

 お父さん達はみんな笑って僕を出迎えてくれた。優勝おめでとうと声をかけてくれる。兄さんだけはちょっと悔しそうだったけど、僕は嬉しかった。

『エリス!おかえり!』

 シロが尻尾を振って僕に擦り寄ってきた。今日は寂しい思いをさせてしまった。

『エリス、見てたの!凄いの!よく頑張ったの!』

 アオが僕の周りを飛び回って言った。

『名試合でしたね。手に汗握りました』

 モモもシロに乗って僕らを讃えてくれる。

 なんだかとても長い間離れていたような気がして僕は思い切り皆を撫で回した。


「さあ、続きは家に帰ってからだ。早く帰らないと面倒なやつに絡まれるって、俺の勘が言ってるぞ」

 おじさんの言葉に、僕は歩きながら今日の話をする事にした。おじさんが早く帰った方がいいと言うならそうなんだろう。

 おばあちゃんも時々そう言う事があった。おじさんのジョブは『魔法使い』すなわち魔法に関する全てのジョブを持っているのと同じだ。当然『占い師』が持つ先見の力も持っている。どれくらい未来が見えるのか、どれくらい未来が当たるのかは人によるけど、先見の力は侮れない。

 面倒な人が誰かは知らないけど、おじさんのおかげで回避できるなら嬉しい。今は楽しい気分に水を差されたくないからね。

 僕達は今日のことを話しながら家に帰った。おじさんは一緒に夕食だけ食べて帰るという。賑やかで嬉しいな。

 

 その日の夜はご馳走だった。お屋敷のシェフが昼食に続いて頑張ってくれたらしい。後でお礼を言いに行こう。

「しかし、今年の対抗戦の新しい競技はエリスが考えたんだろう?楽しそうで良かったな、俺もやってみたかったよ」

 兄さんが残念そうにしていた。卒業してから競技が増えるのは確かにとても残念だろう。

 

「学園長がとても褒めていらしたぞ、エリスは優秀なのにそれをひけらかしたりせず、クラスの子達にもとても好かれていると」

 お父さんの言葉に僕は少しむず痒い気持ちになった。クラスのみんな確かに個性が強いけど、とても勉強熱心で優しいんだ。皆で仲良くできているだけで、僕の人徳とかではないと思う。みんなをまとめているのは級長だしね。

 

 

 

 夜になって僕はおばあちゃんのペンダントに話かけた。今日はおばあちゃんにお話ししたいことが沢山あった。フランク先輩達の活躍や、取り合い合戦で圧勝出来たこと、観客が多くて驚いたこと。語り出したら止まらなかった。

 時々アオ達も相槌を打ってくれて、とても楽しい時間だった。

 

 僕は話している内に眠ってしまった。眠っている間に見た夢は、前の僕が剣道の大会で優勝する夢だった。剣道はガッツポーズとか勝利を喜ぶ動作が禁止されているらしい。ストイックなスポーツだな。僕はもっと楽しいスポーツがいいな。

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