44.ヒッポー狩り
シロの案内でヒッポーの群れの住む水場にたどり着く。静かにヒッポーに近づくとグレイスが戦闘用のまじないをかけ、モモが前衛二人にシールドを張る。
僕が魔法でヒッポーの注意を逸らすと、前衛二人が駆け出した。今度はメルヴィンがナディアに合わせているのがよくわかる。二人の歩みは揃っていた。
ナディアがヒッポーの攻撃をいなすと、すかさずメルヴィンが首を落とした。テディーは他のヒッポーが邪魔をしないように牽制している。
仲間を殺されたヒッポーは怒り狂ってナディア達に攻撃を仕掛けるが、グレイスが魔法でナディア達の負担を分散させる。ナディア達が一体ずつ確実に狩れるように、魔法でヒッポーの気を逸らしてゆく。
シロもナディア達のサポートをして、ヒットアンドアウェイでヒッポーにダメージを与えていた。
中々いい感じなんじゃないかな。僕もヒッポーの胴体に風魔法で傷をつけて弱らせている。時間はかかったが、十体以上いたヒッポーを無事狩ることに成功した。デリックおじさんの手を借りなくても倒せて良かった。
おじさんは拍手で僕達を讃えてくれる。
「今までの戦闘との違いが何となくわかっただろう?今の方が確実に一人一人の負担が減っているはずだ。もう少し練習すればもっと楽に倒せるようになるぞ。あとは各々の技術的な問題だな。これは日々練習あるのみだ」
僕達はそれぞれの問題点を胸に返事をすると、ヒッポーの解体を開始した。牙を抜くのは大変だったが、これが一番の高額部位だから仕方がない。
解体が終わるとみんな疲れ果てていた。
「そうか、お前らの力だとヒッポーの解体は重労働なのか。別のにすりゃ良かったな」
おじさんが苦笑しながら言う。盲点だったのだろう。いつも僕たちは解体に時間がかかるが、今日はいつも以上だった。
これで今日はお終いにして、冒険者ギルドに戻る。
道中、おじさんに聞かれた。
「そういや、そろそろクラス対抗戦の練習が始まる時期じゃないか?もう競技は決まったのか?」
僕達はちょうど来週のテスト明けから始まるところだと答えた。とても楽しみだ。
「そうか、お前達なら一年生ながら競技によっては上位も狙えるだろう。もしかしたら花形の競技にも出られるかもな」
花形の競技とは、対抗戦の目玉の陣取り合戦のことだろう。数種類の魔法のみ使用可で各クラス十五名のみ出場できる、対抗戦の大トリだ。毎年白熱するらしい。
「私は去年見に行ったけどすごい盛り上がりだったわ」
ナディアがとても楽しそうに競技について話してくれる。孤児院の子供達は毎年招待されて観戦できるのだそうだ。
花形の競技は毎年変わらないけど、ほかの競技は生徒のバランスを見て変わったりするらしいので、僕達もまだ全容は分からない。
「絶対見に行くからな、頑張れよ!」
おじさんは僕の頭を撫でながら言った。
『ぜ~ったい!か~つの!たいこ~せん!』
アオが歌っているけど今年はテイマー対抗戦があるかはわからない。ブラックはテイマーが少ないしな。その上アオは回復特化だからどの競技にも出られないと思うんだ。本人はやる気に満ち溢れているんだけどな。残念だ。
ギルドに戻るとヒッポーの牙や道中採取したものを換金する。金額を聞いておじさんが驚いていた。
「お前ら本当に冒険者向きだな」
ほかの冒険者よりも確実に大金を稼いでいるからな。テディーはドヤ顔している。本当に『鑑定士』様様だ。ナディアは今日もテディーとシロを褒めている。
おじさんは報酬はいらないと言ったけど、申し訳ないので授業料として食事を奢ることになった。おじさんもそれくらいならと了承してくれた。
ギルドに併設された食事処で沢山料理を頼む。ここの料理は見た目は質より量といった感じなのに、とても美味しいんだ。
「初めて食べたけど美味いなここの料理」
おじさんも気に入ってくれたようで沢山食べてくれた。
「そういえば、最近はどこに行っていたんですか?」
しばらく顔を見なかったからな、遠くへ行っていたのだろうか。
「あー、西の山の方で魔物が大量発生してな、倒しに行ってたんだよ。もう落ち着いたから、こっちに戻ってきたんだ」
おじさんの家はこの街にある。なるほど、ずっと留守にしていたのか。
「帰ってきたらネリー様は亡くなってるし、お前は領主の養子になってるし愕然としたよ」
おじさんは悲しそうだった。僕も少し感傷的になってしまった。
「ま、お前が無事で何よりだったよ」
おじさんは乱暴に僕の頭を撫でると、話を変えた。
「お前たちはクラスも違うんだろ、なんでパーティーを組むことになったんだ?」
僕たちが的破壊組だというと、おじさんは声を上げて笑っていた。
「そりゃ優秀なわけだ。今年入学のトップの集まりだったのか。大体トップ連中は仲が悪くなるもんだが、お前たちは真逆だな」
確かに普通はライバル同士でいがみ合ったりするんだろう。でも僕達は各々得意分野が違うからか、争ったことなんてない。寧ろ来週のテストに向けて協力しあっている。
そうか、もう入学してから半年近く経っていたのか。
僕たちは五人で過ごすことが当たり前になっていた。きっとこれからもそれが続くだろう。そんな気がする。
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