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4.お客様

 一人と二匹での生活に慣れた頃、パスカルさんがお客様を連れてきた。

「初めまして、私は街の領主をしているヴァージル・ラフィンだ」

 茶色の髪に背の高い、なんだか強そうな男の人だった。

 

「初めましてエリスです。この子達はシロとアオです」

 僕は頭を下げて挨拶した。領主様と言えば偉い人だ。ちゃんとしないといけない。

 パスカルさんと領主様に椅子をすすめて、僕は話を聞く。

 

「ごめんなエリス。流石にエリスがこのまま一人で暮らし続けるのは良くないと思って、領主様に相談したんだ。そしたら会ってみたいと仰るから連れてきたんだ」

 パスカルさんがすまなそうにしている。パスカルさんは僕のことを心配してくれたんだ。何も悪くない。僕は大丈夫だと笑った。

 

「私は大魔女様にはとてもお世話になったんだ。妻の命を救ってくれた恩人でね。そのお孫さんが一人で暮らしていると聞いて心配になって来てしまったんだ」

 領主様は優しげな笑みを浮かべて言った。

「エリスくんさえ良ければだけど、この家はこのまま残して街で暮らさないかい?」

 

 僕は言葉に詰まってしまった。シロとアオが心配そうに僕を見ているのがわかる。

 この家にはおばあちゃんとの思い出が詰まっている。出来ればそのまま住んでいたい。でもおばあちゃんは、僕に前を向いて生きろと言った。おばあちゃんは僕がここを出ることを望んでいたんじゃないか。今では少しそう思っている。

 

「今すぐ結論を出せとは言わないよ。たまに様子を見に来るから、ここを出ることを考えてみてくれないか?」

 領主様の言葉に僕は頷いた。

「街で暮らすとしたら、僕は孤児院に入るのですか?」

 気になったので聞いてみる。

「そうだな、エリスくんなら食客として私の家で暮らすのもいいと思う。エリスくんの作る大魔女様の回復薬はとても効果が高くて人気なんだ。大魔女様が亡くなった今、それを作れるのはエリスくんだけだ。できれば作り続けて欲しい」

 

 おばあちゃんは僕に回復薬のレシピを絶対に誰にも教えるなと言った。恐らく僕が生きていけるようにそう言ったんだろう。

 回復薬が作れたらお金には困らない。

 

「アオとシロは連れて行けますか?」

 ここを出たら二匹と一緒にいられるのか。わからないから少し怖かった。

「もちろん、テイムされてる魔物なら問題ないよ。連れて入れないお店も多いけど、テイマー向けの店もあるから困らないよ」

 領主様の言葉に僕は考える。孤児院ではなく領主様の家に居候になるなら破格の待遇だろう。

 シロとアオとも離れなくていい。なら街で暮らすのもいいんじゃないか?

 

「シロとアオはどう思う?」

 僕は二匹に聞いてみた。

『街で暮らすのも楽しそうだと思う』

『冒険できるよ、街に冒険しに行こう!』

 二匹も楽しそうにしている。なら街で暮らそう。

 僕は心を決めた。

 

「わかりました。領主様のところでお世話になってもいいですか?」

 パスカルさんが安心したように笑っている。とても心配してくれていたんだろう。

 領主様も笑って受け入れてくれた。

「妻も喜ぶよ。昔子供を亡くしてね。エリスくんの話をしたらとても心配していたから」

 

 そうか、領主様達も大切な人を亡くしているのか。だから僕の気持ちを汲んでくれたんだ。領主様は優しい人なんだろう。

 

 街で暮らすと心を決めたら、急にワクワクしてきた。ずっと森で単調な毎日を過ごしてきたけど、街には楽しいものが沢山あるだろう。

 友達も出来るかもしれない。

 おばあちゃんが死んですぐの頃は、こんなこと考えられなかった。

 僕が街で暮らすと知ったら、おばあちゃんは喜んでくれるかな?

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