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祝福されたテイマーは優しい夢をみる【2巻発売中】  作者: はにか えむ


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39.妖精

 いつものように冒険者ギルドで依頼を受けようとしていた時、僕達はギルドマスターに呼び出された。

 僕達は呼び出されるような事をしただろうか。戦々恐々としながらギルドマスターの待つ部屋へ行くと、にこやかに迎えられた。

 どうやら叱られるわけじゃないみたいだ。僕達はホッとした。

 

 部屋のソファに座ると、ギルドマスター補佐のお姉さんがお茶を出してくれる。

 そのお茶を一口飲んで、ギルドマスターは切り出した。

 

「実は君達にギルドから依頼があるんだ」

 ギルドから依頼なんて滅多にある事じゃない。僕達は何事か起こったのかと緊張した。

「妖精の里に手紙を届けて欲しいんだ。君達ならきっと気にいられると思うからね」

 僕達はポカンとしてしまった。妖精の里と言えば数ある異種族の中でも扱いが難しい、許可がなければ立ち入ることすら出来ない魔境だ。子供の僕らが立ち入って良いのだろうか。

 

「少し説明しようか、先日大規模な違法魔物の飼育摘発があっただろう。その中に、捕まった妖精が一人だけ居たんだ。もちろん上層部が直接謝罪をして妖精の身柄は返された。その後の詳しい顛末を記した書状を届けて欲しいんだ」

 ギルドマスターは一息つくとお茶を飲む。

 

 僕達は眉をひそめていた。妖精に手を出すなんて危険にも程がある蛮行を、奴らはやってたのか。国を潰すつもりだったのだろうか。それとも一人くらいなら大丈夫だろうと思ったのか。どちらにしても愚かだ。

 妖精の強さは一人ならそうでも無いが、怖いのは集団になった時だ。昔妖精を愛玩物として積極的に収集していた国が、一夜にして森になった。比喩などでは無い、実際に土地の全てを森に変えられたんだ。妖精を怒らせてはいけないとは、子供でも知っている事だ。

 

「幸い、今の妖精族の長は温厚で理知的だ。王が直接里に赴き、真摯な謝罪と犯人の身柄を差し出すことで許して貰えた。そして事件の調査状況を逐一報告することになったんだ。君達はその使いになって欲しい。事件の被害者の子供だと向こうもわかっているから、酷い扱いを受けることは無いだろう。特にエリスくんは妖精と親しくしていた大魔女の弟子だしね」

 

 おばあちゃんが妖精と親しくしていたのは本当だ。家にもよく妖精の遣いが来ていた。僕の顔を知っている妖精も居るだろう。

 国としてはおばあちゃんが亡くなったから、新たに弟子の僕に妖精との繋ぎ役になってもらいたいって事だろう。勝手な話だ。

 僕は露骨に嫌そうな顔をしていたらしい。ギルドマスターが慌てて僕を説得しようとする。

 

「もちろん、正当な報酬は支払うし危険手当も出るよ。国からの依頼でもあるから報酬は高額だ」

 僕は別にお金には困っていない、おばあちゃんのお陰でね。僕はわざと嫌そうな顔を作って言った。

「七賢者の内の一人に頼んだらどうですか?」

 七賢者とはおばあちゃんを含めた七人の優秀な魔法使いのことだ。悪徳貴族を成敗しドラゴンを倒した英雄なので国民に非常に人気がある。彼らも妖精とは親しかったはずだ。おばあちゃんを追放した事件から王室とは疎遠になっていると知っていて、僕は敢えて言った。

 ギルドマスターは困った顔をしていた。彼は王室からの命令で動いているだけだからそうだろう。

 

 僕はおばあちゃんに決して国に使われるなと言われている。前世の記憶のおかげでその意味が分かった。簡単に使われてやるつもりなんてない。

「依頼はお断りします」

 

 他のメンバーも僕の様子になにか察したようで、何も言わず退室する僕について来てくれた。

 

「ごめんね、せっかく高額な依頼だったのに」

 皆首を横に振る。

「僕はこれで良かったと思うよ。子供だから簡単に扱えるだろうと思われたら七賢者の二の舞だろうしね」

 テディーが呆れた顔で言う。

「英雄を切り捨てたのは王室ですから、その弟子に命令する権利なんてありませんよ」

 貴族ゆえに内情をよく知るグレイスも怒っている。

「私は貴族のことはよく分からないけど、エリスが嫌ならそれでいいと思うわ」

「そうそう、エリスが利用されるのは嫌だしな」

 ナディアもメルヴィンもそう言ってくれる。僕は仲間に恵まれたなと思う。これもきっとおばあちゃんのお陰だ。おばあちゃんを切り捨てた人達の思うようには絶対ならない。

『絶対許さないの!おばあちゃんの敵討ちなの!』

 アオの言うように敵を討つつもりは無いけど、ただ思い通りに使われてやる気は無い。いざとなったら七賢者に頼ってでも逃げ切ってみせる。というか僕にこんな依頼を出して、七賢者側についた貴族が怒るとは思わなかったのだろうか。帰ったらお父さんに報告しよう。

 

 

 

 お父さんに報告したら、案の定怒っていた。家から正式に王室に抗議するらしい。おばあちゃんを身一つで放り出しておいて、その弟子に縋ろうなんて考えが甘すぎると怒っていた。

 

 

 

 その日の夜の事だった。妖精の里から僕に招待状が届いたのは。

 友達も連れて、妖精の里の祭りに来ませんかという招待だった。どうやらおばあちゃんが亡くなってから、妖精は僕の行方を探していたらしい。子供が一人で残されて、生きていけるか心配されて居たようだ。

 僕の行方は王様に聞いたらしい。だからあの依頼だったのか。そうならそれを真っ先に説明すべきだろう。僕は憤った。

 妖精には絶対に行くと返事をした。妖精のお祭りなんてとても楽しみだ。

 

あけましておめでとうございます!

今年もよろしくお願いいたします!


18時にもう1回更新します。

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