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祝福されたテイマーは優しい夢をみる【2巻発売中】  作者: はにか えむ


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36.秘密の部屋

 学園長について図書室に行くと、学園長は図書室の扉を閉めた。

 そして一番奥の本棚の所まで行くと、ある本を順番に強く押した。するとガタンと大きな音が鳴り、横にあった壁が開いた。

『隠し部屋なの!』

 アオが興奮した様子で飛び跳ねている。僕らは驚いて口を開けていた。

「これは学生時代にネリーがふざけて作った隠し部屋です。私たちは秘密基地と呼んでいました。当時この校舎にはまだ少し人の出入りがありましたから、誰にも咎められることなくふざけられる場所が欲しかったんです。学生時代のネリーが置いていったものも残っていますから、弟子であるエリスくんが受け取るのが良いでしょう」

 

 そこは小さな部屋だった。十人も入ったらいっぱいになってしまうくらい狭くて、いかにも秘密基地といった感じだ。

 そこには魔法道具が沢山あった。魔法道具だけじゃ無い、テストやノート、当時学生だったおばあちゃん達の痕跡が至る所に残されていた。おばあちゃんも僕のように学園に通っていたと考えると少し変な感じがしたけど、確かにおばあちゃんはここに居たんだ。

 僕は少し涙が出そうになった。

 

「そろそろこの部屋を整理しなければと思っていたのです。ネリーがいた頃から怪談として噂になっていましたしね。……それにしてもまだあの当時の噂を知っている人が残っていたんですね。きっと卒業生のご家族から聞いたのでしょう。」

 学園長は懐かしげに部屋を見回しながら言った。

「良ければあなた達の秘密基地にしたらどうですか?荷物は私と他のメンバーの物は外に出しますから、ネリーのものはエリスくんが自由にしてください」

 予想外の提案に、僕たちは驚いた。

「いいんですか?そんなこと許可して」

 真面目なナディアがそういうと、学園長は笑った。

「私が把握さえしていれば問題ありません。でも、他の生徒には内緒ですよ。なんだか君達を見ていると、昔の私たちを思い出すのです。折角ですから有効活用してください。卒業するときには、ちゃんと片付けて下さいね」

 

 僕達は大喜びで学園長にお礼を言った。秘密基地、最高に楽しそうな響だ。荷物を片付けたらシロもギリギリ入れるし、勉強するのにも丁度いい。

 

 僕たちは部屋から荷物を運び出すのを手伝った。

 荷物には伝記でおばあちゃんと一緒に行動していたという人達の名前が書いてあったりして、あの話は本当だったのかなと、少し気になった。学園長に聞けばいいのだろうけど、僕はなんだか聞いてはいけないような気がしていた。伝記の中には、学園長らしき人物が一切出てこないんだ。

 

 そもそも学園長のマルダーという名前も、この学園の伝統で、代々の学園長に受け継がれるものだ。

 仮面を付ける風習も、また同じだ。

 僕は学園長の本当の名前も知らない。そして学園長も、昔の思い出話はしても、自分のことは一切口にしなかった。

 僕はもしかしたら、あの伝記の著者こそが学園長なのではないかと思った。これだけおばあちゃんと親しかったならあり得ると思う。

 

 僕は意を決して聞いてみることにした。

「学園長は、おばあちゃんの……」

 途中で指先で口を塞がれる。

「その質問の答えは、エリスくんが自分で見つけてください。何事もすぐに分かってしまっては面白くないでしょう?ネリーが何を考え、どんな人と、何を為してきたのか。ヒントは沢山あるはずです。ネリーもきっと、エリスくんが自分の意思で足跡を辿ることを望むでしょう」

 

 なんだか僕はワクワクした。自分のことは大魔女であること以外、何も教えてくれなかったおばあちゃん。僕がおばあちゃんの謎を追ったら、どんな顔をするだろう。きっと仕方のない子だと笑ってくれると思う。

 時間がある時に、おばあちゃんが巡った場所を尋ねてみよう。そうしたらおばあちゃんの事がよく分かるはずだ。

 

 僕は学園長に頷いた。学園長は優しげに微笑んでいる。その笑みは、何だかおばあちゃんに少し似ているような気がした。

 


 

 学園長と別れて、秘密基地に残った僕たちは、残された魔法道具の多さに呆然としていた。魔法のカバンにいれて持って帰るしかない気がする。

 その殆どはおばあちゃんが暇つぶしに作ったガラクタだと言うから驚きだった。おばあちゃんは物を溜め込まない人だと思っていたのに。

 

「ガラクタって言うけど、結構使えそうな物もあるよ。この目覚まし時計とか、無駄に高性能だし」

 鑑定したテディーが言う。僕たちはまずテディーの鑑定を頼って、使えるものと使えないものに分けることにした。

 結果ガラクタと玩具が九割だったけど、面白そうなものもちゃんとあった。僕はとりあえず両方持って帰ることにした。

 

 テディー曰く、おばあちゃんの熱狂的なファンは多く、大魔女作というだけでガラクタでも買う人は多く居るのだそうだ。

 今は売るつもりは無いけど、もしもの時のために取っておこうと思う。

 

 綺麗になった秘密基地は、思っていたよりも少し広かった。テーブルと椅子もあるし、明日からここで勉強会が出来るだろう。

 

 

 

 おばあちゃん、今日はおばあちゃん達の秘密基地を引き継いだよ。

 学園長はおばあちゃんにとってどんな人だったのかな?

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