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34.事の顛末と怪談

 シロ誘拐未遂事件から数日後。なんとスティルス侯爵家は伯爵家に降格させられたらしい。

 ディーン君が冒険者に渡した睡眠を誘発する煙玉は、侯爵が強い従魔が欲しいと言うディーン君にこっそりあげたものだったそうだ。

 

 さらに捜査が行われた結果、侯爵はかなりの数の魔物を収集し、飼育していたことが分かった。その中には飼育が認められていない危険な魔物も多く居たそうだ。

 さらに誘拐された従魔と思われる、従魔の文様入りのレアな魔物も発見されたようで、侯爵は投獄されることとなった。

 

 ディーン君は父親を見て同じことをしようと思ったのだろうか。父親のコレクションの中にジャイアントウルフはいなかったようだから、収集したかったのかもしれない。ディーンくんは結局学園を退学になって子供用の更生施設に送られることになったみたいだ。

 

 伯爵家に降格されられたスティルス家は親族が継ぐことになるようだ。暫くは社交界で肩身の狭い思いをするのだろう。

 その他に、侯爵と交流していた魔物愛好家が何人か違法な魔物の飼育で捕まったらしい。

 

 誘拐された従魔は無事テイマーの元へ返還されたようだ。良かった。

 最近増えていたレア従魔誘拐事件は彼らの仕業だったから、僕たちはお手柄だと褒められた。狙われたのを撃退しただけで褒められるようなことはしてないと思うんだけどな。それでも助かった従魔が居ることは良い事だ。

 

『従魔を誘拐なんて許せないの!最低なヤツらなの!』

 アオが怒って飛び跳ねている。

『子供は親を見て育つと言いますからね、あの子は侯爵と同じことがしたかったんでしょう』

 モモが冷静に分析している。確かにディーン君は甘やかされて育った子らしいから、父親の真似をしたかったのかもしれない。それが犯罪だとは知らなかったのかな。

 

 そしてなんとお父さんは、貴族の犯罪を暴いたとして王様直々に報奨を貰えることになったそうだ。僕の功績を奪うようで悪いと言われたけど、実際調査したのはお父さんだからお父さんの功績で間違いないと思う。

 

 

 

 学園でこの話をするとみんな驚いていた。

「これもある意味良縁だったんじゃない?」

 テディーが不思議なことを言う。

「だって今回シロが狙われなかったら、ずっと犯人は捕まらなかったわけでしょ?エリスに関わったから犯罪者が粛清されたのかなって。大魔女様が従魔達を助けるために引き寄せてくれた縁かもよ」

 

 僕はそうだったらいいなと思った。おばあちゃんはとても正義感に溢れた人だったから、死んだ後も従魔達を助けたかったのかもしれない。うん、きっとそうだ。

 

「だとしたらエリスはこの先も色んなことに巻き込まれ続けるかもね」

 ナディアは不安そうだ。メルヴィンが満面の笑みで言う。

「そうなったら今回みたいに俺も戦ってやるよ!」

 なんて心強いんだろう。メルヴィンに頭を撫でられて僕は嬉しかった。

『僕も戦うよ!大きくなったから絶対負けないもんね!』

 そうだ僕にはシロ達も居る。僕はとても恵まれているんだ。全部おばあちゃんのお陰なんだから、おばあちゃんみたいに、悪いやつはみんな捕まえてやる。

 グレイスが僕の決意を聞いて笑ってくれた。

「弟子のエリスが大魔女様の意志を受け継ぐんですね。素敵です」

 僕はおばあちゃんみたいにカッコよくなれるだろうか。なれるといいな。おばあちゃんみたいな派手な喧嘩は苦手だけど、きっと色々なやり方があるよね。

 

 

 

「じゃあゴタゴタも片付いた所で、面白い話を聞いたんだ」

 メルヴィンが楽しそうに話し出した。

「旧校舎の怪談って知ってるか?」

 僕達はみんな初耳だった。レッドの子が上級生から聞いた話らしい。

「一つ目は動く絵画。二つ目は音楽室から誰もいないのに聞こえる音楽。三つ目は図書室で消える人だって」

 なんだか楽しそうだ。みんな乗り気になって聞いている。


「一つ目は学園長室にある、この学園の初代マルダー校長の肖像画に近づくと肖像画が動いて睨まれるんだ。見たことがある人は極わずかで、見たら不幸が降りかかると言われてるんだってさ」

 これはぜひ確かめてみたい、僕はワクワクしていた。

 

「二つ目は旧校舎の音楽室、これは昔いじめで自殺した生徒がいて、その子がピアノが得意だったんだそうだ。死んでからもずっと音楽室のピアノを弾き続けてるって話だ」

 よくありそうな怪談だ。怖いのが苦手なのか、グレイスがナディアの腕を掴んでいる。

 

「三つ目は旧校舎の図書室で消える人。人が入るところを目撃して図書室に入ると、中に誰も居ないんだってさ。なあ、本当かどうか確かめてみないか?」

『とっても面白そうなの!確かめるの!』

 メルヴィンの言葉にアオが乗り気だ。ビョンビョン飛び跳ねて賛同の意を示している。

「確かに面白そう!他にも何かありそうだし、忍び込んじゃおうか、旧校舎」

 真面目なテディーにしては珍しく楽しそうだ。

「みんな行くなら私も行くわ」

 ナディアがグレイスを慰めながら言う。

「置いていかないで下さい!私も行きます」

 グレイスは怖がっているみたいだが、置いていかれるのは嫌らしい。結局全員で旧校舎探索をする事になった。

 一応旧校舎は理由もなしに入るのは禁止されているんだけど、きっと大丈夫だよね。

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