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32.テイマーを連れて

 冒険の日の朝、ナディアが連れてきたのは10歳位の男の子と女の子だった。

 ナサニエルくんとジーナちゃんというらしい。

「今日はよろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

 二人ともとても礼儀正しい子だった。

 

「何かテイムしたい魔物はいる?」

 希望があるならその魔物が棲息しているところまで行かなくてはならない。

 ナサニエルくんは言った。

「出来ればウルフ系がいいんです。俺、手紙の配達のバイトしてて、それを手伝ってくれる子が良くて」

 ウルフは賢いので比較的任意テイムが簡単だ。こちらが敵意を持っていないとわかると襲ってはこない。

 

「私はピンクラビットがいいんです。女性向けの雑貨屋で働いてるので、可愛い子が良くて」

 ジーナちゃんは意外な返答をしてきた。看板娘ならぬ看板ラビットが欲しいなんて面白いな。ピンクラビットは弱いから任意テイムがかなり簡単だ。割と自分の方からテイマーに寄ってきてくれる。

 でも臆病なので、このメンツが揃っている中出てきてくれるか心配だ。少し離れたところから見守るか。

 

 

 

 僕達は転移ポータルでいつもの森に行った。ちなみに二人とも一応冒険者登録もしているらしい。仕事が休みの日に小銭を稼ぎに行くみたいだ。僕たちと歳も変わらないのに偉いな。

 

 グレイスが縁結びのまじないをかける。その後はシロにウルフの棲息地を探してもらった。ウルフの匂いが濃い場所に行くと、遠目にウルフを見つけた。シロが敵意はないと訴える。

 すると何頭かのウルフがこちらに寄ってきた。ナサニエルくんが前に出ると、匂いを嗅いでいる。一頭のウルフがお座りをしてナサニエル君を見つめている。

『テイムしてもいいって!』

 

 シロが通訳してくれる。ナサニエルくんは緊張した面持ちで魔法陣を描く。するとウルフの額が光った。

「名前はライ」

 テイム完了だ。

「すごい、手が勝手に動いた!」

 ナサニエルくんは驚いている。ライはナサニエルくんに挨拶をしているようだ。相性のいい子が見つかってよかったな。

 

 

 

 さて次はピンクラビットである。シロにまた匂いを辿ってもらってピンクラビットを探す。森の浅い所に戻ってきてしまった。途中出てきたゴブリンやボアなどを魔法で狩りながら探していたら、ナサニエル君に凄いと感動された。魔法使い単体で獲物を狩るのは確かに珍しいからな。僕は逃げようとしたところを風の魔法で切り裂いている。

 

 やがてピンクラビットの巣の近くにやって来たようだ。

 近づいたら慌てて逃げようとするピンクラビットをモモが止めてくれた。ジーナちゃんが前に出てピンクラビットと見つめ合う。

 相性のいい子がいたようで、ゆっくりと近づいてきた。

 ジーナちゃんが杖を取りだして魔法陣を描く。

「名前はラビ」

 こちらも上手くいったようだ。思ったより早く目的を達成してしまった。シロ達が説得してくれたお陰だろう。

 

 うん、任意テイムには既に従魔と契約しているテイマーに付いてきてもらうのが簡単でいいのかも知れない。今度ホワイトクラスの子達に教えてあげよう。

 

 二人はテイムできたことを喜んでいた。僕たちは折角なので少し狩りをしてからギルドに戻る。ナサニエルくんもジーナちゃんも、今日の狩りの取り分は全てこちらのものにしていいと約束している。タダでは流石に悪いと思ったそうだ。しっかりした子達だな。

 

 

 

 そのまま二人の従魔登録まで見届けようとテイマーギルドに向かっていると、ギルドの前に豪華な魔法車が止まっていた。嫌な予感がする。魔法車は滅茶苦茶高い。つまり乗っているのは裕福な商人か貴族だ。僕らは少し時間をずらして行こうかと話し合う。

 その時だった。もういいという子供の怒鳴り声と共にギルドからディーン君が出てきた。ディーン君は幸いこちらには気づかなかったようで車に乗って行ってしまう。

 僕らは顔を見合せながらテイマーギルドに入った。

 

 受付のお姉さんに何があったのか聞いてみる。

「それが、ギルドは魔物を売る商人の斡旋もしているのですが、斡旋した商人から買った従魔が言うことを聞かないと抗議されまして……それはこちらでは保証しかねると言ったら、ジャイアントウルフを扱っている商人を紹介しろと言われまして……そんなのいる訳ありませんのに」

 ジャイアントウルフは強い。それこそ生け捕りなんて命懸けだ。テイムするにも、相性が良くても攻撃されることがあるくらいには大変だ。そんな危険な橋を渡る商人なんて居ないだろう。

 

 気を取り直して僕たちは従魔登録をした。

 二人はテイマーカードを大事に首から下げていた。

 今日は手伝いができて良かったな。きっと二人なら従魔を大切にするだろう。

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