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31.ブラッククラスとは

 朝食の席でふと思い出して、昨日の従魔買取の話をすると兄さんとお父さんが本気でキレていた。学園長が対応してくれると言ったけど、家からも抗議するようだ。

 貴族籍は与えられないとはいえ僕はラフィン伯爵家の養子だ。しかも大魔女のたった一人の弟子である。平民は言うことを聞けとか言われていい立場では無いらしい。

「今後このような事があったらすぐに私に相談してくれ」

 お父さんは僕に念押した。

 

 彼はとりあえず一週間の停学処分になっているというと、生温いと怒っていた。

 相手は侯爵家だから穏便にと思ったけど、家も貴族界隈では割と地位の高い家らしかった。知らなかった。追放された大魔女をかくまえるくらいの権力はあるらしい。

「困ったらすぐに家の名前を出して良いからな」

 お父さんは心配しきった顔で言う。

 今度からお言葉に甘えることにしよう。

 

 

 

『う~うう~ら~らら~う~ら~』

 今日のアオは歌詞が思いつかなかったらしい。ずっとハミングしていた。

 リズムに合わせてシロが歩く。モモは左右に揺れていた。僕も揺れたくなってしまうが我慢した。だってアオの歌は僕にしか聞こえていないから。こういう時皆にも従魔の声が聞こえたらなと思う。

 

 クラスに着くとテディーがもう居た。毎朝早く来て予習しているテディーは偉いと思う。

「おはよう!よかった、シロの成長は落ち着いたね」

「おはよう!そう?それなら良かった」

 テディーの鑑定で見たなら確かだろう。シロの成長は日増しにゆっくりになっているそうだ。


 クラスのみんなとも挨拶して、席に着く。

 グレイスが登校してくると真っ先にこちらにやって来た。

「おはようございます。今日もシロちゃんたちは可愛いですね」

 シロを思うがままモフモフして幸せそうだ。

「モモ、今日は勉強するの?」

『はい勉強楽しいです!今日も楽しみです!』

 僕はグレイスに言う。

「授業中モモを連れて行っていいよ。モモも前の席の方が見やすいだろうし」

 モモは机の上に乗っても邪魔にならない大きさだ。グレイスもそちらの方が嬉しいだろう。

「いいんですか!じゃあ連れていきますね。モモちゃん一緒に勉強しましょうね!」

 グレイスは大喜びだ。

 

 ギャガン先生が教室に入ってくる。シロを見て固まっていた。

「なるほど、今年のトラブルメーカー枠はお前かエリス」

 僕が何をしたと言うのか、酷い言われようだ。

「安心しろ、ブラックには毎年、無自覚にトラブルを起こしてくれる天才が必ずいるんだ。今年は非常に大人しくて逆に不気味だったが、安心した。お前なら校舎を破壊することも無いだろう」

 だから何があったんだよ歴代のブラック。楽しみだったはずのクラス対抗戦が不安になってきた。

 

「ところでグレイスはいつの間にテイマーになったんだ?」

 先生がグレイスの席に居座っているモモを見て言う。

「すみません、僕の従魔のモモです。一緒に勉強したいと言うので、前の席の方がいいだろうと思って貸し出しました」

 先生は従魔が勉強……?と呟くとため息をついた。

 

「まあいい。モモと言ったか。俺の授業は厳しいぞ。ちゃんと聞くように」

 モモはミっと鳴くと前足を上げた。先生はこういう所が優しいと思う。ピンクラビットにもちゃんと授業を受けさせてくれるんだから。

 

「ピンクラビットはこんなに頭のいい生き物だったか?まさかお前も変異種か」

 そう言った先生にモモがシールド魔法を披露する。先生は無言で僕を見た。

「何でかレア種ばっかり集まってくるんですっ!」

 僕は悪くないはずだ。先生は再びため息をついた。

「まあエリスだからな、校舎さえ壊さないならいい。授業を始めるぞ」

 クラスの子たちは今のやり取りに笑っていた。テディーなんて腹を抱えている。

 僕としては非常に遺憾だ。僕だからという理由で片付けるのはやめて欲しい。まるで問題児みたいじゃないか。

 

 授業は一般教養なので退屈だった。妖精の里やエルフの里の話になるとファンタジー感にテンションが上がったが、それだけだ。

 ノートをキレイに書くことに集中していたら、あっという間に授業が終わって、僕は背伸びした。

 

 今日も放課後勉強会のためにナディアとメルヴィンと合流して図書室に行く。そこでナディアが言った。

「ねえ、みんなにお願いがあるの」

 ナディアがお願いなんて珍しいな。

「今孤児院にテイマーの子が二人居てね。でもまだ何もテイムできていないの。商人から従魔を買おうにも、あれって高いからさすがに厳しくて。従魔探しのために冒険に同行させたいんだけど、駄目かしら?」

 そういう事なら断る理由なんてない。みんな二つ返事で了承した。

「ありがとう、明後日連れて行くわね!」

 ナディアは嬉しそうだ。

 

 明後日の冒険は、きっと賑やかになるだろう。

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