3.ウルフ
今日はアオと一緒に冒険する。冒険と言っても家の近くの森だけど、普段行かないところに行くのは少しワクワクした。
魔物避けの香を焚いて森の少し奥に行ってみる。不思議なことに魔物避けはテイムされた魔物には効かないらしい。
アオは僕の頭の上に張り付いていた。
『冒険!ぼーうけん!』
アオは楽しそうに歌っていた。僕も楽しくなって駆け足で進む。
おばあちゃんが歩けなくなってからは来ることのなかった場所に着くと、薬草を集めた。
ふと、アオが何かに気がついた。
『血の匂いがするの』
僕は警戒した。杖を構えていつでも魔法が使えるようにする。
アオが示す方向を見ると、木々の間から小さな白いウルフが顔を出した。
怪我をして血まみれだった。僕とウルフは見つめ合う。
襲ってくる気配は無い。この子は群れから追い出されたのかもしれない。
『テイムするの!』
アオが弾んだ声で言う。良いのだろうか。僕はウルフの方を見た。
やっぱり敵意は感じない。
僕は杖を構えて魔法陣を描いた。ウルフの額に模様が浮び上がる。
「名前は『シロ』だ」
光が消えて、白の額に模様が刻まれた。
僕らは近づくと、怪我をしたシロを抱き上げた。
『ありがとう』
シロは弱りきった声で言う。
「僕はエリスだよ。今日からよろしく」
ウルフにしては小さいシロだが、僕にはとても重かった。
急いで家に帰る。これもおばあちゃんが運んでくれた良縁なんだろう。大切にしないとおばあちゃんに合わせる顔がない。
僕はシロに回復薬を飲ませてやる。
アオは回復魔法をシロにかけてやっていた。アオの回復魔法は初めて見たが、魔法陣を見るに高位魔法だ。実はすごいレアスライムなのかもしれない。
『ありがとう、エリス、アオ。ブラックベアに襲われて逃げてたんだ』
どうやら群れから追い出されたわけではないらしい。
「群れに帰らなくていいの?」
『ナワバリから離れすぎて帰れないんだ』
シロはしゅんとしてしまった。耳もしっぽも垂れさがっている。
『ここで一緒に暮らしていい?』
不安そうにシロが言う。
「もちろん、僕たちはもう友達だよ」
シロが嬉しそうにしっぽを振る。
血まみれのシロに浄化の魔法をかけてやると真っ白になった。珍しいウルフだなと思う。見かけるウルフは大体茶色だ。
森の奥にいる種類なのかもしれない。
シロに出逢えたから、今日は冒険してよかったなと思う。
僕はその日、シロを抱えて眠った。ふわふわの毛並みが気持ちよかった。
きっといい夢が見られる。
その日見た夢は、可愛らしいポメラニアンとフリスビーで遊ぶ夢だった。前の僕の記憶だろう。犬用のお菓子の作り方がわかったから、今度シロに作ってあげよう。
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