24.シロの進化
翌朝、起きて早々僕は絶句した。
シロが大きくなっている。それこそ僕を乗せて走れるんじゃないかと思うくらいに。
シロはまだ幸せそうに寝息をたてているけど、明らかに大きさがおかしい。
昨日スカーフを外してから寝て良かった。したままだったら首が締まっていただろう。
僕は慌ててシロを起こした。
『うーんなあに、エリス』
起きたシロを姿見の前に連れていくとシロも驚いていた。
『え?これ僕?』
ブンブン振った尻尾が風切声を上げる。尻尾も大分強そうだ。
起きたアオも混乱していた。
『誰なの!?ビックリしたの!』
今のシロは体長二メートル近くある。昨日までは一メートル位だったはずだ。ご飯をお腹一杯食べただけなのにこの変わりようはなんだろう。魔物って皆こうなのだろうか。
考え込む僕にアオが言う。
『特殊個体だからなの。みんな大きくなるわけじゃないの』
やっぱりそうだよね。シロは大きくなった自分を見て嬉しそうな顔をしているし、健康に支障がないのなら問題ないのかな?
とりあえず着替えてリビングに行くとお父さん達も驚いていた。兄さんがシロの毛並みを撫で回しながらおかしな所が無いか調べている。
「シロはジャイアントウルフの子供だったのかな?」
ジャイアントウルフとは、ウルフの中で一番大型の種の魔物だ。若い個体で丁度今のシロと同じくらいの大きさをしている。
『そういえば群れのみんなはとても大きかったよ』
シロは思い出したようにそう言った。それを伝えると兄さんはジャイアントウルフは食べて大きくなるのかなと考え込んだ。
朝食も昨日とおなじくらい出してやる。体格から考えるとこのくらいの量でちょうど良さそうだ。
お母さんが嬉しそうにシロを撫でている。ふわふわの毛並みが気持ちいいらしい。
シロのチェックをしていたら出かける時間になってしまった。
僕はシロの首にスカーフを巻く。前は少し大きかったスカーフが今はピッタリだ。
僕らは急いで家を出た。シロが背中に乗ってと言ってくる。
僕は好奇心に抗えずシロの背中に乗ると、冒険者ギルドに向かった。
「シロ、重くない?」
『全然!エリスを乗せられて嬉しい』
シロは尻尾を振りながら上機嫌で歩いてゆく。道行く人がシロを避けている。そりゃあこんな大きなウルフ怖いよね。シロはいい子なんだけどな。
冒険者ギルドに着くと、ギルドの前で待ち合わせをしていた皆が絶句した。
「おはよう、ごめんねちょっとバタバタしてたら遅くなって」
僕が挨拶すると皆正気に戻ったようで、口々に話し出す。
「いやバタバタしてたとかそんなレベルじゃないだろこれ」
「大っきい……大っきいもふもふ……!」
「なんでこんなに大きくなってるの!?」
「僕の鑑定でも確かにシロ本人だよ、なんで一晩でこんな大きく……」
僕はご飯をお腹いっぱい食べさせたらこうなったと説明した。
みんな納得できないみたいだ。気持ちはよく分かる。
グレイスだけはいち早く順応してシロを撫でている。幸せそうで何よりだ。
「可愛いからなんの問題もないと思います!」
「まあ、中身はシロのままだしね、問題ないと言えばないけど……」
テディーは複雑そうだ。鑑定でもシロの正確な種類は分からないらしい。
「まあ、今後の冒険ですごく役に立ちそうではあるな。すげー強そう」
「今後魔物研究者が押しかけそうね。気をつけてね」
メルヴィンとナディアも受け入れることにしたようだ。僕はホッとした。
『大変、私の影が薄くなっちゃうの!もっと目立たなきゃなの!』
アオが見当違いな心配をしていて笑ってしまった。アオもレア種だから十分目立ってるんだけどな。
とりあえず僕らは当初の目的である冒険に向かうことにした。
「最初は日帰り出来そうなのから行こうぜ」
「やっぱり基本のゴブリン退治からがいいかしら?」
依頼の選定はメルヴィンとナディアが率先してやってくれた。流石長年冒険者をやっている二人だ、的確な物を選んでくれる。
今日は冒険者の基本、ゴブリン退治をする事にした。ゴブリンはすぐ増えるのに狡猾で、人間を襲って物を奪おうとする。常に間引かなければならない存在だ。一匹ではそうでも無いが、沢山狩ると報酬が上乗せされて結構な収入になる。巣を潰したらかなりの額だ。
僕たちは冒険者ギルドに設置されている転移ポータルで、ゴブリンの出現する森に転移する。
これは近場への移動なら冒険者は無料で使える有難い魔法陣だ。長距離になるとお金がかかってしまうが、それでも民間の物より安い。魔物の生息域の近くしか飛べないかわりに安くなっているんだ。
転移するとそこは森のそばの見張り小屋だった。職員さんに受けた依頼の紙を見せてそこを出る。僕らが若いからかとても心配されてしまった。
こうして僕らは初めての魔物討伐に挑むのだった。
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