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20.カラフル

 教室棟に戻るとそろそろ他のクラスの説明も終わったようだった。やっぱりブラッククラスだけとてつもなく短かったらしい。悪い先生では無いからいいんだけどね。

 

 レッドの教室を覗くとメルヴィンがこちらに気づいてやって来た。

 メルヴィンはもうクラスに馴染んだらしく、周りのみんなにサヨナラしている。レッドの子達はみんな積極的なのかもしれない。

「よう、お疲れ!……お!まさか勧誘成功したのか!?」

 メルヴィンがグレイスを見つけて笑う。握手しながらお互い自己紹介をした。握った手をブンブン振られたグレイスはあわあわしていた。


「よし後はあの金髪の女の子だな、たしかイエローに居たはずだ」

 僕達はイエローの教室に向かう。もう説明は終わっているようだけど、まだ居るだろうか。

 教室を覗くと試験の時の長い金髪の女の子がいた。

 貰った予定表に目を通していたようだ。

 

 メルヴィンは他クラスだろうと臆さず教室に入ってゆく。僕らもその後に続いた。

 こちらに気づいた女の子は目を丸くしている。

「よう、ちょっといいか?」

「構わないけど……すごいメンバーね」

 どうやら女の子は僕たちの事を覚えているようだった。一人ずつ自己紹介をしてゆく。

 

「私はナディア・ルディ。あなた達とは話してみたかったから、会えて嬉しいわ」

 ナディアは穏やかに笑っている。

「俺たち休日に一緒に冒険する仲間を探してるんだ。一緒にどうかと思ってさ」

 メルヴィンの言葉にナディアは少し驚いたように返した。

「私もちょうどパーティーメンバーを探していたところだったの、渡りに船だわ。一緒に組ませてちょうだい」

 ナディアは首にかけた冒険者カードをかざして見せた。

 すでに冒険者だったらしい。

「学園でパーティーメンバーをみつけようと思ってたんだけど、考えることはみんな同じね」

 ナディアの勧誘成功をみんなで喜んで、僕たちはその足で冒険者ギルドに向かうことにした。テディーとグレイスの冒険者登録と、パーティー申請をしなければならない。

 

 

 

 冒険者ギルドに向かう道中、グレイスが言った。

「シロちゃんとアオちゃん、可愛いですよね、テイマーって羨ましい」

 可愛いと言われたシロは上機嫌でグレイスに擦り寄る。

「僕ずっと思ってたんだけど、シロ、試験の時よりかなり大きくなってるよね、まだまだ大きくなりそうだよ」

 僕は驚いた。毎日一緒にいるから気づかなかった。

「突然変異の特殊個体だからものすごく強くなるかもしれないね」

『本当に!?やったー』

 テディーの言葉にシロが喜んでいる。ブンブン振られた尻尾がはち切れそうだ。

 ナディアがくすくす笑っている。喜びでテディーの周りをくるくる回るシロの上からアオが落ちそうになっていた。

『危ないの、気をつけるの!』

 

 

 

 はしゃぎながら歩いて冒険者ギルドに着くと、まずはテディーとグレイスの新規登録をした。二人ともあまりの簡単さに驚いている。

 次はパーティー申請だけど、問題が発生した。

 

「パーティー名どうする?」

 みんな黙り込んでしまった。こういうのって困るよね。

「なんかわかりやすいやつないかな」

 僕が言うと、みんな考え始める。

「そもそも僕たちの共通点って試験で的を破壊したことしか無いからね」

 テディーの言葉に頷く。

「歳も違うし、性別も違うし、髪もみんなカラフルだし。同じ学園生ってことくらいしかないよね」

 僕が言うとナディアが手を叩いた。

「カラフル。いいんじゃない?分かりやすくて」

「確かにいいな、変にカッコつけた名前にして後で恥ずかしくなるよりずっといいと思うぞ」

 

 何だか何気なく言った言葉でパーティー名が決まってしまった。でも悪くない。黒に金に赤に緑に水色。確かにカラフルだ。

「じゃあ早速申請しよう!」

 

 申請は登録より少し時間がかかった。僕たちは年齢が若いから。ギルドは極力討伐依頼をやらせたくないと思っている。本来なら通らないだろう。

 でも僕たちは今全員学園の制服だ。それだけで魔法が使えて知識豊富だと分かるから、ちょっとした質疑応答で済んだ。

 でも無理はしないようにと念を押される。前に学園生が帰ってこなかった事例もあると言われた。

 僕たちは神妙に頷いて、パーティー用の冒険者カードを受け取る。首から下げるカードが増えた。カードにはカラフルと刻印されていた。すごくワクワクする。

 

 

 

 その日は登録だけしてその場で別れた。明日は学園の初授業だからね。

 夜、僕はベッドの中でシロをモフモフしながら考えた。確かに大きくなってる。もう僕には抱えられないだろう。ご飯の量を増やした方がいいかもしれない。明日からそうしよう。

 

 僕はおばあちゃんに今日あった出来事を心の中で報告する。

 カラフルのみんなも、きっとおばあちゃんが引き寄せてくれた縁だ。

 ずっと仲良く大切にしよう。

 

 その日の夢は友達と遊園地に行った夢だった。前の僕の世界には楽しそうなものが沢山あるんだな。

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