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2.テイマー

 森の中で薬草を探していた時、何かがこちらを見ている気配がした。

 僕は気配を察知するのが得意だ。森で生き残るために、おばあちゃんが教えてくれたから。

 

 僕を見ていたのは藍色のスライムだった。攻撃してくる様子もない。ただじっとこちらを見ている。

 僕はおばあちゃんに言われたことを思い出した。

 僕のジョブは『テイマー』で魔物を使役することが出来るのだと。

 

 魔物はテイマーを認識している。相性のいい魔物はテイマーに攻撃してこないでついてくることがあると言っていた。

 テイマーに使役されると魔物の寿命はテイマーと同じになるのだ。

 とくに短命で弱い魔物は使役されたがるのだという。

 

 僕はスライムを使役してみることにした。

 魔法の杖を持って魔法陣を描く。不思議なことに手が勝手に動くような気がした。こんなことは初めてだ。僕が『テイマー』だからだろうか。

 魔法陣が完成すると、スライムの額に不思議な文様が浮かび上がった。

 後は名前を付けるだけだ。僕はこのスライムに『アオ』という名前をつけた。

 魔法陣が消え、そこには額に文様が刻まれたアオが残された。

「よろしく、アオ」

『よろしくご主人様』

 頭の中にアオの声が響く。テイマーにしか聞こえない声だ。

「僕の名前はエリスだよ。ご主人様は止めて」

『よろしく、エリス』

 

 そしてひとりぼっちの生活に新しい仲間が加わったのだった。


 

 

 アオは優秀だった。戦えない回復特化のスライムだったらしく、回復の魔法薬の素材として自らの体液を提供してくれた。

 これで一段階上の回復薬が作れるから、収入が増える。

 

 おばあちゃんが今際の際に良縁を引き寄せる魔法をかけると言っていたが、この事だろうか。

 アオと出逢えたのはおばあちゃんのお陰なのかもしれない。

 

 それからは毎日アオと一緒に回復薬を作った。話が出来る子がそばに居るだけで、おばあちゃんを失った悲しさを忘れられた。

 おばあちゃんは僕に前を向いて生きろと言ったのだ。少しずつだけど、それが出来そうな気がした。

 

「ねえ、アオ」

 僕はベッドの上で横になってアオに話しかける。

『なあに?エリス』

 アオはぷるぷると揺れて僕の近くにやってくる。

「僕は何をしたらいいんだろう?」

 

 僕はこのあばら家以外の世界を知らない。街に何度か降りたことはあるが、それだけだ。

 前を向いて生きるとはどうする事なのか、僕にはよくわからなかった。

『エリスがしたいことをすればいいと思うの』

 アオの言葉に僕は考える。したいこととはなんだろう?

「冒険?」

 ふと口をついて出た言葉に、アオは飛び跳ねる。

『楽しそうなの!』

 飛び跳ねているアオを見て僕は笑った。なんだかおかしくて堪らなくなった。

「そうだ、冒険しよう!一緒にドラゴンを倒そう!」

『ドラゴンなんかに負けないの!』

 こんなにおかしいのは久しぶりだった。きっと僕はおばあちゃんを失ってから、笑い方を忘れていた。

 アオが思い出させてくれたんだ。この縁を大切にしよう。

 

 後日家に来たパスカルさんにアオを紹介する。

「スライムか、テイムできて良かったな」

 そう言って、パスカルさんは僕の頭を撫でた。

 その顔がどこか安心したようだったのは、僕を心配してくれていたからだろう。

 パスカルさんは上級の回復薬を高値で買い取ってくれた。これからも頼むと言って去ってゆく。

 

 今度アオと二人で街に出てみようかと僕は思った。

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