175.パーティーの終わり
兄さんはジョアンナさんの話に混ざると、フェミナさんの隣に座った。
さっきまで兄さんの隣に居た女の人達はどうやらシロが怖くて近づけないらしい。
シロは噛みついたりしないんだけどな。大きいだけで怖いのかも。シロも空気をよんで女性達が近づこうとするたび口を大きく開けて威嚇?をしていた。
「エリスはエルフ族や妖精族とも仲が良いから、あなたの研究の力になれるでしょう」
兄さんがそう言ったけど、それは言っていいことなのかな?なんとなく内緒にしないといけないと思っていたから、兄さんの発言に驚いた。
「え?そうなの?私のお父様もエルフ族と妖精族と交流を許されているの。とはいっても許されているのは歴代の当主だけだから、私は会えないんだけどね」
そういうことか。代々異種族と交流を持っているから国に重用されているのだろう。僕は幻鳥の卵はエルフ族に貰ったものだとジョアンナさんに話した。
「そうだったのね。どうしてエルフ族と交流が持てるようになったの?」
僕は聞かれるままに大魔女の弟子なのだと話す。
ジョアンナさんとの話はとても楽しく。気づけば二人で話し込んでいた。気づけば兄さんはフェミナさんと全く違う話をしている。これはいい兆候なのではと思う。
「お兄さんの結婚相手が心配?」
ジョアンナさんは僕の視線に気が付いて小声で聞いてくる。僕が頷くと、ジョアンナさんはくすくすと笑う。
「フェミナは良い子よ。頭もいいし謙虚だし二人ともお似合いだと思うわ」
僕の目からもそう見える。兄さんも無理をしている感じじゃないし、楽しそうだ。
『私の目に狂いは無かったの!いい仕事をしたの』
突然後ろからアオの声が聞こえたから僕は驚いた。気が付けばみんなシロの周りに戻って来ていた。お仕事終了ということだろう。
「あら、幻鳥さん戻ってきたのね。触ってもいいかしら」
『綺麗な姉さんなら歓迎するぜ』
クリアの返事を通訳するとジョアンナさんは可笑しそうにしていた。大きく翼を広げたクリアに触ってかっこいいとはしゃいでいる。
「ねえ、エリス君。大きくなったら異種族交流部に来ない?まだ小さな部署だけど、エリス君が大きくなるころにはほぼ断絶されている異種族との交易を復活させたいと考えているの」
それは国で最近新設された組織の一つであるらしい。ジョアンナさんはそこに属して日々異種族との交流に関する研究をしているのだそうだ。七賢者の息がかかった組織で、異種族との交易復活を目標としているのだと説明してもらった。
「それとも他に将来の夢とかあるかな?エリス君の歳だとたくさん夢がありそうね」
そう言われて、僕は少し考えた。僕には夢と呼べるものがない。漠然と将来はどこかで働くんだろうなとしか考えてなかった。僕が首を傾げていると、ジョアンナさんは笑った。
「何も無いなら少し考えてみて!エリス君みたいに異種族と交流のある子は貴重だから、異種族との友好の為にはぜひ来てほしい人材よ」
僕はありがとうございますとお礼を言うと、クリア達と戯れるジョアンナさんを見つめた。僕も自分の将来について少し考えるべきだろうか。カラフルのみんなにも聞いてみようかな。
夕方になって、パーティーは終わりをむかえた。兄さんはフェミナさんが気に入ったようで、一緒に出掛ける約束をとりつけていた。
兄さんはアオ達に大変感謝しているようで、持ち上げてぐるぐる回していた。
「ありがとう、アオ!おかげで気の合う子を見つけられたよ」
『よかったの。兄さんのお嫁さんなら私にとっても姉さんなの!お嫁に来るのが楽しみなの』
二人の仲が良くて何よりだ。付き合わされたモモは疲労困憊で眠っているし、チャチャは反対に大人しくしているのは限界だったようでその辺りを走り回っている。シロは色々な人に可愛がってもらえて上機嫌だ。
自分の部屋に戻ると、僕はおばあちゃんのペンダントに語り掛ける。
「今日は大変な一日だったよ。おばあちゃん。僕の夢って何だろう?おばあちゃんは、僕が何になったら嬉しい?」
興味があることはたくさんある。でもそれが夢かと言われると微妙なところだ。僕はあくびをしてベッドにもぐりこんだ。
その日は久しぶりに前世の夢を見た。
目当ての企業に就職できて、大喜びしていた。前世の僕には夢があったんだな。僕も早く見つけたい。