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祝福されたテイマーは優しい夢をみる【2巻発売中】  作者: はにか えむ


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148/186

148.グレイスの帰宅

 葬送の翌日、お昼ごろに起きた僕とエリカ族長はたくさんのドワーフに見送られてドワーフの里を後にした。お土産にドワーフの作った金属製の杯をもらった。なんとお酒や飲み物を保温してくれる魔法道具らしい。お父さん達が喜ぶだろう。

 一度エルフの里に戻ると、エリカ族長はまだフラフラしていた。二日酔いだ。

「エリス、シロも二日酔いのようだが帰れるか?こちらに泊まっていってもいいんだぞ」

 確かにシロは頭が痛いのかいつになく険しい顔をしている。

『大丈夫、歩けるよ』

 何とも言えない顔でシロは言った。まあ、そこまで遠くないし大丈夫だろう。僕は泊っていくのは遠慮した。お父さん達も心配するだろうし。

 エリカ族長は残念そうに僕らを送り出してくれる。

 

 特に寄り道することなくまっすぐ家に帰ると、家の前に見知らぬ馬車があって、玄関に知らないメイドさんが居た。

「あ、エリス、お帰りなさい!」

 グレイスが僕に駆け寄ってくる。

「私、お屋敷に帰ることになりました。無事離婚が成立して、お母様は実家に戻られたようです」

 僕は驚いた。突然の事だったからだ。モモがショックを受けてグレイスに飛びつく。

『そんな、帰っちゃうんですか!?もう少しいてくれても……』

「モモちゃん、ごめんなさい。ティアラも家で待っているようで、早く帰ってあげたいんです」

 ティアラちゃんはどうやらお母さんには付いていかなかったらしい。モモはしょんぼりしてグレイスにすり寄っていた。

「学園でまた会えますよ、モモちゃん」

 モモは最近ずっとグレイスと一緒に寝ていたので寂しいのだろう。アオも女子会と称してよくグレイスの所に行っていたので寂しそうだ。

『寂しいの。でもお家に帰っても頑張るの、グレイス』

 アオの言葉を通訳すると、グレイスは笑った。晴れやかな笑顔に、なんだか前とは違う前向きさを感じて僕も嬉しくなった。

 僕はグレイスの家から借りた本を持ってきてグレイスに渡した。

「曾お爺様がまたエリスに会いたがっているようです。近いうちに遊びに来てくださいね」

 僕は笑顔で頷く。セシルお爺さんには僕もまた会いたかった。

 グレイスとは別に永遠の別れではない。ちょっと寂しいけど笑顔で送り出すのがいいだろう。

 僕らはお母さん達と一緒にグレイスの乗った馬車に手を振って別れを告げた。

「娘ができたみたいで嬉しかったのに、寂しいわ」

 お母さんはとても寂しそうだ。帰り際に作った服をたくさん渡していた。

 

 グレイスを見送ると、なんだか僕も寂しくなってしまった。兄さんが僕を気遣ってドワーフの里はどうだったか聞いてくれたので、お土産を渡す。

 みんなとても嬉しそうだった。僕は知らなかったけど、ドワーフの作る杯もお酒が美味しく飲めると有名らしい。

 食堂でみんなで集まって、ドワーフの里での出来事を話すとお父さんが悲しそうな顔をした。

「そうか、お葬式か……私も迷っていたんだ。本来なら街をあげて葬送するべき人だからな」

 お父さんは僕を気遣って、やらずにいてくれたらしい。僕はそんなにひどい状態だっただろうか。自分では気づかなかったけどそうだったのかもしれない。

「今度、森の近くの丘にネリー様の慰霊碑を建てようかと思ってるんだ。エリスも近くに祈りに行ける場所があった方がいいだろう?」

 お父さんの言葉に僕は頷く。僕はもう大丈夫だ。おばあちゃんの死ともちゃんと向き合えるようになった。

 慰霊碑、楽しみだな。僕の意見も取り入れてくれると言うので、僕はできる限りたくさんの人に見てお貰えるようにしてほしいとお願いする。おばあちゃんは今でもたくさんの人に愛されているんだって、おばあちゃんにも知ってほしいから。

 

 僕はその日の夜、ペンダントに語り掛けた。

 ドワーフのみんながどれだけおばあちゃんを恋しがっていたかや、おばあちゃんの思い出話をたくさん聞けたこととか、語りだすと止まらなかった。おばあちゃんの思い出話に触れるたび、おばあちゃんがまだそこに居てくれるかのように感じられて嬉しいのだと言うと、僕の目から少し涙がこぼれた。でも昔の様に、これは絶望の涙じゃない。上手く言えないけど、僕の中で何か一つ区切りがついたような、そんな涙だ。

 おばあちゃんを送り出したことで、ぼくはまた一つ前を向けたような気がする。そうだよね。おばあちゃん。

 

挿絵(By みてみん)

アース・スターノベル様より1巻発売中です!

本編加筆の他に外伝3作と大ボリュームになっておりますので、よろしくお願いいたします!


それとひっそり新連載も始めておりますのでそちらの方も興味がありましたら是非!

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