118.ツタの活用方法
午前中が終わる頃、僕とテディーはおじいさんの指導で大分マシな打ち合いが出来るようになっていた。
練習していた分僕の方に分があるけど、テディーも中々様になってきたと思う。
いつか二人とも剣をもって冒険に行けたらカッコイイだろうなと思う。
僕らは息を切らして互いの健闘を称え合うと、呆れた目でメルヴィン達を見た。
「で、どうするの?その大量のツタ」
すっかり疲れきって地面に突っ伏しているメルヴィンたちの周りには、切り取られたツタが山になっていた。
「はははは!随分大量だな!よく頑張ったじゃないか!」
おじいさんは可笑しそうに笑っている。ここは怒るところじゃないかな。
「はいはーい!ちょっと失礼するわよ!」
その時テラスにいた女の子の妖精が下りてきた。
どうしたのかと思っていると、ツタに触れてどんどんツタを枯らしていく。枯れたツタはなんだかとても丈夫そうだった。
「これで籠が作れるのよ!服作りを教えてくれたお礼に籠の編み方を教えるわ」
どうやら手芸の材料になるらしい。どうしようか困っていたからとても助かる。
上の階からお母さんが歓声を上げている。僕らが訓練している間仲良くやっていたみたいだ。
僕らは乾燥したツタをシロの背中に積んでお母さんの元へと届けた。軽く十往復はしなきゃならなかったけど、シロはまだ元気いっぱいのようだ。一緒に戦っていたメルヴィンと妖精達は起き上がれないほど疲れている様子なのに、とても楽しそうに配達員をやっていた。
正直運びきれないくらいツタがあったので、残りは声をかけてくれたメイドさんたちに任せて僕らは昼食にすることにした。
昼食の席で、メルヴィンは一部始終を見ていたナディアに呆れられていた。グレイスは楽しそうに笑っている。
男の子の妖精達は女の子の妖精達に叱られていた。動けなくなるまで魔法を使って遊んでいたんだからそれは反省するべきだろう。
ここは人間の領土だしね。魔力切れで姿を隠せなくなるのは問題だ。
でもあんなになるまで妖精達の猛攻を防ぎきったメルヴィンはすごいと思う。シロの助けがあったといっても、相手は絶対に敵に回してはいけないという妖精だ。一緒に冒険を始めた頃より格段に強くなっている。早く僕もそんなふうに剣で戦えるようになりたいな。
午後は僕らも妖精に籠作りを習うことにした。ちょっと疲れちゃったからね。
一度乾燥させたツタを水につけて柔らかくしてから編んでゆく。初めてだったけど結構面白かった。
僕はちょっと歪になってしまったけど、円筒型の籠を作った。モモが何故か中に入って出られなくなっていた。籠から覗く大きな尻尾が可愛いなと思う。
ラビットって狭いところが好きなんだっけ。
僕はモモを救出すると出来上がった籠をお日様の下に置いて乾燥させる。こうしないとカビが生えるらしい。モモが名残惜しそうにしていた。この籠はモモには小さすぎると思う。
そんなモモを見たグレイスが、大急ぎでモモにピッタリな籠を編みだした。底が浅く簡単に開けられる蓋付きで、間違っても出られなくなることは無いだろう。モモは大喜びしていた。
乾燥させている横で待ち遠しそうに揺れている。
『狭いところが好きなんてモモは変わってるの、お日様の当たる原っぱが一番なの。水場があればもっと最高なの』
どうやらラビットとスライムは相容れないらしい。スライムは魔物に餌認定されることが無いから、野生で隠れる必要が無いんだろう。ラビットは穴を掘って暮らすらしいから、狭いと落ち着くんだろうな。
シロとクリアは部屋の片隅でお昼寝中だ。
アオは実はさっきから僕達と一緒に籠を編んでいる。触手のように体を変形させて手のように使っているんだ。午前中もそうやって裁縫をしていたらしい。器用だな。
妖精達の指導の元、みんなが籠を作り終えて乾燥するのを待った。
ゆっくりお茶を飲みながら談笑する。
お母さんは妖精達ととても仲良くなったようで、いつでも遊びに来てと妖精達に言っていた。
「今度服飾担当の子を連れてくるから、色々教えて欲しいわ」
妖精達は上機嫌だ。服飾担当なんているんだな。どうやって生地を作っているんだろう。妖精達の服は光沢のある生地で出来ている。案外蚕でも飼っているのかもしれない。
今度お土産に可愛い色味の生地を持っていくのもいいかもしれないな。
男の子の妖精達はまたメルヴィンとシロと勝負したいようで、暇な時は妖精の里に修行に来てと誘っている。メルヴィンは行く気満々なようだ。シロも行きたそうな目で僕を見ているから、今度連れて行ってあげよう。