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105.勝負

 次に向かうのは広場だ。まずは水場が少ない方の広場に行ってみる。そこは本当に広大な広場で、中央が芝生、周囲が円形に土で囲まれていて走れるようになっていた。

「レースができるな!よし、勝負だ!」

 トレバー君が早速勝負をしかけてくる。シロ達はやる気のようだ。

 オクサナも乗り気のようなので僕らはかけっこ対決をする事にした。不参加はスライム達とモモだ。彼女達は中央の芝生でのんびり日光浴を始めた。

 

 シロ達がスタート位置に着くと、合図とともに一斉に走り出す。

 やっぱりトップはシロとオクサナの奪い合いになった。その後ろをクリアと幻鳥のミズリーが追いかける。ウルフトリオのアル、ミール、フィールは四匹の速さに追いつけないようだ。

 結果はシロの勝利だった。オクサナが悔しそうにしている。

 幻鳥組も勝ったのはクリアで、トレバー君が項垂れていた。だいぶ引き離されてゴールしたウルフトリオが申し訳なさそうにトレバー君の元に戻ってゆく。シロとオクサナとは大きさが倍は違うのだから速さで負けるのはしょうがないと思う。

 僕は大きさが違っても何かいい勝負になるものがないかと探した。

 すると看板が目に入る。おもちゃの貸出しもやっているみたいだ。そうだ、フリスビーなら体格がほとんど関係ないし、テイマーも一緒に遊べるんじゃないかな。

 

 僕がそう言うとトレバー君は途端に元気になって、次は負けないと闘志を燃やしていた。ウルフトリオも気合十分に吠えている。

 僕らはフリスビーを借りると芝生に戻る。

『エリス、それなあに?』

 シロがしっぽを振ってワクワクした顔でこちらを見ている。

「フリスビーだよ、投げたのを地面に着く前にキャッチするんだ」

 僕がそう言うとシロは楽しそうな気配を感じたのだろう。目をキラキラさせていた。

 試しに投げてみると、案外難しかった、そこまで遠くへは飛ばなかったけどシロが追いかけてキャッチしてくれる。

 これはテイマーの腕も問われる。それに大きい分小回りがきかないシロが不利かもしれない。

 クリアとミズリーにはボールを投げることになった。フリスビーでは鉤爪で掴めないからだ。

 

 僕達は少し練習したあと。勝負することにした。

 数回投げてより多くキャッチできた子が勝ちだ。

 この勝負はウルフトリオの方が得意だったようで、確実にフリスビーをキャッチしている。

 シロは距離感が掴めずフリスビーを追い越してしまったりして、あまり得意じゃないみたいだ。

 オクサナも奮闘するが、そもそも口でフリスビーをキャッチするのが難しそうだった。

 クリアとミズリーは勝負関係なく楽しんでいるみたいだ。クリア曰く狩猟本能が刺激されるらしい。

 シロ相手に初めて勝利をおさめることが出来たウルフトリオは、大喜びでトレバー君の元に駆けてゆく。

 トレバー君も嬉しそうだ。

 

 お昼までクタクタになるまで遊んで、みんなでカフェスペースへ行く。お腹がすいた。

「ちょっとはしゃぎ過ぎたな。普段あんまり運動しないから疲れたよ」

 ジュダ君がふかふかのソファにもたれかかってため息をついた。

 ジュダ君の仕事は順調みたいで、たくさん予約が入っているんだそうだ。ドナさんも興味を持ってくれて大口の依頼をくれたらしい。

 

 みんなでお昼ご飯を食べながら雑談する。

「そういえばトレバー君はどうして最強のテイマーになりたいの?」

 僕が聞いてみるとトレバー君は言った。

「小さい頃に病気で死んだ母さんと約束したんだ。最強のテイマーになるって……でも最近は最強のテイマーってなんだろうって思ってる。強い従魔をテイムしたら最強なのか、なんかそれも違う気がしてて……」

 そっか、その約束を大きくなってもずっと守ろうとしているのか、同じく片親がいないジュダ君とおばあちゃんを亡くした僕はすこしそれに共感した。

「悩んでた時に、マリリン様からお前の話を聞いたんだ。それで居ても立ってもいられなくなって学園に編入したんだ。……初めは突然絡んで悪かったと思ってる」

 僕は何も気にしてない。嫌なことはされていないし、ちょっと面白かったし。僕はあんまり自分から人に声をかけるほうじゃないから、グイグイ来てくれる子は有難い。

 そう言うと、トレバー君はホッとしたようだった。

 

「強い従魔をテイムしてたら最強って訳でもないと思わないか?だって強いのは従魔でテイマーじゃないだろう?師匠にそれを言われて、確かにって思ったんだ、でも、だったら最強のテイマーってどんなのだろうって考えちゃってさ……」

 みんなで頭を捻って考える。難しい問題だ。

『そんなの簡単なの、従魔を大切にするテイマーが最強なの!だって大切にしないと従魔だってちゃんと力を貸してくれないの!』

 アオが僕の膝に飛び乗って言った。なんだかそれはとってもしっくりきた。

 アオの言葉を二人に伝えると、それぞれ自分の従魔を見る。そうだと言っているような顔をしていた。二人の従魔が何を言ったか分からないけど何だか二人とも嬉しそうで、トレバー君は憑き物が落ちたような顔をしていた。

 従魔と強い絆で結ばれてるテイマーが、最強のテイマーなのかもしれないな。

 

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