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祝福されたテイマーは優しい夢をみる【2巻発売中】  作者: はにか えむ


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102.スライム

 アオの周りには数十匹のスライムが居た。テイムされている訳では無い。野生のスライムだ。でも何故か人を襲う様子無いみたいだ。

「あ、エリスくーん。何だかアオちゃんのお友達がいっぱい来たみたいなの!どうしてこうなったのか通訳してくれる?」

 先生も困り果てていた。僕はさっきからドヤ顔をしているアオに聞いてみる。

 

『みんな浄化の魔法が使えるスライムなの!人間の従魔になりたい子がいないか聞いて勧誘してきたの!沢山見つかったの!』

 僕は驚いた。浄化の魔法が使えるのは結構レアなスライムのはずだ。回復魔法と浄化魔法の両方が使えるアオほどレアでは無いけど、それでも数が少ない。

「よくこんなにレアな子が沢山見つかったね」

 僕が言うとアオは不思議そうに体を傾けた。首を傾げているつもりなんだろう。

『レア?浄化魔法が使えるスライムは大きな沼地に沢山いるの。別にレアじゃないの』

 新事実発覚に僕は混乱した。

『恐らく人間のテイマーが危険な沼地に立ち入ることはほとんど無いので、知られていないのでは無いでしょうか?』

 モモの言葉に僕は納得した。確かに好き好んで沼地に立ち入る人間は少ない。そこにスライムが居たとしても、浄化能力を持っているかまでは分からないだろう。早急に討伐されるか無視されて終わりだ。

 

 先生に事情を話すと先生も驚愕していた。横で聞いていたダレル君は大興奮だ。

「すごいすごい!大発見だよエリス君!きっとこれでスライムをテイムするテイマーも増えるよ!」

 アオがダレル君の言葉を聞いて胸を張っている。

『スライムは役に立つの!役に立たない最弱魔物なんかじゃないの!』

 アオが言うと周りのスライム達がその通りというようにプルプル震える。なんか色とりどりのゼリーが沢山あるみたいで可愛いな。

 一歩引いて僕と先生達の会話を聞いていたテイマーの子が、恐る恐る近づいてきた。

「この子達、私達がテイムしても良いってこと?」

『そうなの、相性のいい子を選ぶの!今なら任意テイムし放題なの!』

 アオの言葉を通訳すると、テイマーの子達は大喜びしていた。二匹テイムしてもいいか聞いてくる子もいてみんな楽しそうだ。

 ただスライムの数が多すぎて余りそうだ。余ったらどうしよう。月刊テイマーのドナさんに相談して、浄化魔法を必要としてる良いテイマーさんを探してもらおうかな?


 僕が考え込んでいると、トレバー君が話しかけてきた。

「お前、本当にすごいテイマーだったんだな。こんな光景見たことないぞ。俺もテイムさせてもらってもいいか?」

 僕はもちろんと頷いた。でもこれだけは言っておく。

「すごいのは勧誘してきてくれたアオで、僕じゃないよ。お礼もアオに言って」

「そうか……じゃあそうさせてもらうよ。今度ちゃんと勝負してくれよ!」

 トレバー君もスライム達の元に駆けていった。

 

 アオはみんなにお礼を言われて誇らしげにしていた。案の定余りのスライムが出たので、先生にも許可をとって街に連れて帰る事にする。放課後はドナさんのところに直行だ。

 アオに通訳してもらって、溢れたスライム達には一旦木箱に入ってもらう。捕まえたテイムしていない魔物は、逃げられないように頑丈な檻か何かにいれて持ち歩かなければならない決まりだからだ。スライムは弱いから木箱でも問題なく街に入れるだろう。

 

 学校に戻り、イヴリン先生が授業の終わりを宣言すると、みんなから歓声が上がった。

 今回の授業で不合格だった班は居ないようで何よりだ。

 色々あったけど、楽しかったな。

 僕は急いでスライムを連れてドナさんのところに行くことにした。木箱の中にいつまでも入れておくのは可哀想だ。

 

 いつものメンバーとダレル君がスライムを運ぶのを手伝ってくれる。ダレル君が家にも一匹欲しいから、後でテイマーであるお父さんをドナさんのところに向かわせると言っていた。

 掃除の手間が省けて便利だもんな、浄化魔法。悲しいことに多くの人間が苦手としている難しい魔法のひとつなんだけどね。

 

 スライムを大量に持ち込むと、ドナさんは驚愕していた。

 みんな浄化魔法が使えると言うと大興奮だ。しかもみんな人間の従魔志望だ。

「大きな沼地に沢山いるの?新情報だわ!早速捕獲班を向かわせないと……テイムしたい人間が沢山いるわよ!」

 テイマーの社員さんが、テイムさせてほしいと立候補してきた。みんな浄化魔法と聞くと目の色を変える。沢山いるから喧嘩にならずにすむのはありがたい。アオに感謝だな。

 

「あんなに居たのにもうみんなご主人が決まってしまいそうですね」

 グレイスが私もテイマーだったら良かったのにと溜息をついた。

「うちの孤児院にも一匹欲しいわ。子供が多いから掃除してもすぐに汚れるんだもの」

 ナディアが残念そうに言う。

 みんなの話を聞いてアオはずっとドヤ顔をしていた。

『スライムの面目躍如なの!最弱なんてもう言わせないの!これから大人気従魔になるの!』

 アオは世間のスライムに対する認識に不満があるようだったから、今回のことは本当にいい事だと思う。浄化能力を持つスライムがレアな存在じゃなくなれば、アオ自身の危険も少し減るだろうしね。

 

「そうだわ、エリス君。以前言っていたテイマーのための遊び場が、夏前には出来上がるわよ!約束通りエリス君は永久無料にしてあげるから、通ってちょうだいね!」

 ドナさんの言葉にシロがブンブン尻尾を振ってドナさんに擦り寄っていた。よほど楽しみなんだろう。うちの庭も広いけど、他の従魔も一緒に遊べる機会はそう無いからな。とても楽しみだ。


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