休日①
6話
休日だぁ。
今日は朝早くに起きた。
1階に降りて、歯を磨く。
「おはよー、胡桃」
コクコクと妹、長谷川胡桃が頷く。
胡桃が先に歯を磨いていた。
胡桃が横にずれる。
俺は歯磨き粉を歯ブラシにつけて後ろに下がる。
そうすると胡桃がまた元に戻ってくる。
ジャコジャコジャコジャコジャコジャコジャコジャコジャコジャコジャコジャコジャコジャコ。
歯を1つ1つ、前、上、裏を歯ブラシを縦にして、丁寧に磨いていく。
妹はより念入りに磨いている。
ジャコジャコジャコジャコジャコジャコジャコ…
「っぺぇっ」
胡桃は歯磨き粉を吐き出した。
そして、水を口に含んで洗う。
「っぺ…いー」
歯がきれいになったのを確認して…
「おはよー、お兄ちゃん」
と言ってリビングの方に向かった。
俺もぬるくなった歯磨き粉を吐き出す。
…口の中を水でゆすぐ。
「ぺ…いー」
あほ面がそこにはあった。
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朝飯を食べている胡桃の横に座り、俺も朝食を摂る。
トーストだった。
胡桃は食べながら、トースターにトーストを2枚入れた。
そして、つまみを6以上にして3に設定した。
…バターしかないな。ジャムでも取ってくるか…
立ち上がろうとして、胡桃が言う。
「いちご」
「へ~い」
キッチンへ向かい、いちごとブルーベリーを取ってくる。
机に置く。ふぁ~…眠い。
「昨日、誰かと喋ってたでしょ?そのせい?」
「いや、5分で終わったしな」
「何喋ったの?」
「言えん」
「へぇ~、言えないこと喋ってたんだー」
「当ててみろ」
トースターのつまみは残り1を示していた。
「『…言えない』」
「おい」
「『お前はバカだ』」
「犯罪者が」
止まらない。
「俺はお前が嫌いだ。etc」
俺はつまみをグイっと0にした。
ち~ん。
蓋を開け一枚は胡桃に、もう一枚は俺の皿に乗せた。
「ありがと、お兄ちゃん」
「で?何が言いたいんだよ」
いちごのジャムを塗りながら胡桃は答える。
「彼女できた?」
「女友達ができたんだよ」
「その人にも、うそ見抜かれてたのに私に通るわけないじゃん」
「今回は優しいうそなんだよ、見逃してくれ」
あんまり、胡桃を巻き込みたくない。
トーストにブルーベリーを塗りながら続けて言う。
「本当に必要になったら話す。そのときは協力してくれ」
「ほんとに大丈夫なの?隠す気ある?昨日も協力って言ってるから、もうそういう関係なんじゃん」
「どうせばれるので隠す気はなかったな」
「ふ~ん」
いちごのジャムを塗り終わった。
…体ごとこちらを向いて胡桃が言う。
「ちゃんと言って」
「…」
「そしたら協力関係になってあげる」
「心強い」
「でしょー!」
「でも、そのときはそいつも連れてお願いしに来るわ」
「そっか…何て名前?」
「小清水咲」
「そのときは…どうなってるか楽しみだねぇ」
「え?」
胡桃はトーストを食べ始めた。
俺もトーストを食べ始める。
…3分で食べてしまった。胡桃が。
そして2階に行こうとリビングを出る前に言った。
「…私は、お兄ちゃんがお願いしてくれたら、それだけでいいのに…」
…俺は、いちごのジャムも試してみる。
ブルーベリーといちごの味を噛みしめながら、感謝した。
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後はどうってことない休日を過ごした。
かあさんは家事をしている。
親父はどこかに行っているが、現地に行かない時は、決まって15時に帰って来る。
しばらくしたら、「いい位置」「差せぇぇぇぇ」「ゴミかすぅぅぅぅぅ」。
元気いっぱいである。
…俺も一緒になってやるときがあるけど。
そんなこんなで土日が終わる。
明日からまた学校だが、今日はいつもより心地よく寝れそうだ。