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電話に親友、そして電話

「そう、あなたのお友達は違うのね」

「ああ、B先生が生徒会室にいることは知らなかった」


早速、電話をかけて今日の報告をした。


「悪いわね、嫌なこと押し付けて」

「嫌なこと?」

「友達を疑わせたこと」


気にしてたのか。


1.悪いと思っているなら、それでいい

2.もう、疑いたくないな

3.協力、するって決めたからな。


「協力するって決めたからな。だから、悪いと思う必要はない」

「…そう」

「俺は俺のやれることをする。だから、」

「…」



「お前はお前のすべきことをしろ」


「…」


…黙っちゃった。

何か悪いこと言ったか?

いや、何も悪いことは言ってないはず…ただ、


「あーすまん。上からだったな」

「……」


何て言えばいいんだ。

今日はあまりいい日じゃないな…


「あなたでも戸惑うことがあるのね」

「…俺をロボだと思ったか?」

「いいえ?でも意外ではあるわね」


こいつには、俺がどう映ってるんだ?

…彼女は続けて言う。


「私が昔、言われた言葉が、そのまま出てきたから」

「…誰に言われたんだ?」

「秘密」


秘密、入りましたー…嬉しくねー。


「じゃあな」

「ええ、またね」

「…」


ぶちっ、つーーーーーーー。

まぁ、切り忘れないか。


…。


寝よ。



————————————————————————



やっと週末が来た。いつもなら嬉しいんだが。

今日は、感謝しときたい相手がいる。

おっ、いたいた。


「金髪さーん」

「ん?おはよーう、珍しいね。そっちから声かけてくるなんて」

「感謝を伝えようと思って」

「感謝?なんかしたっけ?」

「昨日の昼休みは割り込んできてくれてありがとう」

「んー?私が話をしたいと思って話しかけただけだから大丈夫だよ?」

「…俺ら2人ならピリピリした空気だったかもしれないから」

「あーそういうこと」


ぽんっ、と手を叩く。

そして、指で俺を指しながら言う。


「あんまり人を、友達を疑っちゃだめだよ?」

「あー善処する」

「だめです」

「え?」

「善処ではだめなのです。」

「…」

「私たち、友達、だよね?」

「そうなの?」

「えー!?」


…俺、金髪さんのこと、ほとんど知らないんだけど。

あっ、結構怒ってるな、これ…


「…じゃあ、どうやったら友達になってくれるの?」

「…さっきのは冗談、って言ったら?」

「…友達じゃないので信じません」

「あっ、友達になりますぅ」


友達免罪符、サイコー。


「…絶対にしよ?」

「え?」


…何が?


「友達を疑わない、絶対に、ね?」


はい、誓いますぅ。

即答したかったなぁ。

嘘をついてもよかったが…


真剣な目だったから、目を見て答えた。


「悪いな。今は、無理だ」

「そっかぁ、しょうがな——」

「でも、あなたのことは疑いません」

「————————」


ありのままの心を伝えた。

この子なら、信じられる。

…何か、通れ!


「いいよ」


通ったあああああ。


「じゃあ、お友達ってことでよろしいでしょうか」

「…だめです」


彼女は人差し指を唇に当てて否定した。

…何の許可をもらったの?俺は?

困惑している俺を、その指で指さして、


「親友です」

「え?」

「さぁ行こう!親友!登校しよ!」


…俺は金髪さんの知り合いから、親友に昇格した。

…やったー!


——————————————————————————


登校した。

金髪さんが興奮してた。

ずっと「それな!」しか言ってなかったが、全部ウケてた。

なんでやねん。

登校ギリギリ。俺はくたくた。


「よぉ、親友」

「はったおすぞ、お前」


間もなく、A先生が入ってくる。


「ホームルームを始めます。日直の方、お願いします。」


また、やる気のない号令が…


金髪さんじゃん…


もう想像がつく。目を覆いたい。

授業参観に来た親ですら引いてしまう子供の挨拶はこちらです…


「きりーーつ!きおつけぇ!礼!」


あまりに声がでかすぎるので、全員きっちりやっていた。

…すみません、俺のせいです。と頭を下げ、ダチは、

腹を抱えて声を殺して笑っている。体がくの字に曲がっていたので礼になってた。

A先生は、


「今日は遅刻せず登校してきましたね、普通です」


と返していた。

先生もちょっと混乱しているようだ。


「…ええ、すみません。何を話そうとしたか忘れてしまったので、これでホームルームを終わります」


ちょっとどころじゃないわ。


「なぁなぁ、何をやらかしたんだよぉ」

「…何か話したくないなぁ」

「親友に言えないことなのか?」

「友達な」

「んだよー、急に敷居敷きやがって」

「これは重要なことだ」


しっかり決めておかないと、彼女に失礼だからな…。


「それにお前とは友達じゃないな」

「じゃあ何だよ」

「腐れ縁」

「だいぶ下だな」

「俺の中では上だけどな」


切っても切れない関係という意味を込めてだが。


「あんまり言わない方がいいよ、それ」

「お前以外に言わないと思う」

「くっさ…臭いんだが」

「2度も言わんでいいわ」

「はいはい」


俺の話、聞いてんのか?こいつ?


「んで?話すの?話さないの?」

「いいぞ、昨日の詫びってことで」

「それは…昨日で清算できたから…あっ」


あっ、みたいな顔しているぞ!こいつ!


「俺には話せないことなのか?親友」

「調子いいなぁ…、俺だけならいいけど」

「相手がいるのか?」

「黙秘」


気になるー。


「今日、金髪さんとあったことを話せば?」

「んー難しいね」

「マジか」


じゃあ、無理だな…と思ったか!

勝手に話しておこう。


「今日の朝、金髪さんに——」

「だめです!」

「ったーッ、びっくりしたー」

「金髪ちゃん、おはよー」

「おはよー!」


金髪さんが、いつの間にか居た。

そして、人差し指を唇に当てて、


「私たちの秘密です、ね?」


コクコク頷いた。

それで、満足したのか、自分の席に帰っていった。

ダチは言う。


「俺、あの子のこと好きかもしれない」

「俺も~」


でも、私”たち”の秘密ってなんだ?


授業で毎回、先生たちが驚いていた。


————————————————


下校している。

春の風は心地よく暖かい。

地球が壊れてきたので、桜は早咲きし、早散りする。


今日は1人、川沿いの桜並木を歩いている。

もう、桜は緑を含んでいる。


彼女と最悪の出会い、そして決別。

最悪の再会。茶髪さんから元気をもらったな。

激突し、協力することになり。

ダチとラーメンを食い、彼女と推理したり、金髪さんを巻き込んで裁判をした。

金髪さんと親友にもなった。


「俺が変わっていってるのかもな…」


風が吹き、桜が揺れる。

今日は週末、センチメンタルな気分になりながら、感謝した。


————————————————————————————


午後10:00

電話が掛かってきた。

彼女からだな…

出るか。


「もしもし?」

「…もしもし、今時間いい—————」

「悪い、今ゴールド免許取得中なんだ。手が離せない」

「…ゲーム?」

「ああ、速度が出てるほどゴールド免許のポイントが付く。他車に当てると0だ」

「…面白いの?」

「面白いぞ、ハンドル、ギアチェンレバー、アクセル、ブレーキあればさおさらな」


携帯を耳に当てながら、車を操作する。

…やめるか。一旦。


「いいぞ、時間できた」

「取れた?」

「取れた」

「そう…」


…うそ。


「…」

「…」


黙って待つ。

何か大事なことのように感じたから。


「朝…」

「…」


あさ?登校のことか?

見てたってことか?

金髪さんとのやり取りを聞かれてたのか?


「……………………」

「…?」


ゴソゴソと聞こえる。

何してんだ?こいつ?


「何故、協力してくれるの?」

「お前が頭を下げたから、約束を守る限りだけどな」

「本当にそれだけ?」


もちろんそれだけじゃない。

協力関係になったので、ある程度、お互いのことが分かるだろう。

その情報を元手に、欲しい情報があったらダチと売り買いしようという計画だ。

ぐへへ。

こんなこと、言える訳がない。

ただ、大事な話っぽいので、嘘はやめるか…


「…言えない」

「…なんで…」

「言いたくないから」

「そこじゃない」


…どこ?


「なんでそこは嘘をつかないの?」

「どこも嘘なんてついてないぞ」

「…なんでそんなくだらないうそはつくの?」


彼女は続ける。


「ゴールド免許、取ってないでしょ」

「…」

「朝、協力関係を断てばよかったじゃない」


やっぱり聞いてたのか…


「私のこと、嫌いなんじゃないの?」

「…お前はバカだ」

「…」

「俺は確かにお前が嫌いだが、それだけだ。あの日、頭を下げたら協力すると言ったらお前は頭を下げた。お前はその価値をなんも分かっちゃいない。嫌いな相手に頭を下げるなんて普通はできない。お前はそれをやった。だから協力している。友達になる・ならない、で約束を反故にしない」

「…」

「このゲームはいつでもできる。うそをついたのはその方が円滑に進むと思ったからだ。分かったか?」

「…」


一息ついてから…恥ずかしくなったので、


「貸し1つだからな、ったく…」


と言って誤魔化した。


「…はい」


なんやねんその返事。


「話はそれだけか?」

「…これからも」

「ん?」

「嘘はつかない?」

「それは、協力するときに取り付けるべき条件だったな」

「…それもそうね、良かった」


彼女は続けて言う。


「私も嘘をついていくから…またね」


そして、電話を切られた。

…お前も嘘つかないんかい…


時計を見る。

長く感じられた時間は…たったの5分だけだった。



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