最悪の再会
教室戻るとダチがまだ弁当をつついていた。
「デートどうだった?」
「成果はあったな」
「詳しく」
かくかくしかじか。
「なるほど。彼女がB先生のこと好きなのは情報にあったけど、真実になったね。あとパンツは覗いといてよ。一番貴重な情報になるんだから。」
そこなの?食いつくとこ…まぁいいか。
「そんなに価値が?」
「彼女は人気なんだよ?人気な人気者ほどどんなに些細な情報でも価値が上がる。上がればその情報は貴重になる。プレミアがつく…とまぁ高いものが買えるようになるってわけ」
そうだよな、あの女のことが嫌いすぎてそんな当たり前のことにも気が付かなかった。俺ならばれずに見れたのに!けれど…弁当をつつきながら言う。
「パンドラの箱。あいつのパンツの色は〇〇です、って言っても信じてもらえないだろ」
「パンツにも嘘と真実を混ぜるべきだと思ってるから」
何言ってんだこいつ。…まぁ、言いたいことは分かるが。
「あと注意するけど、胡散臭いってだけでB先生のこと下げちゃだめだからな?」
「分かってる」
俺の教訓のひとつだ。「見た目だけで本質は見抜けない」
たとえ変態のような顔してる先生がいたとしても、心優しいなんてことがある。ジャ〇プで見た。
「まぁ、もう関わることもないだろうがな」
「まぁ、楽しみにしとくよ。」
しないでほしい。
「そんなに嫌いなの?俺は結構好きなほうだけどなぁ」
弁当を食べ終わったが、まだ時間が余っている。
「くっそ嫌い…それを念頭において話すが。プラスの部分もあると感じた。相手を陥れようとする性格のわりには努力しているところがある。顔が良いのもプラスだ。胸もある。なかなかいない」
「高評価じゃん」
「勘違いすんな。俺はな。プラスもマイナスも特徴になると思ってるだけだ。例えば、野球が上手い人間がいるとして、そいつを磨けば野球選手なる。そうすれば普通にスター、プラスの人間として扱われる。」
「それで?」
「次に、ものを盗ぬのが上手い人間がいるとする。そいつを磨けば物取りになるだろう。そうすれば普通に犯罪者、マイナスの人間として扱われる。」
「うん」
「でも、どちらも特技だけの部分だけで見れば、一級品の技術だ。ただ見られ方が違うだけでな。」
「どちらも凄いと?」
「凄いと思う。ただマイナスは、犯罪になってしまうだけなんだ。そして、それが致命傷なだけだと俺は思う。」
「…まぁ、いろいろ言いたいけど…今は社会という環境の中でマイナスという枠組みになっているだけで、これがファンタジーの世界になって、本物の悪が盗みを働いて、警察という機関がいない状態なら、同じ物取りに盗まれたものを盗んでくれって頼むしかないかもな。そうなると正義の物取りとして立ち回れるかもしれない世界ができるね。」
なるほど。環境でプラスとマイナスが変わる、しかも同じ特技でも使い方で、正義にも悪にもなるってことか、こいつの発想が面白い。
「ファンタジーの世界なら、悪いことしないで生計を立てるの難しそうだよな。だから魔法とかでそこを補おうとするのかもな」
「完全な偏見だな。」
「お前だってそれは偏見だろ。ファンタジーの世界生きてみないとわからないしな。」
「だな」
話が終わったところでちょうどチャイムが鳴る。
「結局、彼女の評価は?」
「でこぼこ」
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次の日。何ごともなく登校できた。やったー。…当たり前だけどな!
「規制が入りました」
A先生が言う。
「例の件で、学校側はある処置を行いました。———————つまり、いじめは許されない行為だと言うことです。」
本来なら校長が言うことだが、忙しいため、各クラスの担任が言うことになったこと。
ある特定の人間に異常に肩入れしないこと(先生も含める)。
今回の件、両成敗なので、穏便に済ましたこと。
とか言ってたな。いろいろ言ってたが、全生徒、全先生に伝わったことになった。
俺にヤジ飛ばそうとしたやつ全員、退学、クビでいいだろ…だがそこは百歩譲ろう。
だが…彼女、あいつはもう退学にしろよ!ふざけやがって…
A先生の優しさで生き残ってるだけだからな、あいつ。感謝しろよまじで…
「これからもより良い学校生活を送るために、様々な制限が設けられるでしょう。制限が今回、マイナスな方へと働いてしまいました。これからはプラスに働くように、お互い生活していきましょう。」
そう言って、ホームルームは終わった。
「なぁ!校長って何やってるか、情報持ってないか?」
「俺が知りたい」
「お前、著名したときちょっとでも会わなかったのか?」
「教室に直帰だ」
「…その紙、絶対校長に渡ってるから昨日はいたはずなんだよなあ」
「探してたのか?」
「そうだよ、お前が昼休みに生徒会室に行くって言うから…」
「連行な」
「任意同行だろ、警察官が美人なだけいいだろ」
よくねー、…だからこいつ昨日俺が帰って来ても弁当つついてたのか…
「あんなの連行、ですよ」
「茶髪さん、おはよう」
「茶髪ちゃん、おはよう」
「おはよう、ございます」
クラスメイトである。たまに混ざりに来る。かわいい。男2人の間に入ってくる度胸。勝手だが、俺はこの子を買っている。
「ズカッズカッって来て、いきなり『来て』、ですもん」
「似てるなぁ」
「ものまね、上手いねぇ」
手と足まで動かして、声も似せて真似をする。おもろいなーこの子。
「…イライラしてきたわー」
「耐性、つけときます?」
「もうつける必要ないからな」
「そう、なんですか?」
「そうなんだよ、茶髪ちゃん。こいつもう縁を切ったってさー」
「詳しく、お願い、します」
「いやー、それがねー」
ダチが話始める。
こいつは情報を集めるのが得意、なんだそうだ。
そして、その情報を武器として、いろんなことに使っている。
情報に価値をつけ、売ってるってことだな。
だが、茶髪さんにはペラペラ喋る。
そして最後に…
「これはみんなには内緒だよ?」
という。
「はい、わかり、ました」
こっちも同じだな。
「じゃあ、フリーって、ことですね。今」
「…狙われてる?俺、狙われちゃってるー?」
ダチが言う
「どうせなら俺を狙ってくれよー、すぐokするのになぁ」
「考えて、おきます」
…茶髪さん、ほんとに高校生か?…、俺らも相当か。
「茶髪さーん、聞きたいことあんだけどー、来てくれなーい」
彼女は友達が多い。女の友達が。
「じゃあ、また、よろしく、お願いします」
「またな」
「またね、茶髪さん」
茶髪さんが小走りで友達の元へと向かっていくのを、俺たちは見送った。
「彼女、頑張ってるよね」
「ああ」
「あれで、男嫌いなんて信じられないよねぇ」
茶髪さんは俺たちを使って男子を克服、俺たちはかわいい女の子と話す。
winwinな関係ということだ。
彼女の友達も知っているんだろうな。だから、嫌われない。
一限目のチャイムが鳴った。
今日は元気を貰ったので、頑張っていこう!
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「お前、茶髪さんのこと好きなの?」
「嫌いじゃないけどね」
弁当をつつきながら話す。
「お前、情報すぐ提供するじゃん」
「感謝代だよ」
「それだけか?」
「いや?カースト上位の女の子が話しかけに来てくれるってことは、俺らの地位が上がるじゃん?」
「それで?」
「そうすると、女子の警戒が周りの男子よりも下がるわけよ」
「あーなるほど。それで、女子からも情報を聞きやすくなってるってことか」
「そーゆーことー」
それ込みでの情報の提供か。
「しかも、茶髪さん、このことに気づいてやってんだよなぁ」
「がめつッ」
「そこが、良いんですよ」
分かるー。
「…まぁ、俺らだからやってんだよねぇ」
「まぁ、そうだろうな」
「俺ら、搾取されてね?」
「許せねー」
「でも、許しちゃうんですよね?」
「うん」
弁当を食い終わるまでの暇つぶしで彼女の良さを語っていた。
楽しかったと思う。
だが、そんなものは過去のものとなった。
ズカッ、ズカッ、ズカッ、ズカッ、ズカッ、ズカッ、
うるせえ足音だな。ソーセージを頬張る。旨いな。
「俺君、話があるの、来て」
…例の女が二度、現れた。