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3 初めての朝

『ママは仕事に行ってきます。お父さんとお兄ちゃんの朝ごはん、お願いね』

 

 春の日差しが差し込むリビングで、パジャマ姿の私が、呆然とママの書いたメモを見つめる。

「お願いねって……ひどいよ……ママ」

 私がつぶやいた時、リビングのドアが開き、眠そうな顔の心が入ってきた。

「おはよ、海ちゃん」

 私はあわててはだけたパジャマを直す。

「だいじょうぶだよ、あんた見て発情したりしないから」

 心はそう言って笑いながら、ソファーにどかっと腰掛けテレビのリモコンを押す。

「ねえ、海ちゃんち、ゲームないの?」

 何なのよ、その態度!あんた何様のつもりなの!?

 私は今にも叫びそうになる気持ちをぐっと抑え、何も言わずにキッチンに向かう。

「海ちゃーん、俺、朝はパンにしてねー」

 心がリモコンでチャンネルを変えながら言う。

 私はもう一度リビングに戻り、心の手からリモコンを奪うと、いつも見ているニュース番組に変えた。

「私のうちは、毎朝このチャンネルなの!」

 私が怒った顔で心を見る。心はそんな私を見ておかしそうに笑った。

 

 30分後、テーブルの上には炊きたてご飯と味噌汁が並ぶ。

「海……お前ってけっこう強情だね?」

 心がそう言って私を見ながら椅子に座る。私は何も言わずに自分のご飯をよそる。

 その時やっとお父さんの存在を思い出した。

「あ、そうだ、お父さん……」

 私の声に心が顔を上げる。

「お父さんも……呼んだほうがいいかな?」

 心は小さく笑うと、箸を持ってつぶやいた。

「呼ばないほうがいいよ。きっと昨日の夜から寝ないでマンガ描いてる」

「え、そうなの?」

「締め切り前だからな」

「でも少しは休んだほうが……」

「ほっとけよ。途中で中断させると機嫌悪いんだ、あの人」

 心はそう言うと私の作った味噌汁をすする。私の胸が少し高鳴る。

「ねえ」

「な、何!?」

 味噌汁の味……ちょっと濃すぎたかな!?

 心はそんな私を見てまた笑う。

「来週、俺の友達がここに来るから」

 私は呆然と心の顔を見つめる。

「昼飯、何か作って」

 心はそう言うと、味噌汁を一気に飲み干した。

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