1 新しいお父さんがやってきた
庭の桜が満開になった14歳の春休み、私の家に新しいお父さんがやってきた。
「いやー、すごくステキな庭だねぇ」
新しいお父さんは大きな荷物を玄関に置いて、私に向かって笑いかける。
ぼさぼさ頭に無精ひげをはやした、私の新しい『お父さん』……
「空センセー、センセーのお部屋はこっちですよー」
奥の部屋からエプロン姿の私のママが、満面の笑顔でお父さんを呼ぶ。
「おいおい、センセーって呼ぶのやめてくれよ」
「えー?でもセンセーはセンセーでしょ?」
ママはお父さんの腕を組み、奥の部屋へと消えていく。
「あれが私のお父さん?」
私はポツリとつぶやいた。
ママの再婚話が決まったのはつい2週間前のこと。
私が4歳の時にパパが死んでから10年、ママは何度もあった再婚話を断り続け、女手一つで私をここまで育ててくれた。
そんなママが突然、新しいお父さんの写真を持ってきて私に見せたんだ。
「この人と結婚したいんだけど」
私はじっとその写真を見た。
「ママがそうしたいなら……いいよ」
ずっと結婚しなかったママが、結婚したいって言うんだもん。きっとよっぽど考えぬいたことなんでしょ?
「ありがとう、海ちゃん!」
ママはそう言って私を思いきり抱きしめた。
でもあの写真のお父さんは、もっと若々しくて、こんなひげ面のぼさぼさ頭じゃなかったはず……
「ああ、センセーは漫画家だからね、締め切り前はひげを剃る暇もないのよ」
段ボール箱の荷物をほどきながら、ママがあっさりと言う。
そう、新しいお父さんは漫画家。ペンネームは『うわの空』。何ともふざけた名前だ。
保険外交員のママと漫画家の『空センセー』が、どうやって知り合ったのかは知らないけど、私の知らないうちに、二人はずいぶん長い間付き合っていたらしい……
「忙しいのはわかるけど……初めて娘に会うのに、あのカッコはないんじゃない?」
私が、さっそく仕事を始めた、お父さんの部屋のドアを見つめてつぶやくと、ママはおかしそうに笑った。
ジャンル「恋愛」なのかどうかわかりませんが…(ホームドラマかも?)
お付き合いいただけたら幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。