怠けん坊知事〔11〕
「西都原さん、真之介さんの覚醒と緑茶五右衛門がお父様に殴られた話を知っている範囲で結構です。詳しく話して頂けませんか。」
梯は和夫に頼み込んだ。和夫が笑い出したので皆驚いた。
「いつも通りの先生てすよ。沈着冷静に父親の行動を見ていましてたね。〈父が苛立ちを抑えているのはよく分かった。だけど俺だって悔しいんだよ。滑り止めに行くか浪人するか相談したかった。そこにまるで撃墜された飛行兵に追い打ちするような叱責だろ。言い返したら父は鬼になった。空戦モードだな。〉と淡々と語ってました。」
和夫の話を聞いた梯は何か閃いたのか、
「赤井田家の血筋は光の末裔かしら。真之介さんは孝さんと出会って覚醒が始まった。ハムカイザーもハムカウジーも先生の影を操れないどころか影化能力が強くなってる。影化じゃなくて黒化。」
と仮説を話した。和夫は気になっていた事を喋り終えると一息吐いて
「影の正体が朧げながら見えて来ましたね。ボクも客に戻ります。ついでに普通に喋る。」
と言い顔からは険しかった表情も消えた。和夫の隣で梯だけが気難しい表情をしたままでいる。
「光と影の接触で影化が始まるのなら森市〆の影化は先生の影響です。」
梯が喋ると、和夫は
「あの事件からだな。小説の著作権。」
とサラリと言う。梯は咄嗟に喰い付いた。
「聞かせてください。」
と和夫に頼み込み、和夫は話し始めた。
「簡単な話さ。先生の小説を森市が漫画にする予定だった。森市は小説の著作権を〈丸ごと寄こせ。ボランティアだ。〉と言ってその話は没。」
空かさずに栞が
「いつから〔ボランティア〕って宮崎弁は〔ただで寄こせ〕になったのかしらね。あれから先生は〔ボランティア〕って聞くと〈日本に訳したら〔喝上げ〕な。〉って皮肉ばかり。」
栞は和夫を見て笑った。




