執筆と校閲
緑茶と矢部は田網と梯に向かって歩いた。田網と梯も気付いて緑茶と矢部を見る。
「初めまして、緑茶五右衛門と申します。」
「私は矢部栄治といいます。」
緑茶と矢部は挨拶をしたが田網と梯は練れ合いを避けるためなのか二人の顔見ても無言だ。少し間を置き、
「何の用だ。」
と田網がぶっきらぼうに言う。
「警察のような優秀なクリエイター集団とゆっくり話をしたくて来ましたよ。」
緑茶は皮肉たっぷりに口を開く。
「どういう意味だ。」
田網は不快感を露わにした。
「証拠と言うネタを使ってストーリーを作り、犯罪なる作品を創造する優秀なクリエイター集団だからだ。」
「ふざけた言い方をするな。入念に証拠集めをして犯罪を立証するのは当然だ。」
緑茶の言葉に対して田網は言い返した。
「流石小説家ですね。先生らしい比喩です。」
梯は技ありを取られたかなと興味ありありの表情をしている。
「犯罪なら有罪で当然だが冤罪は困る。証拠が教唆と捏造による場合があるだろう。ネタが違えば出来上がる作品も違う。ジジイの言葉は嘘、若い女の子のお喋りは事実だと断定しての作品ならそれは真実ではない。ロボットと可愛い女の子が登場するだけで男の子向けの作品と決めつけたアニメ程度だ。」
緑茶は楽しそうに辛辣な比喩を並べた。田網は苛立っているが梯は笑みを浮かべている。
「ですから先生、設定に誤りが無いように良い作品になるように私達の執筆作品を校正校閲して頂けませんか。」
梯も緑茶に倣って捜査を執筆と置き換えて暗喩で表現する。田網は無言だ。
「古、光と影は和を為すための公務員みたいな存在だったはず。君達みたいにね。寺院を警察、神社を裏の仕切屋と言う口の悪い住職もいるよ。神道の普及が仏教より先だったからかな。〔最後に正義は勝つ〕も〔乱れた秩序を正す、乱世から平世〕の比喩だろう。日本人の多くは生前ならば年始祈願と願掛けを神社で行い、死後の葬儀以降がお寺だから面白い。まさに調和ではなく和の共存だな。」
「解るように言え。」
緑茶の比喩に田網は苛立ちながら言った。
「光と影以外の第三勢力が多数登場して〈我々こそが真実だ、正義だ〉と少数意見を語り始めるからややこしくなった。それだけだよ。警察は〈光が正義、影が悪〉と決めつけグレーな部分は光ではないから影に含める。〈黒だけが悪じゃない。グレーも悪なんだ。〉で結果、作品は『滑る大捜査線』だ。〈一ツ葉大橋、封鎖できません。〉かな。」
緑茶は笑いながらも言い切った。
「我々は法の下でしか動けない。」
田網は悔しそうに言った。
「仰怪人は影が直接接触して話し掛ける。こちらがアナログだとすれば日向異人はネット感染だからデジタルでグレーの拡散は桁違いだ。日向異人は光と影の均衡などお構い無し。暴走した個人の集団、〔犯グレー〕だ。止められないよ。」
緑茶が仰怪人と日向異人の違いを話すと梯が付け足す。
「現時点では日向異人の森市〆が最重要人物です。感染者の頂戴女子フーちゃんと宮祭香も危険人物かと。短袴亜莉須巡査は恐らく大丈夫でしょう。」
「警察庁長官と警視総監に真之助の仏前で謝罪させるのはもう少し後になりそうだな。」
緑茶の影の中から真の声がした。




