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どうする森市

 宮崎県警中央署魑魅魍魎対策室は緑茶の携帯だけではなく森市〆の携帯も監視していた。その表示が突然画面から消えた。通常ならば故障や紛失を考えるのだが、森市は操影術を身に付け先程までニシタチにいた。事件の可能性もあり西郷は岩塚と岸を森市のマンションに向かわせた。


 緑茶五右衛門と矢部栄治はニシタチで立ち話を続けていた。矢部の影の中から日之影実が喋り始めた。

「森市は携帯を床に数回投げつけたよ。携帯は壊れて位置情報が消えたから魑魅魍魎対策室(ちみたい)の岩塚と岸が向かっている。」

「困ったもんだ。警察と言い業界と言い他人の携帯を覗いて〈こいつは悪いやつだ。〉と腹を立てるとはね。ITの発達で井戸端会議を部屋で寝っ転がってできるようになっただけのことじゃないか。それ以前の問題として、他人の携帯を覗く私生活の窃盗には何の咎めもない。警察の非常識と業界の厚顔無恥は仕方ないな。」

 緑茶は矢部を見て話した。

「先生、そのさりげない態度いいですね。僕たちが会話してるみたいです。自分の影に向かって話しかけたらパッと見で危ない人に思われますもんね。」

 矢部が緑茶の言葉に反応すると緑茶は

「光と影の感染症が起きているのは多分宮崎だけではないだろう。宮崎でこれだけ顕著になるなら全国レベルではかなり昔からあったんじゃないだろうか。」

「昔とはどのくらいの昔なんですか。確かに遡れば天孫降臨の時代になります。」

 緑茶の影の中から真が問いかける。

「神話以降で再燃し始めたのは日本では太平洋戦争の終わりぐらいから、ヨーロッパでは第一次大戦の終了からじゃないか。勝者は表に出て来る。影が大きく動くのは敗者側だ。」

 緑茶が答えると真は言った。

「小学校の学級会みたいだな。多数決の前に必ず少数意見も大切にと言う。今回の影の暴走は少数派ではなく不満の爆発だがな。」

「森市の不満ってなんてすか。」

 矢部は緑茶の顔を見て尋ねた後に足元の影を見た。

「僕に答えろと言うことかな。それは緑茶先生の小説を盗み損ねたことだろう。先生の小説を盗んで全国デビューするつもりだったからな。」

 真が答えると矢部は緑茶の顔と影に交互に視線を移しながら、

「森市は次にどうやって全国進出するつもりでしょう。」

と尋ねた。

「国会議員にでもなるんだろう。与党でも野党でも構わない。影を操り投票させる。そして当選したら巨大派閥に近づく。」

 緑茶が答えると矢部は

「そうですね。帝国放送協会(THK)の国会中継は光と影の集約ですよね。だから西都原和夫(ししょう)は県知事を一期務めて中央と国政を目指したのかな。」

と言う。

「今度尋ねたらどうだい。宮崎の影ではなく日本の影を目指していたはずだよ。」

 実が影の中から矢部に言った。

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