盗聴対策
緑茶と矢部は自販機で缶飲料を買って飲みながら喋っている。真は緑茶の影の中だ。
「さっきから接続を切ったはずの携帯が繋がっている。多い日は一日に十回以上ある。切っても繋がるの繰り返しだ。」
「ビッグデータの収集ってやつですか。」
緑茶が喋った後に矢部が念を押すように言う。
「盗聴しているかもな。警察か森市か。」
緑茶は笑いながら言う。
「真さんが警察と森市の影に入れば、犯人はすぐわかりますよね。」
矢部が言うと真は影の中から
「確かにそうなんだが先生はそれを好まないんだよ。〈なるようになれ。〉と笑っている。そして〈好き勝手なことをやって人類よ滅びてしまえ。〉ってね。緑茶さん、そうですよね。」
と言ったきた。
矢部が空かさず、
「先生、そうなんですか。」
と尋ねると、緑茶は
「おっさん、ひどい言い方をするな。僕は人間の数を、つまり地球の人口を適切な数に戻せばいいと思っている。二十二世紀までにね。」
と答える。
「壮大な計画ですね。そこまで僕は生きてないや。」
矢部が言うと、
「放っておいても人類が勝手に自滅するかな。戦争や紛争を起こしてね。」
と緑茶が毒舌をふるう。
「先生、それ怖いですよ。」
「僕に言わないでくれないか。僕がやっているんじゃない。僕は宮崎の糞田舎で静かに小説を書いているだけだ。」
そう言って右斜めを見た。視線の方向には田網と梯がいる。
「盗聴しているのは魑魅魍魎対策室。部屋には西郷さんと山村さんがいた。そこに居る田網君と梯君にも当然転送されているだろうな。」
真の声に矢部は
「しっかりスパイしてるじゃないですか。」
と笑うと、真が
「SNSで脳内が暴露される時代だからな。少し行動も変えなくてはならない。」
と行動を正当化した。
田網と梯は会話を聞いているのだろうが警察官らしく平静を保っていた。
「それにしてもさっきから気になっていたんですが、朱美さんはずっと梯さんを睨んでいますよ。」
矢部は緑茶にそう言うと緑茶の影から真が話し始めた。
「実はしょっちゅう梯君の影に入っているからな。朱美さんが短袴亜莉須巡査を見た時はもっと凄かったぞ。影の中の実に〈初動ミスでしょ。何で助けようとするのよ。放っておけば。〉って言った。」
「正義のヒロインもそんなこと言うんですね。」
緑茶は
「ヒロインである以前に人間の女なんだよ。」
と矢部に説明する。
「これじゃあヒーローものじゃなくて恋愛もののネタになりますね。先生。」
三人は盗聴されているのかされていないのか判らなかったが他愛もない世間話をした。




