四天王と飛車角
森市〆は野次馬の〈ハムカイザー、ハムカウジー〉の大合唱に不快感を覚えていた。
〈影が注目されているのに俺は注目されていない。どう見ても俺の方が王者の風格だろう。頭には角を、背中から大きな翼を生やしている。ゲームなら魔王級だ。〉
森市は影の使い方が少しずつ解ってきていた。影に相手を動き操作する事はできるが、影のまま相手に攻撃を加えても効果がない。特に打撃系はそうだ。
森市は一案を練った。
〈集まっている警官の影を操り同士打ちをさせてやろう。宙に浮いたまま全く手を下さなければ、暴行や傷害の罪に問われることはない。〉
そんな森市の耳に野次馬の会話が入ってきた。
「蝙蝠雄はラスボスかな。」
「確かに三人の中央だぜ。」
「右にハムカイザー、左にハムカウジーを従えている。」
「だったらラスボスじゃなくてサブボスか。」
「サブボスってなんだ。」
「天下の副将軍じゃなくて影の副将軍だよ。」
「将軍様がラスボスかい。」
「将軍様はラスボスじゃなくてヒーロー・ゴールディーンな。こっちは四天王がいるだろ。」
「四天王って誰だよ。」
「シルバーン、ブロンザー、パープル、オレンジ。」
「なるほど、おまえ詳しいな。でも時代劇まんま。天下の副将軍も飛車角持ちだぜ。」
その会話を聞いた森市はまんざらてもない。気分が良くなった。
〈俺様が副将軍でザーとジーは飛車と角か。〉
森市は調子に乗って言った。
「ザーさん、ジーさん、懲らしめてあげてください。」
さすがに〈懲らしめてあげなさい。〉と命令調で言うには抵抗があった。
ハムカイザーは
〈乗りやすい奴だ。つまり操りやすいってことか。〉
と、
ハムカウジーは
〈上からかよ。それにザーとジーは先生だけにしてくれよな。〉
と心の中で笑いながら互いに目で合図をする。
真は
「右は行くぞ。」
実は
「左は任せろ。」
と言い、宙に浮いたまま二人揃って両腕を上げ真は右上から左下、実は左上から右下へと振り降ろした。真と実の両手の軌跡は綺麗な線対称だ。この一連の動作で真と実は集まっていた警官を全員地面に転がした。警官は為すすべもなく訳も解らず仕舞いだ。森市のように後頭部から地面に叩きつけないだけに余裕があるようにも見える。
田網嶺太と梯絵楠もニシタチに到着して経過を見ていた。
「あいつら仲間か。」
梯は
「相手の出方が判らない。動かない方がいいわ。要人警護じゃないのよ。」
と宙に浮いている三人の下に行こうとした田網を制止して言う。
「多分、仲間じゃない。ザーとジーは警官をかばったのよ。バットガイは警官を頭から地面に叩きつけてたでしょ。二人は足払いみたいに転がしただけ。影本来の行動に見える。」
怒りを露わにしている田網をなだめるように梯は言う。
「これでよろしいかな。」
真は森市を見て言った。森市は腕を組んだ格好のまま真に視線を向け
「ご苦労。」
と頷き、次に実を向いて
「ご苦労。」
と再度頷いた。
すると真と実は顔を見合わせ、瞬時に姿を消した。それを見て野次馬はどよめいている。
「では失敬するよ。」
田網の影の中から真の声が聞こえた。
「それじゃ、またね。」
実は梯の影の中から言い、それぞれ緑茶と朱美の影に戻った。
緑茶は自分の影の中の真に
「流石だね。」
と言い、矢部は
「余裕かましてたじゃないですか。」
と感激している。
朱美は戻ってきた実に
「森市って本当にお調子者ね。おだてたらどこまでもつけ上がりそう。」
と呆れ顔で言った。
西都原と栞も一部始終を見ていた。
「また俺の出番はなかったな。」
そう言った西都原に
「最初っから行く気ないくせに。」
肘で脇腹を突ついた。




