蝙蝠雄よりもP-38
矢部栄治が緑茶の影の中にいる真に質問した。
「ザーさん、影になれば空を飛べるんですか。森市〆は蝙蝠雄になって空に浮いてました。」
「空を飛ぶのとは全然違うな。むしろ煙が漂っていると言う表現が適切かな。」
真が答えると矢部は次なる質問をした。
「それでは猛禽類のようには獲物を攫えないのですか。」
「勿論できない。戦う時には影から実体化する必要がある。」
真は再度矢部の質問に答える。
「ではもう一つ質問します。影となって相手を締め上げる時は影ですか実体ですか。」
「実体だ。但しその状態で宙には浮けない。そもそも私は影化して宙になど浮かない。自分の能力だからどの程度まで可能か有効かは把握しているよ。」
「それじゃ影化とは何ですか。」
「影になり影に入り、操るところまでだろう。」
「実さんが岩宿さんを締め上げて蹴りを見舞ったのは影化ではないのですか」
「ヒーローの変身と同じだ。実態だよ。」
矢部の質問に真は丁寧に答えていく。それを見ている緑茶は〈俺は知ってるよ。〉という顔でニヤニヤしている。
「つまり森市はかなり強くなっている訳だな。ヒーローズや影ほどではないが、世界トップクラスの格闘家でも勝てない。」
緑茶が喋ると矢部は今度は緑茶に質問した。
「森市が凄く強くなったとは思いましたが、まさかそこまでとは。」
「簡単なことだよ。影を操っているんだ。相手の動きを操れるんだよ。つまり自分が技を仕掛け易い位置に相手の手足を持ってきている。それだけなんだ。」
緑茶が答えると矢部は
「納得です。だから、森市の捌きは絵に描いたみたいに見事なサブミッションになっているのか。」
と感心している。
「おいおい、奥義をバラさないでくれよ」
真が言うと、緑茶は笑いながら
「構わんだろう。どうせ一般人は影なんて操れない。」
真は納得しない表情で、
「先生、奥義をバラした罪滅ぼしだ。『怪盗と学者』を朗読してくれ。大泥棒の孫と天才物理学者とワルサーP-38の話な。一度、通して聞きたいもんだ。」
と言う。矢部も便乗して、
「僕も蝙蝠雄よりそっちの方がいいです。」
と森市そっち除けで緑茶に言う。




