怠けん坊知事(かみさま)〔2〕
ニシタチのスナック〔さざん〕に元宮崎県知事の西都原和夫と小説家の緑茶五右衛門が一緒にやって来た。
「あら、いらっしゃい。最近二人は仲良しよね。」
ママの栞が言う。
「宮崎が仰怪人に占領されようとしている。そんな話ができるのはここしかないんだよ。」
「あら、そんな重要なことをここで喋って大丈夫なの。本当に元知事は口が軽いんだから。」
「そこが味噌だ。僕が喋ったところで、〈またか。〉と誰も本気にしない。目立ちたがり屋の自己PRぐらいにしか思われないだろう。それと元知事はやめてくれ。」
「そうね。元知事」
西都原と栞が喋っているところに緑茶が口を挟んできた。
「それより西田新之介さん、そろそろ自分の正体をはっきりさせといた方がいいんじゃないか、ここだけの話で。ママは信用できるってハムカウジーが言ってたぞ。」
「あら、嫌だ。ハムカウジー私を覗いてたのね。もしかしてお風呂とかに入ってる時じゃないわよね。」
「それは今度聞いておく。でも大丈夫だろう。安川朱美にバレたら大変だ。」
「安川朱美ってあのヒーローズ忠孝さんのお姉さん。」
「そうだよ。」
栞が尋ねると、緑茶はいとも簡単にもに答える。
「何、その言い方。まるで二人が付き合ってるみたいじゃない。」
今度は西都原が
「そのまんま。」
と言った。栞からは
「ちょっとビックリだわ。」
と営業スマイルが消え驚いた顔をしている。
「じゃあ、西田さんから神武男の真実を証したらどうだい。今ので話しやすくなったろ。」
緑茶が栞を見てニヤリとすると、西都原は話し始めた。
「ママ、実は僕の父親は影者だったんだ。そして母が光だった。」
「まるでシェイクスピアの戯曲ね、あの二人の。今日は驚くことが多すぎて、少し頭の中を整理しないと。」
「それじゃあもっと驚かせようか。今度の宮崎県知事選挙に僕はもう一度立候補する。」
西都原の言葉を聞いた栞は口をポカンと開けたままだ。




