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『魔法で調理してみよう』

「今、開けるね。」

 晴香はそう言って玄関のドアを開けた。

「お邪魔します。」

 最初に朱美が入って来て、次に忠孝が入って来た。

朱美(あー)さん、忠孝(ちゅう)さん、いらっしゃい。」

と晴香は軽い感じで声を掛け、

岩宿(がん)さん来るまで、ゆっくりしよう。」

と言う。

 忠孝は正義の横の一人掛けのソファーに腰を下ろし、朱美は四人がけのソファーの中央に座った。すると晴香が朱美の膝に頭を乗せゴロリと横になる。

「こらぁ、晴香。」

 朱美はそう言うと携帯をいじり始めた。

「緑茶先生が『魔法で調理してみよう』っていう小説を書き始めたの。」

「もう公開してるのかな。でもなんか展開が解る気がする。食べた人が作った人を好きになるとかその逆とか。」

「それもあるけど、料理以外もなんでも作れちゃうのよ。小説の中だから。」

「わぁ、適当(てきとー)。私も読んでみようかな。」

 そう言うと春香は携帯をいじり始めた。

 朱美は笑いながら喋っていたが少し真顔になると正義(まさよし)に言った。

「先生はハムカウジー(みのる)に朗読して聞かせているみたい。(みのる)が言うんだから間違いないわ。実は〈守秘義務がある。〉って内容を教えてくれない。」

「時代も変わったもんだ。光と影が付き合っているんだからな。」

 正義が言うと

「バカなこと言わないで。中世じゃないのよ。『ロミオとジュリエット』じゃあるまいし恋愛は自由。」

と朱美は言い返す。

「でもムカつくなぁ。私が知らない設定の部分や続きの展開まで実が知っているから。実の野郎、おまけに〈男同士の付き合いだ。〉って言いやがる。」

 朱美の話を聞いている晴香はケラケラ笑いながら、

朱美(あー)さん、なかよし状態の時に聞けばいいのに。」

とソファーの上で膝を抱え丸めた背中で転がりながら喋る。

「あんまりしつこく聞くと〈うるさい。〉って影で縛られちゃうのよ。あれ、ほどけないの。妖力って言うか、正しくは影力なんだろうけど私じゃ解除できない。」

「あーさん、そんなやばい仲良ししてるんだ。」

 晴香は朱美に〈えぇっ。〉と言った表情で尋ねた。

 正義は

「朱美さん、今度影のほどき方を尋ねてガンちゃんに教えてやれよ。」

と軽く笑みをうかべて言う。

 晴香は朱美に尋ねた。

「ついでに(じー)君が緑茶先生の『変身ヒーロー』のストーリーを知ってるか聞いてみて。」

 朱美は晴香に

「だったら直接緑茶先生(せんせい)に聞いたら。」

と言う。

「主役以外の登場人物は公開してるのに主役はまだ伏せてるの。」

と晴香は答える。

「私、何も知らないから脇役だけでも教えて。」

と朱美は晴香に言った。

「舞台は本郷武術道場で師範が本郷(つよし)。師範代が野上(たける)。指導員は羽川怜(はねかわれい)官田将暉(かんだまさき)なの。」

「なんだ、私より詳しいじゃない。」

と朱美は晴香に言う。

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