苦悩
「天野、どうする。行くのか。」
安川が問いかけると天野は考え込んだ。
「太陽が出ていないと我々の力は存分に発揮できない。それでも昼間ならまだなんとかなるがさすがに夜だと変身が解けて正体もばれてしまう。」
天野が迷っていると岩宿が急かす。
「確かにそうだが魑魅魍魎対策室だけで大丈夫なのか。」
「少し様子を見よう。どうしてもという時は正体がバレても構わん。」
天野は応援に行きたい気持ちを懸命に押さえている。
「その時は仕方がないさ。全能のヒーローなんてそういるもんじゃないしな。まして俺達はご当地ヒーローだ。だけど、もしもの際は俺が行く。天野に行かせる訳には行かない。」
仰怪人と腕試しをしたくて拗ねた態度の岩宿を安川が眺める。
「落ち着けよ。耐えるだけ耐えてここぞという時にこそ戦うんだ。」
「君、落ち着いて話そう。言いたいことがあれば我々が聞く。」
対策員の一人が仰怪人に話しかける。
「やかましいぃぃ、権力の犬のてめえらなんかぁぁ仕事しなくても給料もらえるじゃないかぁぁ。」
仰怪人は呻くように喋った。
別の対策員は県警本部に連絡を入れている。〈現在のところ一般人に大きな被害は出ていないようですが、若干の怪我人は出ています。最悪の場合、自衛隊に要請をお願いすることになるかと。そして今は夜ですからヒーローは現れないかもしれません。〉
対策員の説得が続いていたが仰怪人は周りのものを蹴り壊しながら抵抗を続けている。
すると仰怪人に淡い影が近づき実体化した。
「またあいつだぞ。」
対策員が叫ぶ。