蝙蝠雄
早朝、日之影実は 岩宿の影の中から本人に声を掛けた。
「場所は決めたのか。」
「俺はどこでも構わん。そっちの好きな場所でいいぞ。」
岩宿はニヤリと笑って言う。
「それでは宮崎神宮と県立博物館の中間の杜の中だ。」
実は場所を指定した。
「随分と街中だな。秘術奥義を使うと爆発音や破裂音、爆炎で通報必至だ。ヒーローが怪人を倒したことが公になってしまう。俺は構わんが天野と安川は嫌がるだろうな。」
岩宿は好戦的だ。
「もう勝ったつもりか。だったら、天野君が警察に隠蔽か事実の捏造を頼むのも手じゃないのか。隠蔽と捏造は警察の秘術奥義だ。」
実は皮肉たっぷりに言い、岩宿の影から去った。
森市〆は朝から日之影実を待っていた。何としてもヒーローと影の決闘が見たい。その優劣で森市はどちら側に着くかを考えていた。以前、緑茶五右衛門からは根暗の蝙蝠と言われたがそんな事はもうどうでもよい。宮祭香を操り緑茶をストーカーに仕立て上げた優越感に浸っていた。
森市の影に実がやって来た。
「待たせたな。場所は神宮と県博の中間の杜だ。人数は判らんがキャバクラ殿の十三人も来る。」
「サーティーンズと言うからにはヒーローや対策室の面々もですか。」
「だから俺は即座に岩宿と決着をつける。天野と安川はこちらが手を出さない限り自分たちから仕掛けないだろう。対策室も何もできない。君は兄と私の前に立ちはだかるんだ。戦いではなく影の組手だと思ってくれ。影と一緒に鍛練を行えば君は間違いなく強くなる。強くなったと感じたらと蝙蝠雄と名乗れ。蝙蝠男ではなく蝙蝠雄だ。」
実は森市に決闘の場所だけではなく何をするかまで説明すると影から去った。
〈影は俺の実力を認めている。俺は宮崎のような糞々田舎で終わる男ではない。世界を征服する。〉
森市は心の中で呟いた。




