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ソクラテスは語る「悪法も法」

「先生、先生はそれでも香さんをクリーン・ヒロインで描くのか。どう考えたって仕組まれてると考える方が妥当だよ。事実、森市〆が仕組んでるんだ。兄さんのパワーが凄くて森市は私利私欲で暴走を始めた。」

「本当に凄いな。[なぁなぁ][てげてげ]の範疇を超えている。遠い昔からこういうことは頻繁にあったんだったんだろう。和解できずに暴走した力を倒すためのヒーローが必要になる。こうなると最初に仲介に入った者までが悪者にされてしまいヒーローの独断場だよ。でも真君が森市の心の闇に光を当てた結果がこうなんだ。〈和〉を維持するために森市の本音を引きずり出した結果がこれだ。森市は宮崎より自分だった。」

 落ち着き払って喋る緑茶に(みのる)は言った。

「先生は自分が犯罪者にされたことに腹を立てないんですか。ストーカーにされたんですよ。」

 緑茶は(みのる)に理路整然と答えていく。

「僕は無能警察と言っているが警察がそのようにしか行動できないのも事実なんだ。僕は〈事を荒立てない〉ように、香さんが〈傷つかない〉ように何度も口に出している。まず最初に香さんに〈からかってるの。〉と尋ねたら、涙を浮かべ僕の顔を見つめながら〈違います。〉と首を横に振った。その後だ、ラジオ・パーソナリティーの仙道深雪が〈私の友達は和食党で緑茶が大好きなんです。〉って言ったんだな。そんな女性をダーク・ヒロインやアンチ・ヒロインにできるかい。」

「先生は優しいね。その優しさが命取りにならないか僕は心配している。」

「ありがとう。でも僕はおとなしくしていればつけあがる連中が大嫌いなんだ。例えば森市〆、テロワーズの五味田総務部長、そして警察だ。」

「そうですね。森市〆は人間性からして論外としてもテロワーズの五味田総務部長は先生が事を荒立てないように荒立てないようにとしているのにストーカー事件にしたし、警察はその時に作成した書類を盾に威張り腐っている。それでも先生は香さんを憎んでいない。」

「香さんの言葉に矛盾があるからだ。香さんに対して恋愛感情は無いが僕が知りたいのは香さんが僕を好きか嫌いかではなく、何故僕を標的にしてハニー・トラップを仕掛けたかだ。森市が言葉に巧みに騙したのか自分の意志か。〈愛情なんてひとかけられもありません。〉と言ったのが本音か嘘かは本人しか分からない。只、そう言いながらも僕の手を握りしめてたり体を擦り寄せながら耳元で囁いたのは事実だ。そして時折、彼女の最大の武器とも言える涙目で僕をじっと見つめていた。〈顔も見たくない。〉と言う女性がそうしたんだ。できることならその時の心理状態が知りたい。香さんは人前では大仰な動作で僕から顔を背けるが、誰も見ていないと僕の顔を一旦凝視してから顔を背ける。それを知ってるのは僕だけだ。」

「先生は事実を確認するためや人の心理状態を知るためには自分がストーカーにされてされることすら怖くないんですか。」

「ストーカーにされたのは結果論だ。ソクラテスではないけど〈悪法も法〉だよ。ついでに言わせてもらうなら僕は無能警察と言っているが優秀な警察官はたくさんいる。残念ながら有能だった知人は警察を退職してから僕のパソコンが森市〆に覗かれていると教えてくれた。」

「香さんの影に侵入すればある程度は彼女の心が解るんですが、それをやったら先生に嫌われそうなんで。」

「実君も真面目だね。僕に言わなければいいだけだろ。」

「いやそんなことはやりません。ダーク・ヒーローもヒーローなんです。名を汚したくない。過去にそう言うことをした影の者がいたからヒーローと影の者は敵対するようになり、本来〈光と影〉で世の中を是正するはずなのに格差は縮まらない。」

「それは君の判断に任せるよ。影に侵入するダーク・ヒーローの宿命だ。確かに真之介氏がフランクリン・ルーズベルトの影に侵入できれば太平洋戦争は変わったかもしれないな。ルーズベルトはミッドウェー海戦で敗れても日本の和平交渉に応じなかっただろう。あのリンドバーグさえ許さなかったからな。でも世論には逆らえない。」

「先生は曾祖父(おおじい)を認めてくださるんですね。」

「当然だよ。」

「でも僕たちの能力は宮崎でしか使えない。」

「世界中で使われたら大変だろう。あっちの国の大統領、こっちの国の主席の影にまで侵入しそうだ。」


 二人の会話は緑茶の身の回りの事から世界情勢へと飛躍した。緑茶の影にはいつの間にか真も入って来た。

「先生、突然で申し訳ないがさっき森市〆がパソコンを覗いてた話をしていたろ。森市を影ってパソコンを見ても『大泥棒の孫と天才物理学者』は全編入ってないんだ。」

「そうだよ。あれは途中から手書きで海老田に渡した。森市に覗かれたからな。」

 緑茶がそう言うと真は

「あの小説に出てくる黄金のワルサーP-38について知りたいんだ。さすがにドイツ人の影には侵入できない。」

「分かった。君たちは親友を超えた腐れ縁だ。その大泥棒の孫の代表作は〈光と影〉が主旨だったな。」

 緑茶の言葉を聞いた真と実は笑った。

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