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緑の羊は沈黙しない

「少し休憩するか。」

 多網が梯に言う。二人は鵜戸神宮から日南本署に行く前に休憩することにして、最初に目に入ったコンビニに寄った。多網は上級のアイスコーヒーを、梯はアイスのカフェオレを買い覆面パトカーに戻った。

「梯、お前を見ていたら昔観た映画を思い出したよ。FBI捜査官が囚人の精神科医に色々と相談するやつだ。」

「あぁ、あの映画ね。私は原作の小説も読んだわよ。仰怪人の事件に関してはこれから精神科医のアドバイスを受ける機会も増えそうね。でも緑茶先生の腸と脳の話も面白いわよ。緑の羊は沈黙しないから。」

「羊か。映画のタイトル思い出したよ。」

 多網が言うと梯は

「その小説と映画の題名からファンの一人が 緑茶先生の話を『緑の羊は沈黙しない』ってブログに纏めてるの。ブログには人体臓器の話も出てくる。最近の医学では腸が脳に指令を出してるみたいな研究もあるけど、緑茶先生がそれに関連付けた〈頭のいい奴ほど脳で物事を考えて脳内も整理されているから犯罪の動機を探す。そう言う奴等は腸が脳に指令を出した行動を動機とは認めないだろう。そして僕に『あいつは訳の分からないことを言っている。』って言うんだろうな。〉って文章を載せてるわ。」

「俺にはよく分からんよ。」

と多網が言うと梯は

「生物の進化の話ね。環状生物が進化して餌をより多く摂取するために次第に骨格を発達させ筋肉が増えていき、更に効率化を追求して筋肉に指令を出す脳が誕生って訳。人間は脳の発達が特化した生物だから腸が脳に指令を出したりすると論理的な動機ではなく衝動になってしまう。緑茶先生は説明に〈子作りか、快楽追求かの違い〉って簡単に置き換えてる。若干語弊があるけどこの方が解りやすいかもしれない。」

「なるほど。日之影兄弟は腸ではなく影から脳に指令を出しているのか。」

 多網が言うと梯は

「意外と近いかも。人間の三大欲と言われる食欲・性欲・集団欲、その集団欲を新しい形で操作する。それが〈影る〉かな。」

と言った。

「梯、お前本当に凄いな。」

 多網は感心しながら話を聞いた。

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