三つ子の魂
戦前戦中の警察業務は戦後の警察とは異なっていた。安全に生活できるように犯罪者から国民を守るのではなく特高警察として思想・行動・言論を取り締まる組織だった。
そして戦後の警察にはまだ特高警察の考え方で行動する者も多数存在した。
日之影真之助は元上官と共にミッドウェー海戦における真之介の判断を検証してみた。戦死者には気の毒だが結果は戦争を一年程早期終結させたと判断した。
おそらくミッドウェー海戦で日本軍が快勝してしまえば南雲機動部隊は暴れ回り戦争はもう一年長引いたかもしれない。そうなるとドイツの敗戦後はソ連が戦力を東部に集結させ日本を北側から攻略した可能性もあった。
敗戦後、日本統治四分割計画が現実に実行され、日本はアメリカ・ソ連・イギリス・中国の統治下に置かれただろう。
いつしか真之助と元上官の検証作業は特高警察気分の抜けない警察官に漏れてしまった。
真之助はミッドウェー海戦を敗北に導いた日本敗戦の元凶とされた。更に日之影家の先祖は熊襲征伐の際に熊襲を裏切り日本武尊に熊襲健を売り渡したのだと根も葉もない噂を流した。
真之助は子や孫に〈この世の善悪は単純に裏と表ではない〉と伝えながら育てた。
幼少期の真と実はおぼろげながらも真之助の言葉を聞いて育った。
「無能警察め。」