焦燥
入口のドアが開いて西郷が入ってきた。
「いらっしゃいませ。」
スタッフの元気な声が響く。
「お客さんで天野さんって方が来られているはずだが、案内してもらえますか。」
西郷は警察手帳を見せて荒立たしげに言う。
「承知しました。ご案内致します。 こちらへどうぞ。」
スタッフは奥の座敷へと歩いて行き、西郷がその後をついていく。
案内するとスタッフは
「失礼します。」
と戻っていった。
険しい顔の西郷に安川は
「勤務中だとは思いますけどお茶でも飲みますか。」
と尋ねる。
「いや結構。」
と西郷は定番の返事をして話しを続ける。
「とうとう影が実体化してハムカイザーとはっきり名乗った。いよいよ本格的に行動を起こすのかもしれない。巷で仰怪人と呼ばれている連中も含めハムカイザーについて近々会見を行う。」
「そうだな。そろそろはっきりさせないと噂だけが先行して関係ない人間までが疑われて誹謗中傷の対象になる。」
天野が答えた。
「ハムカイザーはヒーローより有名になったな。仰怪人の親玉と言われるだけの事はある。」
「ただの目立ちたがりだよ。」
安川が言った後、岩宿が吐き捨てるように言った。