リスと流れ星
「助けて……、だれか、助けて……」
大好きなどんぐりをカリカリとかじっていると、木の上のほうから声が聞こえてきました。リスのプクリは、急いでほっぺにどんぐりをつめこんで、上を見あげました。
「モグモグ、モグ……。だあれ?」
「ここだよ……ここにいるよ……。助けておくれよぉ……」
聞いたことがない声に、プクリは首をかしげました。ふわふわのしっぽが、くるっと巻かれてせわしなく動きます。
「モグモグ……ゴクンッ。うーん、いったいだれだろう。でも、行かなくっちゃ!」
プクリはすいすいっと木を登っていきます。木登りは大の得意です。あっという間に一番高いところまでやってきました。ずっと遠くに、お日さまが沈んでいくのが見えます。冷たい風に、プクリは思わずしっぽを抱きしめました。
「ん? なんだあれ? なんだかチカチカするものがひっかかってるぞ」
枝の先のほうに、ほのかに光るものが見えます。夜お空にうかんでいる、お月さまみたいに優しい光です。プクリは枝をゆらさないように気をつけながら、そろそろと光に近づいていきます。
「助けてぇ!」
「わぁっ!」
いきなり大声を出されたものですから、プクリはあやうく枝から落っこちそうになってしまいました。なんとかしがみついて、それからしっぽの毛をさかだてます。
「おどかさないでよ、びっくりするじゃないか!」
「ごめんなさい、でも、助けてよぉ」
声の主を見て、プクリはまたもや枝から落っこちそうになってしまいました。だって、そこにひっかかっていたのは……。
「君は、もしかして……お星さま?」
「うん、ぼくは流れ星。お空を旅していたんだけど、途中でつかれてねむっちゃったんだ。そしたら、落っこちちゃって、この木にひっかかっちゃって……。ねぇ君、お願いだからぼくを枝から外してくれないかい?」
お星さまがちかちかとまたたきました。プクリは枝がゆれないようにそーっと近づいて、それからお星さまをひっぱります。なかなか外れませんでしたが、なんどかゆすると、やっとで外すことができました。
「よかったぁ、ありがとう」
「でも、びっくりしたよ。まさかお星さまが、木の枝にひっかかってるなんて……」
プクリにいわれて、お星さまの光がちょっぴり弱くなります。プクリはあわててはげましました。
「あ、でも、よかったよ、ちゃんと外れたからさ。これからまた旅に出るんでしょう?」
プクリの言葉に、お星さまが今度はぴかぴかと光りはじめました。
「うん、またこれからお空を旅して、いろんなところを飛んでいくんだ。本当にありがとう。このままじゃ、ずっとこの木にひっかかったまま、流れ星じゃなくて木の実になっちゃうところだったよ」
木の実と聞いて、プクリのお腹がグゥーッとなりました。どんぐりを探している途中だったことを思い出し、今度はプクリが恥ずかしそうにします。
「もしかして、お腹が減っているのかい?」
「うん。だんだん寒くなってきて、最近はなかなかどんぐりも見つからないんだよ」
プクリの言葉を聞いて、お星さまは考えこむようにうつむきましたが、やがて、きらりと一度強く光って、それからフッと光を失ってしまったのです。びっくりするプクリの前で、お星さまの角がわずかに欠けました。
「あっ、大丈夫?」
「うん、ぼくは大丈夫だから、気にしないで。それよりほら、これを食べてよ。助けてくれたお礼だよ」
お星さまが、欠けたかけらをプクリに渡しました。どうしていいかわからず、しっぽまで固まっているプクリに、お星さまはいいました。
「本当にありがとう。じゃあ、ぼくは行くよ。またきっといつか、ここにも流れてくるから、そのときまた会おうね!」
そういうと、お星さまは目がくらむほどに強い光を出して、そしてぎゅうんっと、ものすごい勢いで空へと上っていったのです。それを見送ってから、プクリはしっぽでパタパタとほおをたたきました。
「夢じゃないよね……」
それに答えるように、手に持っていたお星さまのかけらがチカチカと輝きました。なんだか甘くていいにおいがします。もう一度グゥーッとおなかをならして、プクリはそっとそのかけらを口に運びました。
「……おいしい!」
今まで味わったことがないような、なんとも甘くて、とろけるようなおいしさに、プクリはもう夢中でかけらをモグモグしました。おいしいだけでなく、おなかも一気にふくれて、冬もへっちゃらな気がしてきました。プクリはもう一度空を見あげて、それからゆっくりと手をふりました。お日さまが沈んで、暗くなった空に、きらりと星がまたたいたような気がしました。
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