7 ファーストステージ開幕
遂に今夜かあ。
VVVファーストステージが今夜20時に開催される予定だった。僕は既にエントリー済みで、今日学校に来るのが面倒なくらいには焦ったくなっていた。
そもそも自分のための名誉もあるけど、ホープの謎を解明するためにもレースに参加する。重大な責任が、僕1人に乗しかかっていた。
どこで知ったのか、町田さんは僕にVVVの話をしてきた。余程ハマっているのか、かなり熱中している様子が伺えた。完全な体育会系だと思っていたから、ゲームにハマるとは思わなかったなあ。どうやらVVVのファーストステージにも出場するつもりらしい。まあそれでも勝つのは僕だけどね。
それにしても、ギルドに入ったって言ってたなあ。僕は顔がわからない人と一緒にゲームをするのは抵抗があったから、今完全なるソロプレイヤーと化しているわけだけど。本当に町田さんは凄いなと色々な面で思う。
ファーストステージはダンスビーチだ。ダンスビーチはよく大型大会でも使用されているエリアだから馴染み深いっちゃ馴染み深い。ただ、ダンスビーチは一般開放されていない、大会限定のエリアだ。だから僕も馴染み深いとは言っているが、最後に走ったのは実は1年前だ。ちゃんと走れるか、かなり心配だった。
19時。僕はログインした。僕の部屋には、いつも通りホープがいた。実は会うのは3日ぶりだ。別に毎日ログインする必要がないと判断していたのと、学校の課題が地味に忙しかった。町田さんは所々出し忘れていたり、ノートを見せてとせがんできたから毎日ログインしていたんだろうな。
「三日ぶり?もしかしてプライベートが忙しかった?」
とホープ。
あちらから話題を振ってくれる辺り。ホープの中の人はコミュニケーション能力が高いのだろうな。かなり助かる。
「まあね。ちょっと課題とか大変で。その間は、どうしてた?」
こちらとしては暇つぶしのものを何も用意していなかったわけだから、少し申し訳なかった。後で何かしらでお詫びしないといけないとは思った。
「そうね。かなり暇だったけど。一つわかったことがあるの。私、シフトアップはこの姿でも使えるみたい。試してみた」
「本当?それはかなりありがたいかもね」
確かホープの能力はエクステンド、で範囲拡大だった。もし使いどころがあるのなら、是非使いたいところだ。
「それにしても、よく見ず知らずの私を助けてくれるよね。どうして?」
いわれてみればそうだった。だけど…。
「人を助けるのに、理由なんているの?」
と聞き返すとホープは驚いた表情になった。正論を突き返してしまったのは申し訳ない。
「僕はクリムゾンヒーローだからね。困ってる人がいれば助けるよ。僕はただカッコいい役柄でいたいだけなんだ」
ただの自己満足かもしれないが、僕の居場所はここにしかないのだから。ここで思う存分活躍するしかないんだ。
開始時間が迫り、僕たちはダンスビーチに向かった。
スタートラインの待機位置につく。バイクにはホープも乗せている。どうやらホープは僕の装備扱いになっているらしく、特に二人乗りなどのエラーメッセージが出ることはなかった。いつも使っている、インビジブルを使い、人に見つからないようにスタートラインに車輪を当てる。因みにこのインビジブルは超レアアイテムだ。これのお陰でレース開始から30秒後までは他者に見つからずに走ることができる。また、参加者一覧にも名前が表示されることはない。昔の大型大会に出た時の財宝で手に入れたもので、今はかなり重宝している。
僕がどれだけかっこよくなれるか決まる戦いの火蓋が切られようとしていた。