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九五話

「あぁ、良かった!三日も行方不明になっていたのよ!」


 ノーマへと母親が嬉しそうに抱き着いた。

 周りの者たちはその姿を微笑ましそうに見ている。


「か…母さん?三日って警察の人も言っていたけど本当に?」


「そうだけど三日間の記憶が本当に無いの?」


 母親の疑問にノーマは頷いた。

 気付いたら倒れていて発見をされていた。

 最後の記憶は三日前の日付で学校にいたことだ。


「「「「…………」」」」


 ノーマの答えに警察や念のために呼んだ病院関係者は頷き合う。

 事件に合った以上、何かされたのだと考えられる。

 何日間か病院に入院させて異常が無いか確認するべきだ。


「そういえばコーインや他の皆は?学校にいたときには、そいつらとも一緒にいたんだけど」


「全員一緒に見つかったから会いに行くかい?」


 警察官の言葉にノーマは頷く。

 今は全員の無事を確かめたかった。



「それで全員怪我とか無かったんですよね?」


「その通りだよ。君も含めて怪我は無かった。それで君は本当に何も覚えていないんだよね」


「はい……」


 本人も首を傾げて何があったんだと疑問を抱いている。

 その様子には嘘をついているように見えない。

 本当に覚えていないようだ。


「悪いけど、さっきも言ったけど検査のために何日か入院してもらうからね。もし記憶をいじられているとしたら脳への異常があるかもしれないし」


 脳への異常と聞いてノーマは身体を震わせる。

 確かに記憶の操作をされているのなら検査をするべきなのだろう。


「大丈夫ですよね……」


「申し訳ないけど調べない限りハッキリと言えません。だけど大丈夫のはずです。何せハッキリとこちらの言葉の意味を理解して話すことが出来るんですから」


「異常があると、それすらも無理なんでしょうか?」


「えぇ。ですから私は大丈夫だと思います。もしあったとしても軽度で少しの間リハビリをすれば回復すると思いますよ」


 その言葉を聞いて安心する。

 記憶を操作されたせいで脳に異常が出来るなんて考えたくもない。


「良かった。他の皆も?」


「はい」


 医者の言葉に安心してノーマは最初の部屋へと入っていった。






「全員、覚えていませんでしたね」


「えぇ。これで全員が被害者だと確認も取れました」


 警察官がノーマと一緒に行ったのは、それぞれの反応を見るためだ。

 人は嘘を吐くと何かしら反応をするがそれが無かった。

 誰か一人は嘘をついている者はいると思ったが全員が何で記憶がないのか混乱していた。


「彼らが復讐相談事務所に関わっていると思うか?」


「………そういえば復讐相談事務所に相談した者たちも場所を覚えていませんでしたね。一部の記憶を消すことが出来るなら三日間の記憶を消すことも出来ますね」


 その言葉に頷く。

 そして最近の彼らの通っている学校についても調べた。


「でも、その割にはディアロ君は何も被害を受けていませんよね?復讐をされるような行動も最近までは無かったみたいですし」


「むしろ最近のことについてディアロ君が被害を受けるかもしれないな。友達や恋人の夢を折ったんだ。それに対しての復讐されるかもしれない。学校の状況について調査する必要があるな」


 復讐相談事務所に行っているなら一番学校で恨まれていそうなディアロが被害を受けていないことに不思議がるが、まだされていないだけだと言われ納得する。

 だけど同時に疑問を抱く。

 復讐をしていないのに記憶を消すことがあるのかと。


「でも復讐をまだしてないのに記憶を消すことなんてあるんですかね?今までは記憶を消したとしても復讐を終わってからですし、それも事務所の場所だけなのに」


「それもそうだな。もしかしたら偶然たどり着いて追い返すために記憶を消したかもしれないな。俺からすればディアロ君が恨みを買ってしまう行動を起こしたのも理不尽な理由だし」


「そうなんですか?」


「あぁ。恋人がいるのが妬ましいとか。その恋人が綺麗だから相応しくない、自分の方が相応しいって理由だ」


「最初は心を折って夢を諦めさせたと聞いて酷いと思いましたけど、それならキレてもしょうがないですね」


 ディアロの心を折った理由を聞いて最初は嫌いだと思っていたのが薄れていく。

 恋人として付き合っているのに外野が文句をつけてきたら確かに嫌だ。

 しかも武道で有名な学校の生徒が文句を自分の方が相応しいと文句を言ってきたのだったら心を折ったのも理解できた。

 本当に相応しいか確かめた結果、心を折ってしまったのだろう。


「それにしてもディアロ君は強いですね。結果はどうあれ結局は認めさせたんですから」


「全くだ。だけど彼も復讐相談事務所の容疑者だ。前々から嫌がらせを受けていて復讐のために力を手に入れた可能性があるからな。一年生が三年生相手にも勝てるなんて、余程の何かがあるはずだ」


「うへぇ……」


 見直したと思ったらドーピングの可能性もあると言われて頭を抱えてしまう。

 もう何もかもが信じられなくなる。

 誰も彼も疑わなくてはならなくなり、出来ればどちらかだけでも復讐相談事務所に関わっていなければほしいと願った。

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