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九一話

 放課後、学校にあるコロシアムで二人の男が中央に立つ。

 この学校では異種格闘技戦もよく行われ、その試合もよく見ている者も多い。

 中には異種格闘技を見たいがために入学した者もいるぐらいだ。


「さぁ、その実力を見せてもらうぞ!」


 本気で楽しそうに勝負を挑んでくる目の前の男にディアロは面倒くさそうにする。

 正直、卑怯な行動をする相手だったら面白そうにしていた。

 だけどその様子が無いことに全力で残念そうにする。


「………?何を残念そうにしているか分からないが本気で来い」


 ディアロの目の前にいる男は本気で来いと挑発をしてくる。

 それに対してディアロはため息を吐きながら頷いた。



(ため息を吐くか……)


 ディアロと相対している男、ケーンは頷いたがため息を吐かれていることに不満を持つことは無いが残念がっている。

 向こうからすれば恋人がいるから喧嘩を売られる。

 あまりにも理不尽だと理解もしていた。

 だがそれでも実力だけはあったせいで厄介な不良、トールを足蹴にした実力に興味があった。


「行くぞ………」


 まずは握りしめた拳をディアロに突き出すために一気に接近する。

 今までで一番の動き。

 周りの何かもゆっくりに見えていた。


(ゾーンか)


 最高の集中状態であるゾーン。

 それに何度か経験したことがあるから驚くことは無く、むしろ会心の実力だと笑みを浮かべる。


(俺の勝ちだ………)


 あと数ミリといったところまで拳がディアロに接近する。

 そして勝ったと確信してしまった。


「おせぇ」


 気付いたらケーンは頭を掴まれて地面に叩きつけられていた。


「え………」


 遅れて意識が戻りうめき声を上げる。


「がぁぁぁぁ」


 直ぐにディアロは手を離したために痛みに見悶えながら混乱する。

 拳を突き出したと思ったら地面に叩きつけられていた。


「まだやる?」


 当然だとばかりに起き上がりディアロへと立ち向かう。


「いや、おそい」


 そしてまた地面に叩きつけられる。

 今度は立ち上がった瞬間にやられた。


「あぁぁぁ!!」


 三度目は手を離して立ち上がり蹴りを放とうとしたが、それを行動にする前に叩きつけられる。

 四度目は立ち上がり攻撃するまで何もされず、そのことに激高して突撃したが叩きつけられた。

 そして四度目からは立ち上がり攻撃するまでディアロはずっと待っていた。


 五度目、顔面を狙ったが避けられて地面に叩きつけらた。

 六度目、後ろに回り込もうとしたがその前に地面に叩きつけらる。

 七度目、蹴りで玉を狙ったが地面に叩きつけられる。

 八度目、決死の覚悟で噛みつこうとしたが地面に叩きつけられる。

 九度目、叩きつけられるのはもう嫌だと組み付こうとしたが地面に叩きつけられる。

 十度目、逃げようと背中を向いたら地面に叩きつけられる。


「「「「「「うっわぁ………」」」」」」」


 見ていた者たちはあまりの実力差と同じことの繰り返しに引いた。

 もはや拷問じゃんとも思っている。


「はぁ………」


「羨ましい!!!」


 恋人のレイを見るとため息を吐いているが形だけだと理解させられてしまう。

 口は三日月に歪んでおり、ディアロを見て顔を赤くしている。

 その上に羨ましいという言葉に微妙に頷いていたのを確認した者もいる。


 そして羨ましい!!!と叫んだのはリィスだった。

 そしてそれに対して深く頷いているのが数人いる。

 中には男子も女子も関係なく顔を赤らめて見入っている者もおり、それを見た者は引いている。

 そして距離を取ることを誓った。


 逆に吐いている者もいた。

 特に多いのは同じく武道関係の部活に入っている者たちだ。

 ディアロがやっていることは丁寧に心を折ることだ。

 何をしても同じように叩きのめされる。

 しかも意識を失わないように手加減をされて立ち上がるまで待っている。

 プライドから立ち上がらないのは無理だ。


「どうしました?立ち上がっても攻撃をしてきませんが?」


 もう止めてやれ、という声が聞こえてくる。

 ケーンは既に心が折れてしまっている。

 立ち上がっているのは意地でしかない。


「まぁ良いや」


 そしてディアロからようやく攻撃に出る。

 腹を蹴り上げ、崩れ落ちるところを頭を蹴飛ばす。

 ケーンには反撃することも反応すらも出来ずにされるがままだ。


「………その程度」


 ディアロは特に苦戦もしなかった相手に冷めた目を向け良いことを思いついたという風に顔を歪める。


「雑魚だなぁ。きっとお前の部活は全員弱いんだろうなぁ」


 そう言ってケーンを何度も何度も蹴る。

 弱者をいたぶる光景に吐いていた者も顔を赤くしていた者も敵意を通り越し殺意を抱く。


「ははっ」


 それを察してディアロは嗤う。


「否定をしたきゃ来いよ。今なら憎くて羨ましくて妬ましい俺を殺せるかもしれないぞ?」


 ディアロは今回のもともとの原因は自分がレイと付き合っていることだろうなと気付いている。

 それならさっさと全員を殺せば良いとテンションが上がっている。

 最後に目の前にいた男を思いきり蹴飛ばす。


「お前ぇぇぇぇ!!!」


 そして多くの者たちが挑発に乗り武器を手にこちらに向かってくる。

 そのことが酷く愉快気にディアロは嗤った。

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