八話
「連絡をしましたけど、まさか全員が来るとは」
事務員は笑みを隠し切れずに事務所へと来た者たちを見る。
総勢、二十名は余裕で超えている。
話を聞くと仕事先からも無理に休みをもらってきた者もいるらしい。
今日は休日なのに仕事があるとは大変だなと事務員は思っていた。
「………この事務所を使わせてもらって感謝する」
「別にかまいませんよ。復讐相談事務所という看板を掲げていますし、それから外れていないなら、むしろ協力させてほしいぐらいです」
にこやかに復讐に協力すると言う事務員。
その姿に、あるものは背筋を凍らせ、あるものは得難い協力者だと感謝している。
「そ……そうか。それじゃあ皆で話し合おうか」
その言葉に全員が頷いて顔を見合わせる。
まずは顔を見合わせて座ったテーブルの上に復讐対象の少女の写真を四枚乗せる。
四人もいることに全員は驚くこともなく受け入れている。
既に誰が復讐対象かを調べた時に驚いていたからだ。
「それにしても、まさか女の子が犯人だったなんて」
「全くだ」
この場にいるのは全員が被害者の親だ。
自分達の子供が害されたことに、自分の子供と同い年であることに複雑な感情を抱いてしまう。
どんな育て方をされたかは知らないが、間違えれば自分達の子供も同じことをしていたと背筋を凍らせる。
憎むべきは、そういう風に育てた親かもしれないが、それでも子供たちにも復讐することは変わらない。
「………同じ女として強姦が良いわね。殺したら、それで終わりだし。孕ませて強制的に子供を産ませるのも良いんじゃないかしら」
「そうね。というわけで男どもは手を出したら?若い女の子だし役得でしょ」
被害者の母親の言葉に被害者たちの父親はえぐいと笑う。
だが手を出す気にはならない。
「残念だが、そんな気分にならないな。子供を害した相手に自分の子供を孕ませるとか。それに生まれた子供に対して悪すぎる」
「………そうだったわね。謝るわ」
一人の意見に男どもは頷き、孕ませ産ませた子供のことを考えて母親たちも謝罪する。
何の罪のない子供を理不尽に絶望させてしまうと考えて頭を冷やす。
「性的なことが嫌がらせになるなら、子供が生まれないように避妊薬を飲ませて売春させる方法もあるよな」
「「「「それだ!」」」」
売春させると聞いて事務員に目を向ける親たち。
「媚薬なら代わりに購入しますか?」
事務員の言葉に頷く。
だが、それ以外に聞きたいことがある。
「一応、言っておきますけど洗脳はできませんよ。洗脳や暗示をするための本なら持っていますけど
貸すだけです。あくまでも協力するのは相談だけ。道具は貸したりもしますけど」
事務員の言葉にそこまでは出来ないかと残念な気持ちになる。
だが洗脳や暗示の本があるなら、それを借りたい。
「君ならどうやって従わせる?」
その前に目の前の事務員ならどうやって相手を従わせるか相談する。
彼なら思いついていそうだと考えたのが理由だ。
「色々ありますよ」
事務員の言葉にどんな方法があるのかと促す。
いろいろと言うからには複数の手段があるはずだ。
「例えば復讐相手のことを詳しく知っているなら家族を人質にしたりとか」
事務員の言葉に、あのようなことをするように育てたのだから復讐として巻き込むのもたしかにありだなと考える被害者の両親。
少なくともまともに育てれば、こんな事件は起きなかった。
「例えば復讐相手の顔を知れているんだから一人に決めてさらって拷問して他の仲間を一人ずつ呼ぶとか」
拷問もありだなと考える。
全員が少女だから性的なことを考えていたが普通に痛みつけるのもありだと考える。
それに痛みつけて他の仲間を呼び出すのも良い考えだと頷く。
協力していたのだ。
少なくとも情はあるのだろうと予想する。
「例えば過去を調べて弱みを握るとか。名前や顔を知っているなら恥ずかしい過去とか調べれるでしょうし」
本当に色々な案を出してくる事務員。
伊達に復讐相談事務所の看板を掲げていない。
「取り敢えず一人一人、確実に捕まえることにしないか?一気に全員を捕まえるのは数はこちらが多くても厳しそうだ。焦らずに追い詰めていきたい」
「そうですね。下手に警察とかにバレて保護されたりしたら復讐も出来なくなるでしょうし、一人一人確実に捕まえた方が効率的でしょうね」
「相手がどんな罪を持っていても保護をされるのか?」
「えぇ。どんな理由があっても止めてきますよ。殺人者に殺された身内を持つ者が復讐しても止めますし」
その話意を聞いて警察は厄介だなと思う被害者の家族たち。
自分達に関係が無ければ当然のことだと思っていたのだが、今は邪魔としか思えない。
やはり事件の当人であるかどうかで違ってくる。
「くそっ。誰か監禁できる者はいないか?逃げられて保護されるのを防ぎたい」
「俺の家なら娘が精神病院に入院しているから大丈夫だ。妻も娘を壊した原因なら協力してくれるはずだ」
監禁できる者と聞いて、それをかわぎりに手を挙げてくる。
思ったよりも多くいた。
復讐相手にいつでも仕返しを出来ると考えて手を挙げているのだろう。
そして復讐方法を事務員や自分たちで出した意見を参考にして考えている。
それを見て事務員は四人の女子はたいそう憎まれているな、とにこやかに見ていた。