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六六話

「ふふっ」


「えへへ」


 リィスとルカは片方と同じ名前を持った年上の人に服を買ってもらってご機嫌のまま家に帰る。


「ルカ!」


 そしてルカの両親がリィスを突き飛ばしルカを抱きしめる。

 何をするのか分からない人殺しの子供が大切な娘と一緒にいることに危機感を持ったのだろう。

 まずは何よりも二人を引き離すことが大事だと両親は母親が娘を抱きかかえ、父親がレイの前へと二人を庇う様に前に立つ。


「何で、あの子と一緒にいるの!?朝にもう近づかないで言ったわよね!」


「………お母さんたちこそ、おかしいよ!何で親の罪を関係のない子供にも巻き込ませるの!」


「何を言っているの!?性格は一部分だけでも遺伝するのよ!何が起こるか分かったものじゃないわ!」


 自分を信頼してくれるルカに嬉しくなり、そしてその両親に嫌われていることにリィスは涙が出てくる。

 昨日までは家の中に入れてくれてクッキーをくれたりしたのに、今ではきっと家の中に入れてもらうどころか近づくのも文句を言われそうだ。


「ドラマで一緒に人殺しの子供がどうなったか見たじゃん!その時にお母さんも私にちゃんと親の罪を子供にも重ねないようにって言ったじゃん!それなのにリィスちゃんを否定するの!?」


「あの時と状況は違うでしょ!」


「同じじゃん!」


 抱きかかえられたまま確実にルカはリィスから離れさせられていく。

 そのことにリィスとルカは、ルカの両親に絶望する。

 ルカは自分の両親がリィスと仲良くすることを絶対に反対であることに、そしてリィスはこれでルカとはもう仲良くできないことに。




「さいっこう!」


 高校生のリィスは小学生のリィスの絶望した表情を見て歓喜に顔を歪める。

 事務員からもらったマントで後をつけていたが思ったよりも早く絶望した顔を見られたのは幸いだった。

 自分を味方してくれた者が引き離されるのが思ったよりも早くて幸運だと感じている。


「………それでも人目がつかないところでは仲良くするかもしれないのよね」


 だがルカはもともと朝に近寄るなと言われて仲良くする子だ。

 今、怒らても人目がつかないところで仲良くしてもおかしくない。

 だから期待をするのは両親ではなく学校の友達だ。

 もしルカが離れるとしたら仲良くしていた友達がリィスと近くにいることで危害を与えられてからだろう。

 その時のリィスの顔を見るのが非常に楽しみだ。


「…………それにしても、ちょっとだけ予想外」


 高校生のリィスとしては近所の皆が距離を取ることに少しだけ予想外だった。

 事件のことを知っていた癖に信じないと言って受け入れていたと思ったら距離を取り始めたのだ。

 結局、こんなものかと冷めた目を向ける。


「……………」


 小学生のリィスはルカの家族たちが完全に離れてから起き上がり自分の家へと歩いていく。

 その際に小学生のリィスへと向けられる視線は冷たかった。

 大人でも辛いのに小学生には更に辛いだろう。


「………ただいま」


 小学生のリィスが家に帰ると既に両親がいた。

 母親は基本的に家にいるが、父親が小学生のリィスより先に帰ってきているのは珍しい。

 リィスは首を傾げる。


「おかえりなさい」


「学校はどうだった………?」


「貴方!!」


 父親が小学生のリィスへと質問するが母親に怒られて止められる。

 小学生のリィスも今日はサボっていたから詳しく聞かれなかったことに一息つく。


「夕飯は用意してあるから食べておきなさい。私はこの人と相談したいことがあるから」


 母親はそう言って父親と共に別の部屋へと移動する。

 どうやら聞かれたくないらしくリィスとは少し距離を取ろうとしていた。

 そして


「まさか、こんなことになるなんて……」


「………」


 二人は頭を抱えて悩んでしまう。

 過去の過ちが書いてある記事をチラシと一緒に近所へとばら撒かれたことでクビになってしまったことが原因だ。

 職場では過去に事件を起こしたと知っても受け入れてもらったが、詳細な内容を周囲に知られてしまったせいでクビにせざるを得なかった。

 客商売だから共倒れになるのも他の職員に金を払えなくなるのも嫌だったらしい。


「…………これから、どうする?」


「…………誰も俺たちを知らない場所へと引っ越すしかないだろうな。田舎なら気付かれないかもしれないし」


 そうなると、どうやって金を稼いでいくかという話になる。

 リィスには色々と不便になってしまうが許してほしいと祈る。

 自分達の悪行のせいで子供にも被害がいくことに過去にいけるなら殺したいと本気で殺意を抱く。

 ここで互いを責めないのは過去に何度も何度も子供が生まれるまでやったことだ。

 子供が最優先と互いに頷き合って決めた。

 それは今も変わらない。




「…………運が良いわね」


 それを高校生のリィスは聞いていた。

 小学生と別れた後、姿を隠して後を追っていたが正解だった。

 この話を聞かなければ逃げられていた。

 どうやって、その話を潰すか考える必要がある。

 事務員にも相談するべきだろう。


「お父さん、お母さん………?」


 小学生のリィスが食べ終わったのか両親の元へと近づく。

 高校生のリィスはそれを尻目に憎い相手の家から出て行った。

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