六四話
ゲーセンにたどり着くと怪しい者を見る目で見られる。
高校生のディアロとレイはサボりだと理解しているが小学生がいることに首を傾げてしまう。
普通、小学生はサボりなど考えられないと思っている。
「さてと何をする?」
「えっと、アレをやりたい……」
ディアロの質問にルカはクレーンゲームに指を指す。
そこには可愛らしい人形がたくさん入ってありディアロもレイも微笑ましそうに頷く。
そしてレイと先に行ってもらい、ディアロは遊ぶために金を両替していく。
「可愛い人形がいっぱいね。私も遊ぼうかしら」
レイの言葉に少女たちは目を輝かせる。
年が違うのに同じものに対して可愛いと感想を抱いていることに同調意識を持ってしまう。
「はい。一人、十回まで」
「「「えぇ~」」」
ディアロは金を三人に渡すが回数を指定したこと不満の声を出される。
それでも変える気が無いことに残念に思いながらも頷く。
今日、初めて会ったのに我が儘を言いすぎるのはダメだと小学生なりに自重する。
「十回でも結構な回数だと思うけどなぁ………」
「そう?取れたらいわよ」
「取れなかったら?」
「………」
レイの言葉にディアロは確認すると目をそらされてしまう。
何度もやっても取れなかったら当然、悔しくなる。
取れないと投げ出したくなりもする。
「…………惜しい!」
「次は絶対に取る!」
少女たちは目を真剣にさせてクレーンゲームをしている。
両者合わせて二十回もやるのだ。
もし取れなくても満足するだろうとディアロは考えていた。
そして
「すごいな……」
「「えへへ」」
ディアロは本気で感心した声を上げる。
そのことに二人の少女は満足げに笑みを浮かべる。
二人の両手にはそれぞれ大きな人形を抱えていた。
「私もやるわ」
それを見てレイもやる気を出す。
自分も欲しいとディアロから渡された金を手にクレーンゲームへと挑んでいった。
「残念だったね………」
「えっと………。今日は運が悪かっただけです!」
レイは目当てのものが取れずに落ち込んでいた。
あまりの落ち込み様に少女たちは思わず慰める。
そして恋人のディアロを探すが女性店員に話しかけていてイラっとする。
「………何をしているの?」
「お姉さん、お兄さんナンパしているよ」
レイへとディアロのことを報告する。
そうすると確認のためにディアロを見て女性店員と話していることにレイは目を鋭くさせる。
ディアロはそのまま女性店員を連れて、レイたちの元へと来る。
「レイは何を取ろうとしていたんだ?」
女性店員を連れて来ての質問にレイは黙って指を指す。
そこには大きいペンギンの人形があった。
「らしいです。お願いできますか?」
「えぇ、構いませんよ。かなりの回数チャレンジしていただいたみたいですし」
ディアロの言葉に女性店員は頷く。
急に何の話をしているのだと首を傾げる。
「さてと………」
女性店員がクレーンゲームに近づくと、おもむろにケースを開けて人形を取り出す。
「え?」
「どうぞ」
「え?」
「ありがとうございます」
「え?」
「いえいえ。これからも当店で遊んでいただければ幸いです」
「え?」
女性店員はケースから取り出した人形を手渡すとディアロから離れていく。
そして渡された人形を手にしながら、何が起きているのかとレイはひたすらに困惑していた。
「良かったね」
ディアロの笑顔の言葉にレイは頬を引き攣らせ、思いきり殴った。
「何をしているんだお前は?」
ディアロは殴られたのに平然としており、レイは殴った手を抑えている。
まるで壁を殴ったような感触にレイはディアロを睨む。
「うるさい」
殴ったのに全く相手にされていないことにレイは不機嫌な表情を浮かべ、ディアロはそれを見て苦笑する。
「それじゃあ二人とも次は何をする?」
ディアロの言葉に二人の少女はこの状況で私たちに聞くのかとディアロを見る。
そして心配そうにレイを見た。
殴ったのはレイだが、殴られた本人は平然として殴った本人が手を抑えているせいでレイの方を心配してしまう。
「レイなら大丈夫。少しすれば痛みも治まるからね。ほらレイも行こう」
そう言って指し伸ばされた手をレイはつかむ。
まだ手は痛いが動かせない程ではない。
少女たちはこの二人は手を繋いでいるが本当に付き合っているのか疑問だ。
当たり前のように殴ったり手を痛めているのに心配しないでいたりと恋人同士に見えない。
「ねぇ、二人って付き合っているんですよね?」
「………えぇ。あれ?私、付き合っているって言った?」
「あれ?違うの?」
子供の話をしたときにディアロの方を向いたが付き合っているとは言っていないことを少女たちは思い出す。
それでも肯定をされたから付き合っていることは当たっている。
「それなのに殴ったり、怪我をしたかもしれないのに気にしないんですか?」
「…………えぇ。それでも私は彼が好きだし、彼も私のことが好きよ。本当に怪我をしていたら心配してくれただろうし」
怪我をしていないと判断したから、そこまで手を心配をしていなのかと少女たちは納得しようとする。
でも、どうやってあの一瞬で判断したのか謎だった。




