五三話
学校の中にある教室の中に二人でディアロとレイの一緒の席に座っている。
その姿に昨日までは、からかう者も昨日まではいたが朝のこともあり何も言えないでいた。
その事にディアロは恥ずかしいが同時にからかわれないことでプラマイゼロかと思っている。
「………よぉ、ディアロ」
声を掛けてきた者へとディアロは反応する。
そこには心配そうな表情をしている者がいた。
更に周囲を確認すると他にも同じ表情で見てくる者がいる。
「何?」
ディアロはどうかしたのかと疑問の声を上げるが全員、何も言わない。
ただ言いたいことは全員一致しているようで顔を見合わせていた。
「ふふん」
レイはディアロの膝の上に座って抱き着いている。
その姿に顔を真っ赤にしている女子もいた。
ディアロの目の前にいる者たちも同じだ。
「お前って何か犯罪を犯してないよな?」
「いきなり何を言っているんだお前?」
犯罪を犯したことがあるか急に聞いてくる相手にディアロは冷たい目で見る。
何でそんなことを聞いたのか理解できないでいる。
そしてクラスメイト達はそんな様子のディアロを見て大丈夫だな、と安心した。
それだけディアロのしていた目に恐怖を覚えていた。
「……ごめん。レイさんがディアロ君にキスした時の目がすごく怖くて」
そんなに怖かったかと自分の目元をいじくりまわす。
レイはディアロに抱き着くことに集中していて話を聞いていない。
「悪い。変なことを聞いて」
「良いよ、それぐらいなら」
ディアロも謝罪をされて直ぐに許す。
軽い雑談みたいなものだろうと思ったのもあった。
戸惑いがちに話していたのは今も自分に抱き着いている彼女のせいだと予想する。
「それにしても、恥ずかしくないのか?」
「恥ずかしいに決まっているだろ。何で急にここまで抱き着いてくるんだ?」
「まぁまぁ、女の子に抱き着かれているんだし役得だと思えば?」
クラスメイトの言葉にディアロも黙る。
そのせいで、なら抱き着かれても良いじゃんと思われてしまう。
それで不満だけを抱いていたら男子からも女子からも総スカンだ。
「おはようって何をしているの!?」
昨日は休んだリィスが来て、教室でディアロとレイがしている行動に顔が赤くなる。
リィスから見てみれば明らかに入っている。
学校でするような行為ではない。
「抱き着かれているんだけど、リィスからも離れるように言ってくれない?」
平然としているディアロにリィスは困惑する。
本当に離して良いのか、邪魔じゃないかと戸惑っていた。
その様子にクラスメイト達は同情する。
もし頼まれていたら自分達も同じように手を出すことを戸惑っていた。
頼んだ相手が自分でないことに心底安心して巻き込まれないように顔ごと視線を逸らす。
「ちょっ……!」
周りに助けを求めようとして視線を逸らされたことにリィスは絶望する。
いちゃつくようにクラスメイト達と一緒に先導したが実際に見て止めるとなると、だいぶキツイ。
「リィス、いい加減に離れてくれ」
「嫌よ。せっかくだから見せつけるわ。いちゃつけって言ったのはクラスメイト全員だし、どうせ止めないわよ」
レイの言っていることが事実だから何も言えない。
からかいの言葉がここで邪魔をしてしまう。
「それでも、いい加減にどけて席に戻った方が良いと思うんだけど。授業も始まるし、ずっとそこにいたら注意されるよ」
その言葉にレイは教室にある時計を見るとディアロの上から離れる。
素直に従ったことにリィスは安堵し、ディアロは痺れた足をさすっている。
その行動にレイは怒りを覚える。
「ねぇ。私が重いって態度で言いたのかしら?」
「何を言っているんだ?お前が例え軽くても、ずっと乗られていたら神経やら圧迫して足がしびれるに決まっているだろ」
軽くても重くても変わらないと言うディアロにレイはとりあえず納得する。
「あぁ、そう」
ディアロは重いと言っていないが軽いとも言っていないのだ。
後で二人きりになったら問いただしてやるとレイは決意する。
「おはよう、皆。ディアロとレイ、職員室から見ていたぞ。仲が良いのはいい事だが学校内では自重するように」
職員室からでも見られていたということにディアロは顔を赤くする。
レイも顔を赤くしているが満足げだ。
自分がディアロと付き合っているということを学校内でも広めれたことが出来たのだから。
「ふふふっ」
これでお互いに別の異性と二人きりでいたら善意で誰かが報告してくれるはずだとレイは考える。
自分もそうなるがディアロのことを聞けないよりはマシだと思っている。
「「「「「…………」」」」」
教師も含めて教室にいる者たちはレイの笑った声が聞こえて背筋を凍らせる。
そしてディアロの方を見ると聞こえていたのにも関わらず平然としていた。
「どうしましたか?」
教室にいる全員が自分を見ていることにディアロが疑問を口にする。
それを聞いて教室にいる者たちは何で疑問に思わないのだとディアロに対して頭を抱える。
浮気をしないようにと学校の生徒を使って監視体制を作ろうとしているのに気づいていないのかと心配になった。




