五話
「そういえば自己紹介をしていなかったわね。私は生徒会長のフィンよ。よろしくね!」
生徒会長のフィンが自己紹介したことにより他の生徒会メンバーも諦めて自己紹介をする。
本音で言えば目の前にいるディアロも巻き込まれてしまったことに生徒会長とダイキに文句を言いたいが、それだけ危険な状況なのだと飲み込む。
どれだけ優秀だとしても守るべき生徒なのは変わらないのに。
「はぁ。俺は副会長のフレアだ。これ以上、無理だと思ったらすぐに参加を止めても良いからな」
「そうよ。ダイキもだけど、どれだけ優秀でも一年生なんだから先輩に任せても良いのよ?」
「二人とも優しいねぇ~。………おぉぅ」
生徒会の二人の言葉にフィンはからかう様に喋るが二人に睨まれた。
二人からすれば一年生を巻き込むことに何もないのかと苛ついてしまう。
少なくともダイキも一年生だが、警察官の父に頼まれたらしいから納得するが、ディアロは優秀なだけの一年生なのだ。
「そんなに睨まなくても良いだろう?それよりも会計の自己紹介はしないのかい?」
「………っ。そうですね。私の名前はアクアです。よろしくね」
「よろしくお願いします。俺の名前はディアロです」
これで全員の自己紹介が終わった。
そこでフィンは手を叩く。
「これからは何日間かは分からないけど協力し合うのだから親睦会を開かないかい?お互いにどういう相手か知る必要があるだろう?」
「…………そうですね。それじゃあ先輩方、今日は仕事をしないで何処かに遊びに行きませんか?」
フィンの提案に最初に頷いたのはディアロだ。
確かにと頷く。
相手がどんな相手かも全く分からずに協力するのは厳しいだろう。
一日やそこらならともかく何日間かかるか全く分からないのだ。
しかも年齢は違うが同じ学生。
お互いのことを知る必要がある。
「………良いのか?」
「そうですよ。警察に協力を求められたんですよね?」
「今日からやった方が良いんじゃ?」
当然ながら賛成した二人以外からは文句が出る。
だが、ディアロは否定する。
「そのプロ相手が学生に協力を頼むのがおかしいと思うんですが?どうせ口ではともかく、そこまで期待していないと思いますよ」
「そうそう。一日ぐらいは大丈夫さ。初めて会う新顔もいるから親睦を深めてきたと言えば納得するはずさ」
二人の言葉にそんなものかと冷や汗を流す三人。
それにしても、ため息が出る。
ディアロとフィンの二人は今日、初めて会話をしたらしいが息が合っている。
もしかしたら同じ考え方をしているのかもしれない。
「さてと、それじゃあ行こうか。今日は私の奢りだ。なんでも頼むと良い」
そういってダイキの腕を組んで連れて行くフィン。
その姿に一名、鋭い視線を向けるが一瞬で視線を戻す。
そのことにニヤついていた者が二名いた。
「それじゃあ、食べようか」
学園の近くのファミレスで次々と料理が運ばれてくる。
あまりの量の多さにディアロとダイキは目を丸くし、フレアとアクアはため息を吐く。
「取り敢えずダイキは慣れろ。お前も生徒会の一員だから、打ち上げの時にフィンの食事の量はよく見ることになるからな。フィンはかなりの大食いだぞ」
フレアの言葉にアクアは首を何度も縦に振って頷き、フィンは不機嫌そうに顔をしかめる。
「他の奴らが食べていないだけだろう?見てみろ、ディアロ君なんて結構な勢いで食べているじゃないか?」
「うん?奢りだから遠慮せずに食べたけどダメでしたか?」
「気にしなくて良いさ。最悪、父の金から引き落とすからね。危険な事件に学生を巻き込むんだ。このぐらいは文句を言わないだろう」
それなら遠慮なくとディアロはガツガツと食べていく。
その食べっぷりにフィンも気が良くなる。
「君もそんなに食べるのか……」
フレアたちは目の前の二人の食べっぷりに見ているだけでお腹が膨れそうになるのを感じていた。
「そんなに食べて太らないんですか?」
「動いていれば太るはずがないだろう?私は食後も落ち着いたら動くようにしているし。多分、ディアロもそうなんじゃないか?」
アクアからの質問にフィンはそう答え、ディアロにも話を振ると首を縦に振る。
「正直、食べないと腹が減ってしょうがないです」
「わかる」
どれだけの運動をしているのかと呆れてしまう。
特にフィンは生徒会長としての仕事もあるのに、そんな暇はどこにあるのか不思議だ。
「ほらほら、もっと質問や話をしにきなよ。行儀が悪いかもしれないが食べながらでも良いじゃないか」
フィンの言葉に少なくともダイキよりも付き合いがあるアクアもフレアも次々とフィンに質問していく。
どうやら本人に直接聞いて良いのか悩んでいたが、それも含めて質問している。
いろいろと溜まっていたものがあったのだろう。
「すっげー、質問の量。ディアロは何か聞きたいことは無いのか?」
「急に質問しろと言われても思い浮かばないよね」
「………そうだな。俺もお前に何か質問しろと言われてもなぁ……」
二人は目の前の先輩たちが親睦を深めているのを眺めながらテーブルの上にのってある料理をつまんでいた。
「これもう、お互いのことを知るための親睦会ではなくて先輩たちの親睦会だよな」
「それな」