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三九話

「うーん。しばらく街の中の様子を見てからで良いかい」


 早速、孤児院の院長に相談したが悠長なことを言われる。

 子供の教育に悪いのは確かなのに何で様子を見ると言われるのか理解できない。


「何でですか!?どうみても子供の教育に悪いはずです!それなのに、ここに住み続けるんですか!?」


「落ち着いてください。シチルさん、今から理由を話すので」


 気付いたら孤児院のスタッフの一人シチルは興奮で思いきり顔を孤児院の院長に近づけていた。

 あまりにも近いせいで、落ち着いたら確かに話しにくい。

 話を聞くために距離を少しだけ取る。


「知り合いに警官がいるのですが、これからは毎日誰かしら街の中を歩き回って行くそうですよ。警官だかr復讐とかでも止めに入るでしょうし、もしかしたら国の中でも安全な場所になる可能性もありますし」


「そうなんですか?」


 孤児院の院長が警察と知り合いなのは噂に聞いていたが、そんなことまで話す仲だということに驚く。

 そして確かに警官が街中を歩き回るなら復讐しようとしても止められるから減るかもしれない。

 他にも事件を犯そうとしても直ぐに見つかると考え、事件自体も減る可能性がある。

 たしかに、もう少し街の様子を見るべきかもしれない。


「そういうことだ。念のために準備はしておくけど今のところは引っ越しすることはないと理解してくれ」


「わかりました。このことを他の心配そうにしていた皆にも伝えても大丈夫ですか?」


「かまわない。こっちからも皆に伝えるつもりだけど不安に思っている者が他にもいるなら先に伝えて置いてくれ」


 他にも心配しているスタッフがいると聞いて先に伝えても良いと孤児院の院長は許可を出す。


「ありがとうございます。それじゃあ失礼しますね」


 そしてシチルは早速、一緒に悩んでいた同僚を探しにいった。




「あ、どうだった?」


「取り敢えずは街の中をしらばらく見てからってことになったわ」


「「「「はぁ!?」」」」


 孤児院の院長に合う前に話していた同僚以外にも何人かいて決まったことを伝えると全員が不満の声を上げる。

 中には孤児院の院長へと直接、話をしようと向かっていく者もいた。


「待って!ちゃんと理由があるから聞いて!」


 その一人をシチルは直接つかんで止める。

 その姿に他の向かおうとしていた者も止める。

 最初に気付いて直接、向かったのはシチルだ。

 その彼女が止めたのだから何か理由があるのかもしれないと一度話を聞く姿勢になる。


「どうも警察も危険に思っているみたいだから街中を歩き回るみたい。だから安全になるかもしれないって。その様子を見てから決めるみたい」


「警察も動くのね………」


 それなら安心できるという気持ちが沸くが、同時にそれだけ危険な状況ということを理解してしまう。

 それでも警察が動くと言うのなら院長の言う通りしばらくは街の中の様子を見てから決めようと言う気持ちになる。

 それにお金があるといっても限りはあるのだ。

 できるだけ節約はしたい。


「わかった。取り敢えず今は納得するわ」


 一人の最初に言った言葉に全員が同意する。

 ちゃんとした考えがあるなら文句は無い。

 取り敢えず、今は警察の動きで街の中が平和になることを祈ることにした。




「リィス、おはよう」


「レイさん。おはよう」


 リィスが学校へと向かっている途中、レイと挨拶を交わす。


「どうしたの?何か嫌な者があった?」


「…………」


 孤児院のスタッフにも言われたからうまく隠していたつもりだったのに、バレたことにリィスは驚く。

 だが同時に納得する。

 目の前の少女は何だかんだいって相手を見抜くのが上手い。

 そうして相談に乗るのだから容姿だけで人気があるわけでは無い。


「言いたくないなら良いけど、ぼかしてでも誰かに相談に乗って貰った方が良いわよ」


「………例えばディアロ君とか?」


「うん」


「………え?」


 見抜かれていることにいら立ちを感じて八つ当たり気味にディアロの名前を出すが平然と頷かれる。

 本当は怒らせるつもりだったのだが予想とは違う反応に拍子が狂う。


「結構、的確なアドバイスをするから、おススメだとは思うわ」


「……本当に良いの?」


 相談事とはいえ好きな男子を自分とは別の女子を近づかせて文句は無いのかと心配になるリィス。

 全く気にしていないレイに確認する。


「良いけど……」


「本当に?」


「どうして、そんなに気にするのよ……」


 何度も確認するが本当に気にしていないレイにリィスは思わず確認する。


「だってレイさんってディアロ君のことが好……」


 言葉を最後まで口にしようとした瞬間に直接、手で口を塞がれる。

 レイ自身は顔を真っ赤にして周りを聞かれていないか確認している。

 その姿にリィスは可愛いと思ってしまう。

 そして、だからこそ相談するのは無理だと決断してしまう。

 相談したことで気づかなかったのかとか責められてしまうのは嫌だからだ。


「…………ふぅ。多分、クラスメイトは全員知っているわよ」


 手をどかしてから、そう言うとレイは顔を更に赤くして固まる。

 今更なのに、とリィスは呆れながら固まっている隙に走って学校へと向かう。

 陸上をやっているから追いつかれる気はリィスに全くなかった。

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