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三一話

「どうしましたか……?」


「最近、学校で苛めの被害者が加害者に復讐しているかもしれない話があるんですが、それを後押ししたのが先程話した事務員の彼じゃないかと思って」


「………有り得るかもしれませんね。ちなみにそう思った理由は?」


「普通、いじめられっ子が自分を苛めていた相手に復讐なんて出来ないんです。できたら、苛めなんてされていませんし。できたとしても数年に一度ぐらいのはずです」


 それ以外だと自殺する場合の方が多いと言われて警察官は納得する。

 たしかに最近では学校の生徒の被害者が多く調べるように指示をされていたいたが、それの理由は苛めの復讐だとは知らなかった。

 もしかしたら学校でも最近になってようやく見つかった情報なのかもしれないと考える。


「なるほど。それも署内で広げても良いでしょうか?」


 警察官の言葉に養護教諭は頷く。

 この事実を調べた生徒も優秀だが、やはりプロである警察に任せた方が安心できる。


「お願いします」


「任されました。それと次は女子生徒の病室に向かうつもりですが大丈夫ですか?」


 大人たちの次は生徒たち。

 未成年でもあることから大人たちより感情的に話し攻撃的になると想像できる。

 それを覚悟して頷く。


「では行きましょう」


 そして警察官も大人の病室に入るよりは気を引き締めていた。




「失礼します」


「誰よ」


 荒々しい口調で答える女子生徒の一人のネグが荒々しい口調で返事をする。

 警察官と養護教諭が入ってきたことに驚き、睨む。

 彼女にとっては両方とも敵だ。

 自分を救ってくれなかったからだ。


「すまない。事件のことについて教えて欲しくてね」


 今更かとネグは忌々しそうにため息を吐く。


「あいつらに犯されて、見知らぬ男に売春させられて、その金も全部、持っていかれたから復讐をしただけ。私たち以外にもいるから調べてみたら?自殺した奴もいるけど」


 ネグはあっさりと自分の行動の理由を話す。

 もうどうでも良いと思っている。

 実行犯は全員、復讐して二度と五体満足で生活できない身体にしたし、他人を売り物にするように育てた親たちにも復讐できた。

 一緒に行動するようになった仲間たちには自分を犯していた者達全員に復讐すると言っていたけど、元凶とその家族に復讐できたから満足している。


「………え?」


「………売春?」


 目の前の二人が何に驚いているか興味は無い。

 そのぐらいのことも調べていないのかと呆れるだけ。


「知らなかったんですか?学生たちが自分達と同じ学校の女生徒をさらって売り物にしていること?そんなんだから事件なんて減らないんですよ。同じ学校の教師なのに気付かなかった方もいますけど」


 このぐらいの嫌味は言っても構わないだろうと思っている。


「…………もうしわけありません」


「…………すまなかった」


 自分達の知らなかったことを教えられ二人は謝罪する。

 どうして被害にあったことを教えてくれなかったと思うが、レイプされたと売り物にされたと言える者がいるのかと考えると胸のうちにとどめる。

 口に出したら被害など考えずに暴れる確信がある。


「………それとは別に質問したいことがあるのですが?」


 まだあるのかとネグは警察官たちを睨む。

 知りたいであろうことは話したのに、まだあるのかと思っていた。


「貴方たちに協力した者はいませんか?」


「協力?」


「はい。例えば顔を隠した少年とか?」


「それは知っているんだ?」


 それは肯定ということだ。

 そして、その答えに警察官と養護教諭の二人は背筋が悪寒で震える。

 つまり事務員の少年は女子生徒の憎しみの結果の復讐を知った上で、少女たちにも復讐者を襲わせたということだ。


「売春組織のことは知らなかったのに復讐相談事務所のことは知っているなんてね。一応、言っておくけど私は何も言わないよ」


 ネグからすれば、どんな理由があろうと自分の復讐を手伝ってくれた恩人だ。

 どんな情報でも売る気は一切ない。


「やっぱり関わっていましたか……。その、貴方たちを襲った大人たちも事務員の少年に協力してもらったそうですよ」


 警察官は話す気は無いと言われたが、事務員に裏切られたのだと伝えることで情報を教えてもらおうとする。

 暴れてしまうかもしれないが落ち着いたら教えてくれるかもしれない。

 それが狙いだ。


「ふーん。まぁ、復讐相談事務所だものね。親たちの相談を受けたんだ?」


 それなのに予想に反してネグは冷静だった。

 わずかにだが覚えていたのが理由だ。

 全身を燃やされたはずなのに火傷がない。

 他にも殺し合っていたときについた傷もだ。

 おそらくは声からも事務員が治してくれたのだと予想できる。

 きっと他の皆も同じはずだと考える。


「そうなります……」


 そして警察官は自分の案が失敗したことを残念がる。

 まさか、あっさりと裏切られたことを許すとは思えなかった。


「話は終わり?だったら、さっさと出て行ってほしいんだけど?」


 ネグは部屋から出て行けと繰り返す。

 自分を救ってくれなかった警察と教師を信じられない。

 どんな理由があったとしても、殺し合いを誘発した事務員の少年の方がまだ信じられる。

 できれば、もう一度会いたいと思っていた。

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