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二七二話

「ただいま~」


 アムルは家に帰ったとき既に違和感を覚えていた。

 いつもなら鍵をしていたはずなのに扉が開いている。

 誰かお客さんでも来たのかと想像してしまう。


「誰か来たのか?」


 そして家の中に入ると濃い鉄の匂いが襲ってきた。

 そのことに一つの可能性が思い浮かんだがアムルはそれ以上は考えることはせずに家の中を探そうとする。

 そして一歩踏み込むと何かやわらかいものを踏んでしまった。

 それが何なのか確認して下を向くとフェアニだった。


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 たまらず絶叫を上げるアムル。

 近所の迷惑とか考える余裕も無かった。

 そして誰か生きている者はいないのかと家の中を探し始める。


「テミス!お義母さん!?」


 二人はどうなったのかとアムルは探す。

 どちらかは生きて欲しいと祈っていた。

 そして義母が生きていたら何があったのかと確認し、テミスが生きていたら生きていることを喜ぶだろう。


「そんな………」


 そうして最初に見つけた義母は心臓を刺されて力尽きていた。

 深くナイフが刺さっており、ピクリとも動かない様子が否応なしに付きつけてくる。


「テミスは………」


 そして最後の希望とばかりに娘を探し始める父親。

 どうか幼い我が子だけは生きて欲しいと祈って、いつもなら寝ている部屋の中を探す。

 そこには娘の死体があった。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」


 娘の死体を見て絶叫を上げるアムル。

 自分の家族が妻だけでなく娘も死んでいたことに最初よりも高い絶叫を上げる。

 

 娘の顔は安らかな顔のままで、眠っている間に殺されたことが想像できてしまう。

 眠っていて気付かれていなかったのなら、何で見逃してくれなかったのだと思う。

 わざわざ探しだしてまで殺した理由が分からない。


「ちょっとうるさい!!迷惑なんですけど!!隣の家のことを考えてくれませんか!?」


 そしてアムルの絶叫に近所の家の者が家の中に入ろうとしている。

 そのことにアムルは言い訳することも対応することもせずに娘を抱きしめたままで動くことを止めていた。


「おい!!…………え?」


 そして何も反応のないアムルの家の中に入ると絶句した。

 まず最初に玄関の中に入った時点でフェアニの死体が見えたせいだ。

 予想外の光景に何も言えなくなる。


「何だこれは………?」


 普通に生きていればまず見ることない光景に思考が止まってしまう。

 そして全く動かない女の姿にどうなっているのか想像がつき吐いてしまっていた。


「「「「「「おぼぇぇぇぇぇ」」」」」」


 あまりにも濃い鉄の匂い。

 それが他にも死体があるのだと想像できてしまう。

 そして、それは幼い子供まで死んでしまっているのではないかと考えて背筋が凍ってしまった。


「取り敢えず警察を呼んでくる……。皆さんも家の外に出た方が良いですよ?何時までも、この家の中にいても気持ち悪くなるだけですよ」


 そう言って比較的落ち着いている者が真っ先に家の外に出る。

 一番最初に吐いていたせいで、落ち着ているのだろう。

 だが気持ち悪そうに口は抑えていた。




「失礼………。これは………」


 連絡を受けた警察が来て家の中に入った途端に違和感を覚える。

 何か、この家に住んでいる者に影響を及ぼしてしまう何かを感じてしまった。


「酷いな………」


 そして一緒に来ていた先輩警官も同意をするが、そう言ったことでは無いと否定する。


「違います。この家、直ぐに壊した方が良いかもしれません。住んでいる者に何かの悪影響を与えているような気がします」


「………どういうことですか?」


 娘の死体を抱えていたアムルが警察官に問いかける。

 悪影響と及ぼすと聞いて黙っていられなかった。

 そのせいで娘が死んだのなら話を聞きたいと思う。


「そのままの意味です。詳しく調べる必要はあると思いますが、それが原因の一因かもしれません。何か心当たりは有りますか?」


 その質問に首を横に振って答える。

 たしかに近所には嫌われているが、それは学生の身分で子供を産ませたからだとアムルは思っている。

 だから心当たりは無いのだと首を横に振る。


「そうですか。ですが念のためにこの家から離れて暮らした方が良いと思います。貴方まで殺されるかもしれないので」


「だから何だ?もう死んでも良い」


 既に生きることを諦めているアムル。

 だが警察官として、そして操作の邪魔だからと家から追い出し落ち着かせるように安静にさせる。

 このままだと目を離したら死んでしまいそうだった。

 そしてアムルを落ち着かせて先輩の警察官はポツリと口に出す。


「まさか、また復讐相談事務所か?」


 今回の事件にもそれが関わっているかもしれないと聞いて怒りを覚える。

 もし、そうだとしたらこの家に細工をして自分の手では汚さず、他人を利用して殺したことになる。

 そんな卑劣な相手は例えどんな相手でも捕まえようと改めて決意する。

 これ以上の被害は警察として絶対に出さないようにしたい。

 

 その為には警察が一丸となって捜査する必要がある。

 だが今回や前回など証拠は無いが多数の死者が出ている。

 それらしい障害も無く捜査することが出来そうだった。

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